製品安全

Vol.39 12月28日号「アロマポットのろうそくで火傷した事故(後編)」

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         ■ 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE・ナイト)
      ■■■        生活・福祉技術センター 製品安全企画課
                       http://www.jiko.nite.go.jp/

===================2006.12.28 Vol. 39==================

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  ◆PSコラム◆        今年最後のコラム
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◇今年最後のコラムを書くことにしたい。PSコラムで常々取り上げたいと思
 っていたテーマである。それは、今年、一番感じたことでも ある。製品安
 全というテーマに絞ってだれもが感じたものをとり上げるというのは、なか
 なか難しい。ただ、これから書くことは、おそらくだれもが感じたことでは
 ないかと思う。

◇それは、マスコミでの製品事故のリコール報道が多かったことだ。毎日のテ
 レビや新聞で、製品事故に関する報道が見ない日がほとんどなかったのでは
 ないだろうか。ちなみに、NITEがホームページで「最近の社告・リコー
 ル」(*)として公開している情報によると、平成14年39件、15年61
 件、16年108件、17年89件、18年130件(11月末現在)と過
 去5年間では最高となっている。 

◇リコール費用はというと、昨年から今年にかけて報道されたものを参考に高
 額なものから並べると、約510億円、約240億円、約200億円・・・
 と続く。大企業でなければ倒産する金額だ。PL法施行後、我が国の各事業
 者はPL対策を行ってきたが、PL訴訟で倒産した話はついぞ聞かない。む
 しろ注意すべきは、PL訴訟よりリコール対策だろう。
 
◇では、リコール対策に有効なものは何か。これはPL対策にも相通じるもの
 だが、リスク・アセスメントしかないのではないか。自社の製品について、
 どの部位に危険源が存在し、その危険がどの程度であるか同定・評価するこ
 とと、その結果を真摯に受け入れて対応することである。言わずもがなでは
 あるが、その際には合理的に予見可能な誤使用も考慮しなくてはならない。
 製品安全文化の定着には、事業者側でリスク・アセスメントが当たり前のよ
 うに行われ、事故の未然防止に繋がることこそが不可欠なのではないか。N
 ITEは来年そのためのお手伝いができればと考えている。

    (*) http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
                             (編集子)

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                目次 
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1.事故100選
    第12回「アロマポットのろうそくで火傷した事故」(後編)
2.事故情報 
   ・消費生活用製品の事故情報収集状況(12月11日~12月22日受付225件)
   ・ホットプレートの事故
   ・事故情報収集制度対象外の事故(2件)
3.社告・リコール情報(5件)
4.関係機関の製品安全情報
   ・株式会社トヨトミ製の石油ファンヒーターによる一酸化炭素中毒事故
    への対応について                  経済産業省
   ・電気式浴室換気乾燥暖房機の電源電線接続部の点検要請について
   (第7報)                      経済産業省
   ・電気ストーブのリコールに係る注意喚起について    経済産業省
   ・株式会社優が輸入・販売した電気ストーブ(ハロゲンヒーター)
    について(第2報)                 経済産業省
5.編集後記
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             1.事故100選
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 NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は「アロマポットのろうそくで火傷した事故」の後編です。

  第12回「アロマポットのろうそくで火傷した事故」(後編)

◇テストは以下のサンプルで実施した。
  ろうそく:事故が起きたろうそくの同等品と類似品3銘柄。
  アロマポット:事故が起きたアロマポットと類似品4銘柄。
 事故が起きたアロマポット(以下「ポット事故品」と記載)を観察すると、
 内部天井に煤の付着がみられたこと以外は異常がなかった。

◇事故時、燃焼中のろうそく上面全体が燃え広がったとのことから、ろうそく
 のサンプルについて寸法、形状等を比べたところ、事故が起きたろうそくの
 同等品(以下「ろうそく同等品」と記載)は、類似品と比べて、金属カップ
 の高さ(深さ)とろうそく重量が上回り、芯の長さは約1cm長かった。ま
 た、アロマポットでは、ポット事故品の容積と空気取り入れ口の総面積は、
 サンプル中最大であった。

◇これらの結果、ろうそくとアロマポットとの組み合わせが事故に影響した可
 能性があると推測されたため、いくつかの組み合わせで燃焼実験を行った。
 それによると、ポット事故品との組み合わせで、ろうそく同等品、類似品の
 どちらも、ろうそく全体が溶融し液状となった。特に、ろうそく同等品との
 組み合わせでは、ろうそく上面全体に炎が広がる現象が確認された。また、
 ろうそく単体での燃焼状態について確認したところ、ろうそく同等品では同
 様にろうそく上面全体に炎が広がる現象が発生した。

◇以上のことから総合的に事故発生のメカニズムは以下のとおりと推定した。
 ろうそくは燃焼が進み溶融液面が下がるにつれ炎の位置も下がるものである
 が、ろうそく同等品は金属カップが深く火炎も長いため、炎が金属カップに
 触れやすい。炎に触れることで金属カップ内が高温となりロウに引火しやす
 くなる構造であった。それに加え、ポット事故品との組み合わせでは、空気
 取り入れ口が大きいため炎の揺れが生じやすく金属カップが高温になる可能
 性が高く、溶融したロウに引火したものである。空気取り入れ口が小さいア
 ロマポット類似品では炎の揺れがあまり認められず、引火もせず正常に燃焼
 したことはこれを示している。また、溶解したロウが飛散したことについて
 は、ろうそくをピンセットで移動させる際に若干の振動が加わった場合を想
 定して実験したところ、ロウの飛散が確認されたため、当該状況が加わりロ
 ウの飛散が発生したものと推定した。

◇事故品のろうそくは、輸入品であり、その名称から本来は照明用と判断され
 たが、正確な商品情報、使用方法、注意事項などの日本語表記がなかった。
 輸入事業者は日本語表記を行い、アロマポットなどのバーナーとして使用す
 ることを禁止した。

  ☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/ 

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              2.事故情報
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  ◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆ 
       (12月11日~12月22日受付225件)

 NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
 の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
                 
     製品名(事故状況と件数)        [前号比(件数±)]
   ===============================================================
   1.ガスふろがま(*1)        (誤作動等  34件)[+30]
   2.石油ストーブ           (火災等   25件)[+18]
   3.電気ストーブ          (火災等   18件)[+ 8]
   4.バッテリー(携帯電話用)(*2)  (破裂等   17件)[+15]
   5.石油給湯器            (火災等    8件)[-12]

   (*)  消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。

   (*1) 社告対象品で前年以前発生の事故も含め報告があったもの等
   (*2) 社告対象品でまとめて報告があったもの

  ◆◆◇ ホットプレートの事故 ◇◆◆
 
◇ホットプレートを使用していて、消費者の不注意や誤使用から事故になった
 事例をご紹介します。事例のように本体との接続が不十分であったり、汚れ
 があると異常発熱するおそれがあります。ご使用の際は、取扱説明書の注意
 事項をよくご覧ください。

  ・ホットプレートを使用中、焦げたにおいがして、本体のプラスチック
   ガードが溶けた。
  -----------------------------------------------------------------
  →プレートの温度を調節する自動温度調節器(電源コードと一体になっ
  ていて本体に接続する)が本体に十分に差し込まれていなかったため、
  サーモスタットの感知が悪くなり、プレートが異常に温度上昇し、さら
  に本体とテーブルの間になべ敷きがはさまれた状態であったため、底部
  の空気の流れが遮断され、ガードの温度が異常に上昇し溶融したものと
  推定される。

  ・ホットプレートの本体のプラスチックガードが溶けて穴が開いた。
  -----------------------------------------------------------------
  →ホットプレートの遮熱板に調味料や調理物が付着した状態で使用して
  いたため、熱反射が悪くなり、使用時のヒーター熱が遮熱板側に伝導し
  て高温となり、遮熱板の下にある本体プラスチックガードも高温となっ
  て熱変形したものと推定される。なお、取扱説明書に「異物や汚れがつ
  いたまま使用すると異常発熱し、テーブルが焦げたり故障の原因となる」
  旨の注意表示の記載があった。

  ・木造住宅から出火して全焼し、隣接の倉庫等3棟に延焼して、1名が
   火傷を負った。
  -----------------------------------------------------------------
  →家人が、やぐらを作って布団をかけ、その中にホットプレートを入れ
  てこたつ代わりにしていたため、布団等の可燃物が接触して燃え、火災
  に至ったと推定される。

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 ◆◆◇ 事故情報収集制度対象外の事故(12月11日~12月22日収集) ◇◆◆

◇育苗機から出火し納屋全焼(12/6 石川県)
 木造平屋の納屋から出火し、101平方メートルを全焼した。警察では、納
屋の奥に設置していた育苗機の電源コードがショートしたとみて原因を調べて
いる。

◇トレーラーのタイヤ脱落(12/14 大阪府)
 走行中のトレーラーから荷台部分のタイヤ2本が突然脱落し、転がったタイ
ヤに併走していたタンクローリーが乗り上げて停車、運転していた男性が胸を
打ち軽いけがをした。警察では、荷台部分の左前部の車輪を固定していたボル
ト8本がすべて折れていることから原因を調べている。

■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 
  NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
  http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html

■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■

  NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
 その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
 
 【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
 【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
 【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
  【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp

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            3.社告・リコール情報
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◇平成18年10月24日 ゲートウェイ社「ノートパソコン用バッテリー」
 ソニーエナジー・デバイス株式会社によって製造されたある一部のリチウム
イオンバッテリがごくまれな状況において過熱する可能性がある。これらのバ
ッテリを搭載したGatewayシステムにおいて同様の問題は起きていない
が、米国消費者製品安全委員会およびソニーに協力し、これらのバッテリを自
主的に回収することにした。 (無償で製品交換(バッテリーパック))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20061024.html

◇平成18年11月7日 ソニー株式会社/ソニーマーケティング株式会社/
   ソニースタイル・ジャパン株式会社/ソニーイーエムシーエス株式会社
   「ノートパソコン用バッテリー」
 ソニー製リチウムイオン電池の一部に微細な金属粒子が混入し、条件によっ
ては稀に過剰発熱などが起きる可能性がある。ソニーVAIOでは、過剰発熱
に至らないよう、各種の安全機構を施したシステム構成になっているが、お客
様により一層ご安心いただくことを最優先とし、自主交換プログラムを実施す
る。(無償で製品交換(バッテリーパック))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20061107d.html

◇平成18年11月10日 高須産業株式会社「換気扇」
 電源接続端子部の取り付け構造に加え、その商品の施工作業のバラツキによ
り、水滴の侵入保護に対して不十分である場合などの要因が重なることにより、
電源接続端子部に埃・塩分・水滴等が堆積することによって、ごく稀に発煙、
発火に至る可能性があることが判明した。(無償で点検・部品交換)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20061110.html

◇平成18年11月21日 オンキヨー株式会社「ヘッドホン(コードレス)」
 付属の単3形ニッケル水素充電池が充電中または使用中、まれに発熱して電
池から液漏れが発生する事が確認された。 (無償で部品交換(充電池))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20061121.html

◇平成18年11月28日 株式会社ソフト99コーポレーション 
             「自動車用非金属タイヤチェーン(再社告)」
 製品接合部の不具合があり、使用中にチェーンが外れてしまう可能性がある。
(平成17年1月8日及び平成17年10月26日に行った社告の再社告)
(製品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20061128a.html

■━━━NITE社告・リコール情報のページ━━━━━━━━━━━━━■

 【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
 【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php

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           4.関係機関の製品安全情報
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  ◆◆◇ 株式会社トヨトミ製の石油ファンヒーターによる ◇◆◆
        一酸化炭素中毒事故への対応について

 経済産業省は、株式会社トヨトミ製の石油ファンヒーター(LCR-3)に
よる死亡事故が発生していることから、新たな拡大被害を防止するため、同社
に対して、当該機種等の回収を早急に行うことなどの指導を行い、同社製の石
油ファンヒーターの事故発生について報告徴収を行いました。また、同社が回
収している対象機種を使用している消費者等に対して、注意を呼びかけていま
す。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061218005/20061218005.html

   ◆◆◇ 電気式浴室換気乾燥暖房機の電源電線接続部の ◇◆◆
          点検要請について(第7報)

 電気式浴室換気乾燥暖房機の一部で、電源電線の接続工事が不適切に行われ
ていたと推定される焼損事故について、本年12月3日、15日に焼損事故が
続いて発生しました。これを受け、経済産業省は点検対象機器の使用者に対し
て、改めて点検を受けるまでは使用を控えるよう要請し、株式会社INAX、
三菱電機株式会社、全日本電気工事業工業組合連合会に対して点検を促進する
ように再度要請しました。また、同省が12月19日現在で把握している点検
実施件数について公表しました。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061222009/20061222009.html

  ◆◆◇ 電気ストーブのリコールに係る注意喚起について ◇◆◆

 経済産業省は、事故の再発防止の観点から、電気ストーブのリコール対象機
種を公表し、該当機種を使用している消費者に使用の中止と、早急に各社が設
けるフリーダイヤルに連絡をするよう呼びかけています。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061222004/20061222004.html

   ◆◆◇ 株式会社優が輸入・販売した電気ストーブ ◇◆◆
       (ハロゲンヒーター)について(第2報)

 経済産業省は、「株式会社優が輸入・販売した電気ストーブ(ハロゲンヒー
ター)に係る注意喚起について」を12月15日に公表しました。この公表を
受けて、当該電気ストーブを販売した販売店から同省に、自主的に当該電気ス
トーブを回収する旨の申し出があり、同省は回収方法等を公表しました。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061222001/20061222001.html

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              5.編集後記
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 前回のPSマガジン配信時、今までにないハプニングがありました。配信セ
ット後、30分以上経っているのにメールが届かない・・・。配信履歴を見る
と確かに完了しているのです。すぐに配信業者さんに連絡したところ、大量の
メールを送っている方がいて遅れているとのこと。日付が変わるのじゃないか
とハラハラしました。今年最後のPSマガジンが無事届くことを祈っています。
 2006年もお読みいただきありがとうございました。
来年も引き続きよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。

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        【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
                生活・福祉技術センター 製品安全企画課

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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図