製品安全

Vol.18  3月10日号「誤使用事故防止対策の原点?」

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                       http://www.jiko.nite.go.jp/

====================2006.3.10 Vol. 18===================
┌─────┐
│PSコラム│
└─────◆───────────────────────────┐
      │      誤使用事故防止対策の原点?         │
      └───────────────────────────┘

◇マーフィーの法則をご存知だろうか。今から約10年前にブームになり、お
 そらく本の名前を一度は耳にされた経験があるのではないか。一般的には、
 起こりえる教訓めいた笑い話を集めたものだと思われているのだが、実は、
 法則の出発点は製品安全とも大変関連性があると言ったら、意外に思われる
 だろう。

◇本を引っ張り出し久しぶりに読んでみたが大変おもしろい。この中から、製
 品安全とも関連のあるものを次に抜粋してみた。確かにいくつかは、製品安
 全と関係があるとも見れなくはない。
 ・失敗する可能性のあるものは、失敗する。 
 ・4つの問題点を見つけて対処すると、すぐ5番目の問題が発生する。
 ・何かが順調なときは、何かがおかしくなる。
 ・誰もが理解できる説明を誤解する人がかならずいる。
 ・遅かれ早かれ、最悪の状況がかならず起こる。
 ・すべてのシステムは、想像できる最悪の状況に対応できなければならない。
 ・危機に臨むと、人は最悪の選択をする。

◇マーフィーの法則の発祥を調べてみた。米国のパイロットがテスト飛行中に
 重力測定装置の異常を認めて戻ってきたらしい。原因は誰かが装置を間違っ
 た設定をしていたことが判明。この事件に関して1949年、米国エドワー
 ズ空軍基地でマーフィー空軍大尉が言った台詞が「いくつかの方法があって、
 1つが悲惨な結果に終わる方法であるとき、人はそれを選ぶ。」というもの
 だったという。事故に遭遇したパイロットがマーフィー空軍大尉の話を広く
 紹介したことが始まりである。

◇航空機システムの安全性については、おそらく人類が工業製品の中で事故防
 止のために本気で考えなければならなかった初めてのものではないか。マー
 フィーの発した言葉である”If anything can go wrong, it will”。「間
 違う可能性のあるものは、いつか誰かが間違う。誰が使っても間違わないよ
 うに設計してくれ」ときっと言いたかったのだろう。これは現在の消費生活
 用製品の誤使用事故防止対策に相通じるものがある。
            (参考文献)株式会社アスキー マーフィーの法則

                              (編集子)

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                目次 
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1.事故100選
    第1回「繊維製品の劇症アレルギー事故(後編)」
2.事故情報 
   ・消費生活用製品の事故情報収集状況(2月20日~3月3日受付109件)
   ・繊維製品による事故
   ・昨年4月に発生した事故の傾向
   ・消費生活用製品以外の事故(3件)
3.社告情報(1件)
4.NITEの製品安全情報
   ・事故情報収集制度における事故情報の調査結果及び収集状況について
                                        (平成17年度第3四半期)公表 
   ・「平成16年度事故情報収集制度報告書」を3月15日に発売 
5.関係機関の製品安全情報
   ・ガス栓からのガス漏えい事故の再発防止について   経済産業省
   ・「消費生活用製品のリコールに関する公開セミナー  
     -リコールハンドブック以降の実践的報告から-」を開催(有料)
                             財団法人製品安全協会 
6.編集後記
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             1.事故100選
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 過去にNITEが事故原因究明を実施したものや、試験研究機関などが原因
究明した事例の中に、その事故原因が、安全な製品を設計する上で教訓となる
事例が多数存在します。NITEはこのような事例は事業者が安全な製品を設
計する上で不可欠な情報であり、風化させてはならないと考えています。当時
の状況を調査し、事故100選として紹介することにしました。

      第1回「繊維製品の劇症アレルギー事故(後編)」

◇ やっとの思いで測定した質量分析であったが、さらに、化学構造の決定が
 難航した(二重結合位置が不明であった)。最終的に化学構造が決定された
 のは事故発生から約1年半経過していた。
   ・原因物質名:ホスゲン(2,5-ジクロロフェニル)ヒドラゾン
    参考文献:Contact Dermatitis, 23,129-141(1990)
  この原因物質のアレルギーを引き起こす能力は、当時の状況、動物実験の
 結果等から、人や動物にアレルギー状態を誘導するため用いられる標準的な
 化学物質に匹敵するか、それ以上とされている。

◇ 黄色のサマーセーターの劇症アレルギー事故の事故原因は、塩素漂白によ
 って新たな原因物質が生成したものであることが明らかになったことから、
 国は事故防止の観点から 2つの行政通達を行った。
  ・昭和63年10月21日 通商産業省生活産業局長通達63生局第226号
  「製品漂白加工製品の着用による皮膚障害について」
  ・昭和63年10月29日 厚生省生活衛生局長通達63衛生第30号
  「黄色セーター等による事故発生の防止対策について」
  この2つの行政通達により、現在でも漂白加工を行った製品は、十分な安
 全確認が必要とされている。

◇ この製品事故は、繊維製品の事業者に衝撃を与え、今でも語り継がれてい
 る。しかし、この話を単に繊維製品の事故と考えてはいけない。
   化学物質は色々な消費生活用品に使用されている。安全な製品を企画・設
 計する上でリスクアセスメントは不可欠である。未知の化学物質が含まれた
 製品や製品の加工段階で新たな化学物質が生み出される可能性を持つ製品に
 ついては、未知の化学物質のリスクアセスメントを忘れてはならないのであ
 る。

   ☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/ 

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              2.事故情報
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 ◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆ 
       (2月20日~3月3日受付109件)

 NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
 の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
                 
    製品名(事故状況と件数)        [前号比(件数±)]
  =============================================================
  1. 石油ストーブ   (火災    18件)   [- 2]      
  2. 配線器具     (火災等    9件)    [+ 4]
  3. ガスこんろ    (火災     7件)   [- 6]
  4. エアコン     (火災等    6件)   [+ 3]
   . ストーブ(*1)   (火災     6件)   [- 9]

  (*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
  (*1)「ストーブ」は、石油・ガスストーブ等の種別が判明していないもの。

 ◆◆◇ 繊維製品による事故 ◇◆◆

 繊維製品による事故で、NITEに平成15年度、平成16年度に通知され
て調査が終了し公表している事故情報(平成17年度第3四半期報告分まで)
は13件でした。事例を抜粋してご紹介します。

 ◇事故事例

  【子供用靴下】
  ・購入したばかりの靴下を履こうとしたところ、靴下の中に入っていた針
   で右足に擦過傷を負った。
  ------------------------------------------------------------------
  →靴下に入っていた針は編み機用の針(長さ約7cm)であることが判明。
   工程のどの段階で混入したものかは特定できなかった。
                           (品質管理不十分)
  【ブラジャー】
  ・着用中にブラジャーのワイヤーが折れ、胸の下に刺さった。
  ------------------------------------------------------------------
  →折れたワイヤーに金属疲労に類似した破断面が確認されたことから、ブ
  ラジャーのサイズが合っていなかったことや不適切な洗濯を繰り返したこ
  とにより過度な負荷を受けたために折れたものと推定される。
                           (消費者の誤使用)
  【トレーナー(婦人用)】
  ・調理中、ガスこんろの火が着用していたトレーナーに着火し、炎が広が
  って髪の毛が焦げた。  
  ------------------------------------------------------------------
  →本来裏面で使用する目的で作られた裏毛起毛面を、表面に使用したフレ
  アースリーブ(袖口が広がった)デザインの綿製トレーナーであったため、
  ガスこんろの火が着火し、表面フラッシュ現象(材料表面の炎の急速な広
  がり)が発生したものと推定される。なお、火気に対する注意表示をして
  いなかった。              (表示又は取扱説明書の不備)
  
 ◆◆◇ 昨年4月に発生した事故の傾向 ◇◆◆ 

 平成17年4月発生の事故は、179件中68件(約38%)が『燃焼器具』
の事故でした。その次に、『家庭用電気製品』67件(約37%)、『乗物・
乗物用品』25件(約14%)でした。品名別では、ガスこんろ22件、石油
ストーブが15件、四輪自動車15件と、多く報告されています。
 
・・・‥‥…………………………………………………………………‥‥・・・

 ◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆

◇『公園遊具の鉄柵の間に入れた女児の頭が抜けなくなる』(2/18 大阪府)
 公園の滑り台付き遊具で遊んでいた女児が、遊具の階段を囲む鉄柵の間に頭
を入れ、抜けなくなった。

◇『大型トラックの右後輪付近から出火』(2/18 兵庫県)
 高速道路で、走行中の大型トラックの右後輪付近から出火し、消火作業の際
に、消火水に積み荷の化学薬品(強酸性劇物)が溶出し、排水口から近くの川
に流出した。

◇『駅構内のシャッターで男性が圧死』(3/1 京都府)
 駅構内で、男性が電動シャッターと床の間に挟まれ死亡した。警察では、駅
職員がシャッターを閉める際に安全確認を怠ったとみて調べている。シャッタ
ーは障害物を感知して停止する仕組みではなかった。

■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 
  NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
  http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html

■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■

  NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
 その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
 
 【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
 【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
 【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
  【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp

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              3.社告情報
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◇平成18年2月15日 株式会社トークツ・グループ 「婦人靴」
 一部製品の中に、ヒール部分の強度不足により、着用中にヒールが折れる可
能性のあることが判明した。(製品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060215.html

■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

 【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
 【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php

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           4.NITEの製品安全情報
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 ◆◆◇ 【NITEホームページ】            ◇◆◆
    事故情報収集制度における事故情報の調査結果及び
    収集状況について(平成17年度第3四半期)公表 
 
 平成17年度第3四半期(平成17年10月~12月)において、NITE
が事故情報に関し、調査、確認、評価を行った上で、専門家により構成される
事故動向等解析専門委員会による審議を経た結果及びNITEが収集した事故
情報の収集状況について取りまとめ、公表しました。

 ◇事故情報調査結果 
   平成17年度第3四半期中に事故原因等の調査が終了し、事故動向等解
  析専門委員会の審議を終えたものは339件でした。そのうち、製品に起
  因する事故は72件です。

 ◇事故情報収集状況
   平成17年度第3四半期中に収集した製品事故の情報は702件でした。
  そのうち、「燃焼器具」の収集件数が最も多く、次いで「家庭用電気製品」
  「乗物・乗物用品」の順に収集件数が多くなっています。また、被害状況
  で、人的被害の発生した事故情報は292件で、その内訳は死亡事故99
  件、重傷事故31件、軽傷事故162件です。人的被害のない、火災等の
  拡大被害が発生した事故情報は314件でした。

【詳細】 http://www.jiko.nite.go.jp/index9.html
 
 ◆◆◇ 「平成16年度 事故情報収集制度報告書 ◇◆◆
      ~製品の安全、くらしの安心~」を
                   3月15日に発売

 本報告書は、NITEが平成16年度に収集した製品の事故情報とNITE
が調査を行い、学識経験者等により構成される委員会で審査・評価を得た結果
や製品事故の動向等を取りまとめたものです。 
 設計不良などの「製品に起因する事故」から、消費者の誤使用・不注意など
の「製品に起因しない事故」について掲載し、特に、「製品に起因する事故」
については、同種事故の未然・再発防止を図るために、事故製品の型式、製造
事業者名等の情報を掲載しています。

 ◇個別の事故情報を製品ごとに整理
 ◇ホームページの事故情報データーベースを利用しやすくするため
  「事故情報検索の手引き」を付録として掲載
 ◇事故情報検索キーワードの参考に「品名」一覧表を掲載

 ・A4版 ・923頁 ・定価 3,700円(本体 3,524円+税)

【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/reports/H16report.html

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           5.関係機関の製品安全情報
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 ◆◆◇ ガス栓からのガス漏えい事故の再発防止について  ◆◆◇
                             経済産業省 
 
                         平成18年2月28日
 東京ガス株式会社が平成10年9月から平成16年1月までに家庭用ガスコ
ンロの接続用として設置した「空気抜き孔付き機器接続ガス栓」の一部に、ガ
ス漏れが発生する可能性があることが判明しました。これを受けて、経済産業
省では、今後の対応策等について報告するよう、東京ガス株式会社に対しては
2月28日に指示したところであり、他のガス事業者に対しても速やかに指示
することとしています。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060228001/20060228001.html

                          平成18年3月1日
 東京ガス株式会社が確認作業を実施する旨を2月27日に発表した空気抜き
孔付き機器接続ガス栓について、東京ガス株式会社以外の事業者においても同
タイプのガス栓が使用されている場合があることから、原子力安全・保安院は
3月1日、全国の都市ガス事業者及び液化石油ガス販売事業者に対し、設置状
況の調査を行うとともに、設置されている場合は、今後適切な対応をとるよう
指示しました。また、需要家への注意喚起を行う観点から、当該ガス栓の使用
に関し、現時点で原子力安全・保安院が把握している一般ガス事業者について
公表いたします。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060301006/20060301006.html

 ◆◆◇ 「消費生活用製品のリコールに関する公開セミナー  ◆◆◇
      -リコールハンドブック以降の実践的報告から-」
               を開催(有料) 財団法人製品安全協会 

 財団法人製品安全協会は、「消費生活用製品のリコールハンドブック」作成
に関係してきた経験に加え、リコールの実行企業や関係者の実務的な経験や知
見を、さらに広い観点から共有し、リコールに対する理解を図る目的でセミナ
ーを開催します。

     【日時】平成18年3月22日(水)13:30~17:00
     【場所】機会振興会館 地下3階「研修室-1」
     【詳細・申込方法】  http://www.sg-mark.org/

 【参考】経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック」
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/contents/recall/recall.htm

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              6.編集後記
===================================

 花粉症の季節が到来しています。毎年、春先にくしゃみが出やすくなるので、
「いよいよ花粉症?!」と思いつつ数年過ごしています。アレルギーは、その
アレルゲンに対する許容量が人によって違い、例えると、人によって容量の違
うバケツを持っていて、水(アレルゲン)が溢れた時が発症する時と聞きます。
そろそろ溢れようとしているのかもしれません。

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          【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図