English site


耐浸透圧性

概要

浸透圧ストレスとは細胞周囲の塩濃度 (浸透圧) の上昇により細胞内イオン濃度が上昇し、以下の現象が生じること。
  • 細胞形態の維持が困難になる。
  • 水分活性の低下によりタンパク質立体構造の保持が困難になり、タンパク質の変性が生じる。
浸透圧ストレスに耐える微生物は2つに分類される。
  • 好塩菌: 至適増殖に0.2M以上のNaCl濃度を要求する原核生物。
  • 耐塩性菌: 至適NaCl濃度が1.2%以下だが、10-20%の塩にも耐える微生物。
最適増殖塩濃度による菌の分類
分類至適増殖NaCl濃度
非好塩性0 - 0.2M (0 - 1.2%)
低度好塩性0.2 - 0.5M (1.2 - 2.9%)
中度好塩性0.5 - 2.5M (2.9 - 15%)
高度好塩性2.5 - 5.2M (15 - 30%)
耐塩菌1.2%以下で良好に増殖するが、10%以上含む培地でも増殖可能

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

塩分変化に対する適応性の比較
塩分変化に対する適応性の比較 --Nakayama (2012) Figure 2
高度好塩菌と、低・中度好塩菌、耐塩性菌では浸透圧調節のメカニズムか異なる。
高度好塩菌
外界に匹敵する塩を体内に蓄積することで浸透圧調節を行う。そのため、高度好塩菌由来の酵素は安定性やその活性に高濃度の塩を必要とする (好塩性酵素)。
低・中度好塩菌、および耐塩性菌
KまたはNaを透過する輸送体により細胞内イオン濃度が上昇しないよう調節。 イオン濃度の直接的な調節に加え、適合溶質※と呼ばれる水溶性低分子有機化合物が細胞内の水分を維持し、タンパク質などの高分子を浸透圧ストレスから守っている。
※適合溶質
グリシンベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、プロリン、グルタミン酸、トレハロースなどの水溶性の低分子有機化合物。これらの生合成能、あるいは取り込み能が細胞の塩濃度変化に伴う浸透圧調節の能力に影響している

参考文献

  • 仲山英樹 (2012) 「好塩菌の塩ストレス適応機構とその応用」 『生物工学会誌』No. 98-11, pp696-700.

MiFuPへのリンク

(更新日 2014/03/13)