高分子フロースキーム
高分子化合物の安全性評価フロースキーム(旧高分子フロースキーム)
1.物理化学的性状の試験方法
(1)安定性(分解性及び酸・アルカリ溶解性)
[生分解性試験]
<微生物等による化学物質の分解度試験>に準拠
物理化学的安定性及び酸・アルカリ溶解性試験法
- 1.試料の粒度 可及的に微粉砕を行う。60~80メッシュを目安とする。
- 2.試験液のpHの範囲 OECDテストガイドライン111「pHの関数としての加水分解」に採用されているpH=1.2,4.0,7.0,9.0とする。
- 3.試験温度 40±2℃
- 4.光 室内光
- 5.空気 試験液を攪拌することにより空気との接触をはかする。
- 6.試験期間 2週間 但し、pH1.2については消化器官での滞留時間を考慮し、24時間とする。
- 7.試料濃度 102~104mg/Lの範囲で供試物質の性状に応じて設定する。
- 8.繰返し数 N=2(並行)
- 9.分析 試験開始時と終了時に次の項目について可能な限り分析し、化学変化の有無を調べる。溶存有機炭素濃度(DOC)、重量、分子量、赤外吸収スペクトル、その他
- 安定性試験について
- 光、熱及びpHの変化によって測定方法に起因する誤差範囲以上の重量変化がないこと。誤差範囲以上の重量変化があった場合には、他の分析方法により構造変化がみられないなど物理的・化学的安定性が確認されること。
(2)水及び有機溶媒への溶解性
[試験溶媒]
- 脂肪への親和性の指標:
- n-オクタノール、n-ヘプタン
- 汎用性溶媒:
- トルエン、1,2-ジクロロエタン、n-ヘプタン、イソプロピルアルコール、THF、MIBK、DMF
- 水
[試験条件]
- 1.温度 35~40℃で攪拌後、25±2℃にて平衡させる。
- 2.試験期間 24時間
- 3.供試量 200mg/L、2000mg/Lの2濃度を設定する。
- 4.試料の粒度 可及的に微粉砕を行う。60~80メッシュを目安とする。
- 5.繰返し数 N=2(並行)
- 6.攪拌 溶媒との接触をはかるため常時攪拌又は振とうを行う。
- 7.分析 重量分析を行う。水についてはTOC分析を併せ行う、他の有機溶媒についても、試料の性状に応じて可能な限り、機器分析を考慮する。
- 溶解性の判断
- 非溶解性については、原則として9種の溶媒について確認することが望ましい。また、9種の溶媒のうちの1種に溶解したと判断される場合は、必ずしも他の8種に対する溶解性必須ではない。しかしながら、前述カテゴリーから各1種程度の溶媒への溶解性データを備えることが望ましい。
- 溶解性試験について
-
- (イ)水、脂溶性溶媒及び汎用溶媒に対して測定方法に起因する誤差範囲以上の重量変化がなく不溶と確認されるものであって、特定の構造特性(架橋構造、結晶性等)を有するか、酸、アルカリに不溶と確認されること。
- (ロ)水、脂溶性溶媒及び汎用溶媒に対する溶解性を確認したのもであって、(イ)に該当しないもののうち、分子量1,000未満が1%以下であり、生体内の高蓄積性を示唆する知見がないこと。
(3)構造特性の判断
架橋構造、高結晶性等の構造上の特性を確認し得るポリマー(物理化学的性状、設計意図、架橋前ポリマーとの性状比較等のデータを含む)。
(4)分子量分布の測定
原則としてGPC法によることとし、その際以下の点に留意する。
- 1.分子量換算方法
- イ 一次標準試料(ポリエチレングリコール、ポリスチレン)
- ロ 二次標準試料(分子量または重量平均分子量の分っているもの1~2種)
- ハ 伸長鎖長による方法
- ニ 流体力学的容積による方法
- 2.安定性 ベースラインが直線的であること
- 3.検出器応答感度 応答感度の分子量依存性がないことが望ましい(依存性がある場合は補正する)。
- 4.分離 ポリマーのピークに他のピーク(添加物、溶媒中の不純物など)が重ならないことが望ましい。
- 5.低分子量域のベースラインの引き方 ベースラインの安定性がよい2枚のチャートについて計算し、平均値を求めるのが適当である。
2.高分子化合物の安全性評価フロースキーム
- (1)i )数平均分子量1,000 以上
ii )分子量分布を持つもの
iii )その他一定の溶解性・融点が明瞭でない等の特色を有するもの - (2)微生物による分解性あるいは物理化学的安全性試験(光、熱、酸・アルカリ分解性)
- (3)水、脂溶性溶媒、汎用溶媒
- (4)架橋構造等
- (5)生理活性を有する高分子化合物は個別に審査する
- (6)既知見経由のものを除く
- (7)現時点では参考程度に留める、データの蓄積を待って評価法としての有効性を判断する
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