化学物質管理

CMC letter No.9(第9号) - [特集]平成20年度のNITE化学物質管理センターの業務

9号では、平成20年度に計画されている「構造活性相関手法による有害性評価手法開発」や「GHSへの利用に向けた消費者製品リスク評価手法ガイダンスの公表」など、将来の化学物質管理において重要な役割を担うさまざまな事業について、ご報告いたします。

化学物質の総合管理情報の整備提供

―情報業務課―

化学物質総合情報提供システム(CHRIP)の整備

化学物質総合情報提供システム(CHRIP)は、化学物質管理に係わる方々が必要な情報を収集する手助けとなるデータベース構築を目指してきました。20年度は、以下の項目等について整備を進めます。

  • CHRIPの再構築:サーバ等のシステム機器を更新して、検索速度の向上や安定した情報提供の環境を確保します。併せてシステム上の無駄をなくし、利用しやすいデータベースとするために再構築を行います。
  • PRTR対象化学物質の排出・移動量、環境省環境調査結果など、継続的に整備してきた情報項目のデータを定期的に更新するとともに、表示、解説の見直し等を行います。
  • 19年度に引き続き用途情報を整備するとともに、化学物質の反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験結果をNITEに設置した委員会で審議した後に、要約及びデータシートを公開します。
    また、GHSホームページについては、現在、国連が推進している「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS)の情報と、GHS関係省庁連絡会議が実例として行った約1,400物質の危険有害性の分類結果を掲載しています。今年度は、新たに各省が行った分類結果についても掲載していく予定です。

トルエンに関する用途情報

http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/Top.do

化学物質のリスク等に係る相互理解のための情報の整備提供

一般市民から事業者や自治体等の担当者まで各層のニーズに応じたリスク評価・管理とリスクコミュニケーションの支援を目的に、化学物質の有害性・暴露情報、リスクに関する情報・評価手法などをウェブページなどさまざまなメディアを通じて提供してまいります。

また、PRTRデータ活用セミナーなど積極的な情報提供を図ります。

ウェブページなどを用いた情報提供

化学物質のリスク管理に関する情報を「体系的に」、「わかりやすく」提供するためホームページ、パンフレットなどのコンテンツを整備、拡充していきます。

  • 化学物質を安全に利用するために不可欠な暴露量と、有害性に基づくリスク評価について解説したパンフレット「化学物質のリスク評価について」の内容更新を継続的に行います。
    また、そのリスク評価をウェブ上で体験することができる「リスク評価体験ツール」について、データの追加や表示の見やすさなどの改良を行ってまいります。
  • 事業者のリスクコミュニケーション事例については、引き続き調査を継続し、さらなる拡充を進めています。平成20年4月現在、掲載事例数は、282社、561事例です。また、その分類の工夫やデータベース化など、使いやすさの向上を図ります。
  • 「身の回りの製品に含まれる化学物質」の充実:「身の回りの製品に含まれる化学物質」シリーズとして、「化粧品」、「塗料(家庭用)」、「接着剤(家庭用)」、「洗剤」を冊子及びウェブページで公開しています。さらに、「家庭用殺虫剤」を書籍として発行するほか、「食器」などウェブページ上のみで公開されているコンテンツの見直し、拡充を図ります。

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化学物質のリスク評価、管理のための技術基盤の構築と情報発信に係る取り組み

―リスク評価課―

化学物質のリスク評価、管理のための技術基盤の構築

監視化学物質のリスク評価スキームに関する検討

「化審法における監視化学物質のリスク評価スキームに関する調査(経済産業省委託事業)」では、化審法監視化学物質について、さらに科学的、統一的かつ効率的にリスク評価を行うことで、段階的に懸念のある物質を絞り込むリスク評価スキームの検討を引き続き行い、今年度は技術ガイダンス文書としてとりまとめる予定です。

排出量推計手法の検討

化学物質の暴露評価を行うため、化管法のPRTRデータ(排出量データ)が活用されていますが、PRTR制度対象外の他の多くの化学物質については、その排出量を把握することは難しいのが実情です。このため、今年度は昨年度に引き続き、化審法の対象物質について、化学物質の用途情報と排出係数から排出量を推計する手法の開発を行い、推計精度の向上に努めます。

生活・行動に係わる情報(暴露係数)の調査、整備

「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」プロジェクト(NEDO委託事業:平成19~23年度)に参画し、開発が予定されている室内暴露量を推定するツールへの利用のため、今年度は人の生活や行動に係わる情報の調査、整備を引き続き行います。なお、これら情報は「暴露係数」として、暴露評価を行うための基礎情報としても広く用いられることが期待されるものです。

GHSへの利用に向けた消費者製品リスク評価手法ガイダンス

国連勧告である「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」では、消費者製品中の化学物質による慢性的な健康影響について、所管官庁が認めた手法によりリスク評価を行い、表示の必要性を判断することが認められています。

リスク評価課では、経済産業省からの要請により、まだ世界的にも統一が図られていない消費者製品の慢性的な健康影響リスクを評価するための手法を関係工業会とともに作成し、ガイダンスとしてとりまとめました。今年度はこのガイダンスを公開するとともに成果の普及に努めます。

GHS表示のための消費者製品のリスク評価手法のガイダンス
http://www.safe.nite.go.jp/ghs/risk_consumer.html

慢性的な健康有害性に関するリスク評価に基づく有害性GHS表示の要否の決定プロセス

化学物質のリスク評価・管理のための技術情報の発信

化学物質の初期リスク評価書等

化管法のPRTR対象物質のリスクを評価するため、暴露、リスク評価の手法開発を行い、必要な情報を収集、整備して、150物質の初期リスク評価を実施しました(「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」(NEDO委託事業)、平成18年度終了)。

今年度は、この事業の成果である初期リスク評価書の公開やPRTRデータに基づく大気中の濃度マップなどの成果物の更新を引き続き行います。
http://www.safe.nite.go.jp/risk/syoki_risk.html

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化学物質審査規制法関連業務

―安全審査課―

新規化学物質などの化審法に関する審査のための情報整備

化学物質審査規制法(化審法)に基づき届出された新規化学物質の安全性試験データ、審査結果等のデータを収載したデータベースを整備し、新規化学物質などの審査の効率化を図っています。平成16年度からは、厚生労働省、経済産業省、環境省共同データベース(3省共同化学物質データベース)を構築し、平成18年度から供用を開始しており、今年度からは、本データベースの通称を「J-CHECK(じぇいちぇっく):Japan Chemicals Collaborative Knowledge Database」と名称を改めるとともに、Japanチャレンジプログラムにおいて収集された安全性情報収集報告書や、既存化学物質の安全性点検報告書等を追加し、皆様にご活用いただくべくリニューアルして外部公開を行っています。

今年度も引き続き、3省共同化学物質データベースの活用等を通じて、新規化学物質等の審査に必要な情報を調査し、安全性に関する審査資料を作成します。また、届出者との相談・連絡窓口となり、届出事業者からの事前相談、届出時のヒアリングなどを行うとともに、新規化学物質の告示名称の作成に協力してまいります。

J-CHECKトップイメージ
http://www.safe.nite.go.jp/jcheck/top.action?request_locale=ja

優良試験所基準(GLP)制度に係る業務

化審法では、新規化学物質等の審査に使用される安全性データは、優良試験所基準(GLP)に適合した試験施設で試験して得られたものであることとされています。今年度も引き続き、GLP試験施設への査察等を行い、試験成績の信頼性・国際整合性の確保に努めてまいります。

国際機関の活動への参画等

法規制の国際的な整合性の確保等に資するため、引き続きOECD EHS(Environmental Health and Safety)プログラム関係会合(新規化学物質タスクフォース、GLPワーキンググループ、テストガイドラインワーキンググループ、HPVグローバルポータルステアリンググループ、(Q)SAR専門家会合)に参加して情報収集等を行います。

また、既存化学物質の安全性点検の優先順位付け等の基礎資料となる製造・輸入量実態調査を支援するとともに、適切な法施行の確認のための立入検査を実施してまいります。なお、これらの業務は平成18年度からNITE生活・福祉技術センターと連携して実施しています。

構造活性相関手法による有害性評価手法開発

化学物質の生分解性・生物濃縮性・変異原性・生態毒性を予測するための構造活性相関モデルは数多く開発されていますが、化学物質の反復投与毒性を構造から推定する有効な手法は現在のところ確立されていません。

化学物質の反復投与毒性を構造から推定するためには、類似物質の反復投与毒性試験データだけでなく、分子レベルの毒性作用機序、生体内における代謝の挙動を用いて総合判断することが必要になります。

平成20年度も引き続き、NEDO委託業務「構造活性相関手法による有害性評価手法開発」において、反復投与毒性試験報告書や毒性作用機序・代謝情報等を統合的に集積した知識情報データベースの開発や、集積された既知見を基に未試験の化学物質の反復投与毒性を構造活性相関手法やカテゴリーアプローチにより推定することを支援する有害性評価支援システム統合プラットフォームの開発に取り組んでまいります。

分解性・蓄積性を対象としたカテゴリーアプローチの検討

化審法の既存化学物質及び新規化学物質の試験データを解析することにより、分解性・蓄積性を対象としたカテゴリーアプローチについて検討してまいります。

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化学物質管理促進法関連業務

―リスク管理課―

過年度比較報告書の作成

リスク管理課では、これまで「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化管法」)」に基づくPRTR制度において、届出から公表に至る一連の事業を行う我が国唯一の機関として、化管法が適正に施行できるよう関連業務を行ってきました。

届出データの経年比較は、化管法施行の効果を考える上で重要なものですが、当課では、経年的に、PRTR届出データについて過年度との比較報告書を公表してきました。平成19年度は、PRTR届出が開始されて以降の5年間の届出データの推移について分析を行い、報告書として取りまとめています。

平成20年度は、裾切り値が5トンから1トンに変更され完全施行になって以降の4年間の過年度比較解析を行い、取りまとめる予定です。

PRTRデータと関連情報に基づくデータの解析

PRTRデータは、これまでNITEにおいても初期リスク評価への活用を図るなど、化学物質管理を行う上で重要なデータであり、関連の統計情報を組み合わせて解析を行うことにより、化学物質管理政策への寄与が期待できます。

その一つとして、平成20年度は、届出対象事業所の裾切りの取扱量が5トン(PRTR制度の施行後2年間の経過措置)から、3年目以降1トンに変更されたことに対するデータへの影響について取扱量の統計情報と、PRTRデータの相関を計ることにより解析を行う予定にしています。

PRTRデータと環境モニタリングデータの関係についても、これまで十分に把握されていないことから、それらの相関について解析を行い、化管法施行による環境濃度への効果についての検討に取り組んでまいります。

さらに、PRTRデータと製造・取扱量等の統計情報、化学物質の用途、取り扱い業種などの傾向を解析し、排出係数の推定方法の検討を行う予定にしています。

排出係数は、用途、業種、使用方法などによりある一定の傾向を有すると考えられますが、推定方法を確立することで、PRTR届出対象外の物質の排出係数も推定することが可能と考えられ、PRTR対象物質以外のリスク評価などにも利用が期待されるものです。

PRTR届出データの精度向上に対する取り組み

PRTR制度に基づき届け出られた届出書について、PRTR届出データの精度の向上や記載事項の不備を防ぐために、届出書の内容を確認し、不備や疑義がある場合には、届出者に対して疑義照会を行っています。届出書の記載事項の不備や内容の誤りは一定の傾向があり、少しの注意を払うことで正しい届出が可能となります。

平成20年度は、これまでの照会事例から、届出書の不備や誤りの傾向について分析し、報告書としてまとめる予定です。この報告書を自治体等の届出窓口関係者に配布することで、PRTR届出データの精度向上や円滑な届出事務処理が期待されます。

総排出量、総移動量及び総排出量・移動量の4年間の推移

物質毎の大気への排出量の4年間の推移

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
TEL:03-3481-1977  FAX:03-3481-2900
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10 地図
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