化学物質管理

(3)食器の構成成分

食器の構成成分は、次表に示すように主素材と副素材とに大別できます。主素材にはプラスチック・ガラス・土・金属・紙・木など、副素材には安定剤・紫外線吸収剤・釉薬・蛍光剤・ラミネート剤・うるしなどがあります。

「食器」イメージイラスト

食器の構成成分(主素材・副素材)
大分類 中分類 総称名
主素材 プラスチック 不飽和ポリエステル樹脂(UP)、メラミン樹脂(MF)、ユリア樹脂(UF)、フェノール樹脂(PF)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド(PA)、生分解性プラスチック
ガラス ソーダガラス、クリスタルガラス、硼珪酸ガラス、耐熱強化ガラス
陶器、磁器
金属 ステンレス、アルミニウム、銀、錫
パルプ
ケヤキ、トチ、ブナ、サクラ、ミズメ、カエデ、ヒノキ、ヒバ、アカマツなど
副素材 安定剤 金属石けん系安定剤
紫外線吸収剤 サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系
釉薬 透明釉、タルク釉、失透釉、ブリストル釉、乳濁釉マット釉、結晶釉
蛍光剤 蛍光増白染料
ラミネート剤 ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム
うるし(漆) うるし

1.主素材

1-1.主なプラスチック素材

1)不飽和ポリエステル樹脂(UP)

不飽和ポリエステルの原料は、無水マレイン酸や無水フタル酸、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが主なものです。電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性が良く、ガラス繊維で補強したものは特に機械的強度が強いと言われています。食器、トレー等に多く使用されます。

2)メラニン樹脂(MF)

メラミン樹脂の原料は、メラミンとホルムアルデヒドが主なものです。硬度が大きく耐水性や耐熱性も良く、陶器に似ています。食器、トレー等に使用されます。

3)ユリア樹脂(UF)

ユリア樹脂の原料は、ユリア(尿素)とホルムアルデヒドが主なものです。メラニン樹脂に似ており、燃えにくい性質があります。鍋のふた等に使用されます。

4)フェノール樹脂(PF)

フェノール樹脂の原料は、フェノールとホルムアルデヒドが主なものです。フェノールの代わりにクレゾールやキシレノールなどのアルキルフェノール類も目的に応じて使用されます。電気絶縁性、耐酸性、耐熱性、耐水性が良く、鍋、やかんの取っ手・つまみ等に使用されます。

5)ポリウレタン樹脂(PUR)

ポリウレタン樹脂の原料は、各種のイソシアネートとポリオールです。イソシアネートではトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が主なもので、ポリオールではポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが主なものです。ポリウレタン樹脂には、軟質と硬質があり、軟質はスポンジに似ています。皿やタワシ等に使用されます。

6)ポリプロピレン(PP)

ポリプロピレンは、プロピレンを重合させたもので、ポリエチレンに似ています。ポリエチレンに比べ、比重が小さく、耐熱温度(100℃~140℃)が高く、耐熱性がよくつやがあります。代表的な食品関連用途としては、米菓、ラーメン、レトルト食品の包装、マーガリンの容器、弁当箱、食用油やケチャップのボトルなどがあります。

7)ポリスチレン(PS)

ポリスチレンは、スチレンを重合させたもので、スチロール樹脂と呼ばれることもあります。一般ポリスチレンは透明性が良く着色が容易ですが、傷つきやすいところがあります。食品関連用途としてはトレー、コップ、調味料入れなどに使用されています。また、ポリスチレンを数倍~数十倍に発泡させたものが、発泡ポリスチレンです。魚、肉、野菜のトレー、カップ麺の容器、乳酸菌飲料容器、弁当等の折箱、使い捨てコップ、野菜・果物・魚などを運ぶコンテナーなどに使用されています。

8)ハイインパクトポリスチレン(HIPS)

スチレンを重合させる時に、ポリブタジエン等を添加して一般ポリスチレンの耐衝撃性を改良したものです。食器関連用途として、カップ麺、アイスクリームのカップ等に使われています。

9)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)

ASの原料は、アクリロニトリル、スチレンが主なものです。ポリアクリロニトリルが持つ剛性、耐薬品性、耐熱性、ポリスチレンが持つ成形性、表面外観がミックスした樹脂特性をもっています。食品関連用途としては、コップ、皿、冷蔵庫の低温ケース、ジューサーミキサーやコーヒーメーカー等の部品などがあります。

10)ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ABS)

ABS樹脂の原料は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンが主なものです。ポリアクリロニトリルが持つ剛性、耐薬品性、耐熱性、ポリスチレンが持つ成形性、表面外観やポリブタジエンが持つ耐衝撃性、耐寒性がバランスよくミックスした樹脂特性をもっています。食品関連用途としては、ジューサーミキサー、コーヒーミル、コーヒーメーカー等の部品、電気冷蔵庫、電子レンジの部品などの他、ポット、ジャー、浄水器、米びつ計量器などがあります。

11)ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネートの原料は、ビスフェノールAと塩化カルボニル又はジフェニルカーボネートが主なものです。無色透明で、酸には強いが、アルカリに弱いといえます。強靭な性質で、耐熱温度も130℃と高く、耐衝撃性や電気絶縁性に優れた特性を持っています。食品関連用途として、水ようかんやカレールーの容器、弁当箱、ビ-ルのジョッキや食器等に使用されています。以前はプラスチックの哺乳瓶の大半はポリカーボネート製でしたが、最近はポリプロピレンに替わってきています。

12) ポリエチレン(PE)

ポリエチレンは、エチレンを重合させたもので、比重が小さい、化学的に安定で耐水性、耐薬品性がある、強靭で可とう性(曲げても割れない)があり、低温でもぜい化しにくい(もろくなりにくい)、加工性がよいなどの特長があります。ポリエチレンの種類として、密度から低密度と高密度に大別されます。低密度ポリエチレンは水より軽く柔軟性がありますが、耐熱性に欠けます。食品関連用途として、ビンのキャップ、牛乳パックのコーティングや生鮮食品用ラップフィルムなどに使われています。高密度ポリエチレンは不透明で、剛性がありますが、耐熱性に欠けます。食品関連用途として、スーパーのレジ袋、お菓子の包装、バケツなどに使用されています。

13) ポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレートの原料は、テレフタル酸とエチレングリコールが主なものです。PETは、透明性、耐熱性、ガス遮断性、耐薬品性に優れており、食品関連用途としては、各種飲料、醤油、ソース、食用油、清酒、ビールのボトルがあり、その他、結晶性を変化させた非結晶PETは、電子レンジやオーブンでの加熱用容器、漬物や総菜用容器等の用途があります。

14)ポリエチレンナフタレート(PEN)

ポリエチレンナフタレートの原料は、2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールが主なものです。PENは、PETと同様の透明性、耐薬品性があり、更に高耐熱性、高ガス遮断性、紫外線遮断性等があります。食品関連用途として、ミネラルウオーターの繰り返し使用ボトルや学校給食用食器等があります。

15)塩化ビニル樹脂(PVC)

塩化ビニル樹脂は、エチレンと塩素を原料として合成された塩化ビニルを重合させたものに、可塑剤や塩化ビニル安定剤等を添加した樹脂で、可塑剤が多く添加されたものは軟らかく軟質塩化ビニル樹脂と呼ばれ、可塑剤の添加量が少量のものは硬質塩化ビニル樹脂と呼ばれています。耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、難燃性、電気絶縁性に優れ各種溶剤類にも耐える性質があります。食品関連用途として、軟質塩化ビニル樹脂は食品包装用フィルム、トレー等、硬質塩化ビニル樹脂は、各種容器やパイプ等があります。

16)塩化ビニリデン樹脂(PVDC)

塩化ビニリデン樹脂は、塩化ビニルと塩素から合成された塩化ビニリデンと少量の塩化ビニルやアクリロニトリルと共重合させた樹脂です。塩化ビニルと共重合させた樹脂は、耐薬品性、耐水性、ガスバリヤー性が優れ、食品関連用途として、食品のケーシングやラップ、容器等があります。また、アクリロニトリルと共重合させたものも、耐薬品性、耐水性、ガスバリヤー性に優れる他、溶剤に可溶な性質があることから用途は紙製コップのコーティングなどの用途があります。

17)メタクリル樹脂(PMMA)

メタクリル樹脂の原料は、メタクリル酸メチルを重合させたものです。透明性、耐候性に優れ、機械強度が良好で表面硬度が高い特性があり、有機ガラスと呼ばれることもあります。食品関連用途としては、サラダボール、シュガーポット等があり、電子レンジ用窓にも使われています。

18) ポリアクリロニトリル(PAN)

アクリロニトリルを重合したものを主体とするポリマーで、ガスバリヤー性、耐薬品性、保香性に優れています。食品関連用途として、味噌カップ、魚卵容器、菓子容器、精米容器、茶容器、コーヒー容器などがあります。

19)ポリメチルペンテン(PMP)

ポリメチルペンテンは、4-メチル-1-ペンテンを重合させたもので、TPX樹脂とも呼ばれています。ポリエチレンやポリプロピレンに比べ、透明性、耐熱性、ガス透過性が優れています。食品関連用途として、電子レンジ用調理具、コーヒーメーカー用部品、耐熱ラップ、青果用鮮度保持包材等があります。

20)エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)

エチレンビニルアルコール共重合体の原料は、エチレンと酢酸ビニルが主なものです。ガスバリヤー性、保香性、耐油性、耐薬品性、光沢性に優れています。食品関連用途として、レトルト食品カップ、味噌カップなどがあります。

21)生分解性プラスチック

生分解性プラスチックは、環境中で分解し最終的には、水と二酸化炭素になるプラスチックの総称です。原料としては、バクテリアセルロース、酢酸セルロース、ポリアミノ酢酸、ポリ乳酸、ポリビニルアルコールなどがあります。食品関連用途として、生鮮食品トレー、インスタント食品容器、弁当箱等があります。

1-2.ガラス素材

ガラスは、珪酸を主成分とした無機物を高温で溶かし、これを冷ます時、結晶ができないようにして固まってできたもので、均一な性質となめらかな表面を持っています。

また、長期間変質しないことから優秀な食器の素材として使用されています。次に食器に使用されている主なガラスについて説明します。

1)ソーダガラス

一般的な普通のガラス(窓ガラスなど)で主な原料は、珪酸、ソーダ灰(炭酸二ナトリウム)、ソーダ石灰(酸化カルシウム)などです。ソーダガラスは、軽く、なめらかな表面を持ち、業務用、家庭用食器の主流となっています。食器の破損しやすい口部を強化するために、HS口部強化加工が施されています。

注)HS(Heat Strengthened):加熱急冷することで強化する手法

2)クリスタルガラス(鉛ガラス)

鉛クリスタルは鉛含有率24%以上のもの言い、セミクリスタルとは鉛含有率10%前後のものを指します。主な原料は、珪酸、炭酸カリウム、酸化鉛です。成分の鉛により重量感があり、光の屈折率が増す為、透明感と光沢性に優れています。この特性を活かしてカット等を施した最高級ランク品に使われますが、軟らかく傷が付きやすい為、デリケートな取り扱いを必要とします。セミクリスタルガラスはソーダガラスの丈夫さ・軽さと、クリスタルの美しさを兼ね備える業務用・家庭用高級食器として使われています。

3)硼珪酸(ほうけいさん)ガラス(耐熱ガラス)

耐熱ガラスは、珪酸、硼酸(ほうさん)、ソーダ灰(炭酸二ナトリウム)が主原料です。このガラスは膨張率が小さいので、熱に強く、硬く、軽く、透明度は低いことが特徴です。電子レンジやオーブン用の食器、コーヒーポットなどに使用されています。

4)ガラスセラミック(超耐熱ガラス)

超耐熱ガラスは、珪酸、アルミナ(酸化アルミニウム)が主原料です。このガラスは、熱膨張率が極めて小さく、機械的強度も大きく、耐熱、耐酸性に優れています。鍋や電磁調理器用天板などに使用されています。

5)強化ガラス

強化ガラスは、ガラスが割れる原因の引っ張り力に対抗するため、表層部分に圧縮応力層を作り破壊強度を強くしたものです。弱点は、普通のガラスより、割れるときに破片が激しく飛び散り危険であるとの指摘もあります。皿、コップやなべぶたなどに使用されています。

1-3.土石素材

1) 陶土(粘土)

陶土(粘土)は陶器の主原料で、その成分は長石、ケイ石など石質原料が約50%、粘土質原料が約50%で、微量の鉄分や有機物を含有しています。陶器は、形を作って乾燥したものを素焼きをして、その上から釉薬をかけて1100~1200℃ で焼成します。陶器には、益子焼、薩摩焼、萩焼などあります。

注)長石:組成は(Ca,Na,K)AlSi3O8で示される。珪石:組成はSiO2で示される。粘土質原料:長石やケイ石などが風化し細かくなったものに鉄分や有機物が混ざったもの。

2)陶石

磁器の原料は陶石と呼ばれる石を細かく砕いたもので、その成分は長石、ケイ石など石質原料が約60%、粘土質原料が約40%ですが、鉄分や有機物などはほとんど含んでいません。磁器は、形を作って乾燥したものを素焼きをして、釉薬をかけない素地のまま、または、釉薬をかけて、更に1300℃~1400 ℃で焼成します。磁器には、有田焼、久谷焼、砥部焼などがあります。

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1-4.金属素材

1)ステンレス

ステンレスは、鉄が主成分で、添加されるニッケル、クローム、炭素の量によって等級や用途が分かれています。食卓用のスプーン、ナイフ、フォークなどの素材として最もポピュラーに使用されています。

2)アルミニウム

軽く、耐食性(酸化被膜による)があり、加工性もよいため、アルミニウムのままだけでなく、合金などの形でも広く利用されています。ジュース、ビール類の容器に使われるアルミ缶は身近に使われている例の一つで、鍋、やかんやレジャー用食器等にも使用されています。

3)銀

通常の純銀製品と称されるものは、純度92.5 %の銀を使用します。これ以上純度を上げるとやわらかくなり過ぎて機能を果たすことができません。また、洋白銀器と呼ばれているものはニッケルと銅と亜鉛とから成る合金で、比重と色が銀に似ていることから高価な銀の代用として古くから素材として使用されてきました。一般的にはこれに銀メッキを施しています。スプーン、ナイフ、フォーク、食器、容器等に使用されています。

4)銅

比較的軽く、耐食性、加工性がよいため、銅そのものだけでなく、合金の形でも広く利用されています。熱伝導率が高いことから、鍋、やかんなどの調理器に使用される他、食器等に使用されています。

1-5.紙素材

紙素材は、木材などの植物性繊維を水に分散させて、脱水、乾燥の過程を経て、繊維を絡み合わせて作ったシート状のもので、紙コップ・紙皿等多種多様に使用されています。通常、水や油等が浸透しないようにラミネート材と呼ばれるもので表面が覆われています。ラミネート材は副資材の項で説明します。

1-6.木素材

食器等に使用される木は、ケヤキ、トチ、ブナ、サクラ、ミズメ、カエデ、ヒノキ、ヒバ、アカマツなどがあります。木は、熱電導率が低く、接触したときの感じなど総合的な性質から優れた材料です。表面の保護や美粧化のために、漆塗り、カシュ塗り、ウレタン塗り等表面処理が施されています。汁物の椀・お盆や箸などに使用されています。

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2.副資材

副資材は、主素材に加工性、耐久性等の機能を付与するために添加される各種の添加剤ですが、通常は軟質塩化ビニル樹脂に添加される可塑剤以外の添加量は僅かな量です。

2-1.プラスチック配合剤

プラスチックには、加工する際に加工し易くする滑剤、硬さ軟らかさを調節する可塑剤、製品使用時に熱、光、酸素、静電気などからの影響を防止するための紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、結晶核剤などが添加されていますが、主なものを説明します。

1)塩化ビニル安定剤

塩化ビニル樹脂の熱安定性の向上や着色防止のために添加する物で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などが使用されています。安定剤は塩化ビニル樹脂に添加することで、樹脂の熱安定性向上や着色防止に優れた効果を示します。

2)可塑剤

可塑剤は、ポリマー分子間に浸透して、ポリマー間の分子間力を弱め、ポリマーに柔軟性を与えます。特に、塩化ビニル樹脂においては、可塑剤の添加量により自由に樹脂の柔軟性が制御できるため多く使用されています。可塑剤は相溶性が優れた一次可塑剤と、それが劣った二次可塑剤に分けられます。前者にはフタル酸エステルや多価アルコールの脂肪酸エステルがあり、後者にはエポキシ化合物などがあります。

3)紫外線吸収剤

紫外線には大きなエネルギーがあり、プラスチックの主成分のポリマーに直接作用して結合を破壊し、劣化させますが、紫外線吸収剤が存在すると紫外線エネルギーを吸収し、紫外線吸収剤分子の内部変化にそのエネルギーを消費し、ポリマーにエネルギーを及ぼさない作用をします。紫外線吸収剤には、サリチル酸系およびベンゾフェノン系化合物が使用されています。

4)酸化防止剤

酸素・オゾンは熱や光によって、プラスチックの一部と過酸化物をつくり、その過酸化物は分解してその部分を変質させ、また、同時に活性に富んだラジカルを生成し、プラスチックの強度の低下、ひび割れ、着色、電気絶縁性の低下を起こします。酸化防止剤は、ラジカルを不活性化して作用が広がらないようにする、生成した過酸化物を分解する、過酸化物の酸化作用を促進する重金属を捕捉するなどの作用をしています。酸化防止剤には、フェノール系、硫黄系、リン酸系の化合物が使用されています。

5)着色剤

着色剤は、プラスチックを着色するものですが、そのほかに、光の遮断、吸収等による耐光性をプラスチックに付与します。着色剤には、無機顔料などが使用されています。

6)滑剤

プラスチックの成形加工では、加熱溶融した樹脂を金型に充てん・固化して行われますが、成型機内では樹脂と金属壁との間で摩擦抵抗が生じ樹脂の流動性に作用し、成型品の生産性・仕上がり性に影響が出ます。滑剤はこの摩擦抵抗を低下させて溶融樹脂の流動性をよくして成形性を改善する配合剤です。炭化水素系、金属石けん系、アミド系、エステル系の化合物が用いられます。

7)結晶核剤

結晶核剤は、結晶性プラスチックの結晶化をコントロールすることで、そのプラスチックの剛性、耐熱性、透明性、表面光沢性等の物性を向上させるもので、タルク、シリカなどの無機系化合物と安息香酸ナトリウムなどの有機系化合物が使用されています。

2-2.釉薬

釉薬は、陶器や磁器を作るときに、素焼きをしたものの表面につける薬で、高温で焼くことにより溶け出し、陶器や磁器の表面にガラス状の膜を作ります。釉薬の原料は主に灰と土で、それに鉄や銅などの金属酸化物、長石や陶石が混ぜられています。

2-3.蛍光剤(蛍光増白剤)

染料の一種で、太陽光のなかの目に見えない紫外線を吸収して、目に見える青色の光(蛍光)を放出する物質です。青色の光が紙の黄色みをうち消し、見た目に白さが増して見えます。紙製コップ、皿などに使用されています。

2-4.ラミネート材

ラミネート材は、紙製品の表面を覆い湿気や水、果汁、牛乳等の液体類が紙本体に浸透し、破損して漏れることを防ぐ働きや臭いの移行を防ぐ働きなどをするものです。ラミネート材には、ポリ塩化ビニルフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリプロピレンフィルムやアルミ箔などがあります。フィルムは、50℃以上の温度にさらされると縮む性質があることを利用して、紙製コップ、皿、容器などを包んだ後、熱風を当てて紙本体に密着させ、液体類が紙本体に浸透しないようにしています。また、紙コップや紙容器の内面になる部分に、アルミ箔塗布フィルムを貼り付ける方法も使われています。

2-5.うるし

漆は、ウルシ、ヤマウルシのからとった樹液を加工した、ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料です。主に木製の食器類に使用されていますが、一部のプラスチック食器類にも使用されています。

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