化学物質管理

CMC letter No.1(創刊号) - [巻頭言]化学物質のリスク管理とNITEの役割

御園生 誠
独立行政法人 製品評価技術基盤機構
理事長

NITEにとって、今年度は、独立行政法人になって第1期5年が終わり新たな第2期5年が始まる大事な年にあたる。「安心を未来につなぐナイトです」を合言葉に、信頼できる技術情報の整備を通して、国民の安全・安心に貢献しようとしている。化学物質管理センターにとっても、化学物質のリスクに関わって10周年の節目であり、その役割を改めて考えるときであろう。

さて、どんな物質でも過剰に摂取すれば害があるし、適量であれば役に立つか、少なくとも害がない。つまり、毒かクスリかは程度問題である。したがって、リスクを、毒性と摂取量(暴露)をもとに定量的に評価してはじめて、化学物質を安全に使いこなせるということになる。

しかしながら、数千万種に及ぶといわれる化学物質の中で、わずかでも毒性データのある物質は、化審法の新規化学物質で数千、既存化学物質ではさらに少ない。詳細なリスク評価のある物質に至っては、まだ数十種である。詳細なリスク評価の重要性はいうまでもないのだが、このような状況で、リスクをきちんと評価して管理せよといっても、判断に戸惑う物質が大部分であり、詳細なリスク評価以外にも必要なことがありそうである。心配し出したらきりがないのだが、その割には、我々は、概ね無難にやってきているし、賢くなっている。これは、経験を通して蓄積した知恵を活用してあるいは類推して判断するという常識を持っているからである。また、物質数は多くはないにしても、各種の法規制に基づく管理によりリスクが相当低減されていることも大きい。つまり、常識と法律、さらには自主規制により、我々は、そこそこ、上手に化学物質とつきあっているといえるのではないだろうか。

とはいえ、アスベストのように、後で大きな問題が発生する場合がある。これは、有害性はわかっていたのに管理に失敗した例といえよう。また、有害性が小さいと考えていたのに予期せぬ悪影響が発生することもある。他方、悪影響が危惧され社会問題になったのだが、よく調べると、実はそれほどのリスクがないと結論された例もある。では、国民の立場に立ったとき、何が一番賢い化学物質との付き合い方(管理法)なのだろうか。これは、実は大変な難題であるが、NITEはこの問題にさらにチャレンジしていきたい。

NITE化学物質管理センターは、化審法、化管法、化兵法などに関する業務を着実に実施して、行政、産業を支援し、それを通じて国民の安全、安心に貢献すべきことはもちろんであるが、これに加えて、国民が安心して化学物質と付き合えるよう、以下に例示する課題にこれまで以上に貢献したい。

  1. (1)法規制、自主管理の合理化・体系化に対して、科学・技術面から貢献
  2. (2)収集したデータを解析・整理し、付加価値を高めて発信
  3. (3)各種レベルの常識の体系化(リスクの類推手法、初期リスク評価など)
  4. (4)国民とのリスクコミュニケーションを増強。国民の疑問に答える体制

第2期は、第1期で整備した基盤に立って新たなステージに向かって飛躍すべき5年である。国民から信頼され評価されるNITEを目指して、力を合わせていきたいと考えている。

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