Vol.484 9月9日号「シルバーカー・歩行車、電動車いす、電動アシスト自転車の事故」
Vol.484 9月9日号 「シルバーカー・歩行車、電動車いす、電動アシスト自転車の事故」 【PDF:1,543KB】
9月15日は敬老の日です。今回は、アクティブシニア向け製品の事故事例と、事故を防ぐためのポイントを事故事例と併せてご紹介します。
アクティブシニア向け製品とは、日常的に外出等を行う活動的な高齢者の自立や外出を支える大切な道具で、今回はこの中から「シルバーカー・歩行車」や「電動車いす」、「電動アシスト自転車」を取り上げました。
これらの製品による事故は、これまで数多く報告されており、重傷や死亡に至るケースも少なくありません。活動的な高齢者の自立や外出を支える大切な道具である一方、使い方を誤ると重大な事故につながる可能性もあります。ご本人とそのご家族や介助される方々を交えてご一読ください。
項目一覧
1. シルバーカー・歩行車、電動車いす、電動アシスト自転車の事故
2. 製品事故収集情報(8月3日~ 8月16日 受付74件)
3. リコール情報 4件
4. その他の製品安全情報
・製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新
・2025年度JACセミナー参加者募集のお知らせ
・「NITE SAFE-Lite」のご案内
・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
・NITE公式X アカウントのご案内
1.シルバーカー・歩行車、電動車いす、電動アシスト自転車の事故
◆事故について
・シルバーカー・歩行車では、バランスを崩し転倒した事故が多く発生しています。
・電動車いすでは、屋外における単独使用時に事故が発生していて、特に踏切や側溝、
坂道で事故が多く発生しています。
・電動アシスト自転車では、走行中の転倒事故が多く発生しています。
(バッテリーの焼損事故も多く発生していますが、今回は取り上げません。)
◆事故事例
シルバーカー・歩行者
【事故事例.1】
歩行車を使用中、転倒し、足を負傷しました。(2020年11月 東京都 90歳代男性 重症)
→使用者はケアマネジャー及び訪問看護師から車いすの利用を勧められていましたが、歩行車を使用していたため、傾斜した路面でバランスを崩し、転倒したものと推定されます。
【事故事例.2】
歩行車を使用中、転倒し、左腕を負傷しました。(2018年2月 静岡県 80歳代女性 重症)
→後ろ向きに引っ張っていたときに前輪が段差に引っ掛かり、バランスを崩して転倒したものと推定されます。
【参考】シルバーカー・歩行車
シルバーカー及び歩行車は、前輪と後輪のある、押して歩くタイプの外出用歩行補助具です。座面付きで安定性が高く、歩行を補助しながら休憩もできる福祉用具です。シルバーカーは、自立して歩ける高齢者が荷物の運搬や休憩のために使う補助具で、バー型のハンドルが特徴です。歩行車は、歩行に支えが必要な方が体を預けながら安全に歩くための補助具で、コの字型のハンドルを持ちます。目的も構造も異なるため、使用者の状態に応じて選ぶことが大切です。
今回は取り上げませんが、歩行器は座面がなく、主に医療・リハビリ目的で屋内使用が中心の補助具になります。
電動車いす
【事故事例.3】
電動車いすで走行中、畑に転落して死亡しました。(2022年9月 長野県90歳代男性 死亡)
→使用者が運転操作を誤り、柵のない駐車場から崖下に転落したものと推定されます。
【事故事例.4】
電動車いすで走行中、踏切内で列車にはねられ死亡しました。(2018年9月 兵庫県 70歳代男性 死亡)
→電動車いすが踏切内で停止し、使用者が逃げ遅れたことで電車と接触したものと推定されます。
【事故事例.5】
電動車いすで走行中、後方に転倒し、負傷しました。(2010年7月 京都府 70歳代男性 重症)
→使用者が、転倒防止用バー(※1)を収納したまま、勢いよく段差を乗り越えようとして電動車いすが後方に傾き、転倒して事故に至ったものと推定されます。
【参考】電動車いす
電動車いすは、電動モーターで動く、操作が簡単な移動支援用の乗り物です。自分の手でこがなくても、また、介助者が押して歩かなくても、ボタンやジョイスティックでスムーズに移動できます。電動車いすの種類は操作方式により、ハンドルのボタンや操作レバーで操作をする「ハンドル形」とジョイスティックレバーで操作をする「ジョイスティック形」があり、いずれも道路交通法上では歩行者扱いとなります。
※1 転倒防止バーについては、上のイラストを参照。
電動アシスト自転車
【事故事例.6】
電動アシスト自転車で走行中、壁にぶつかったと思われる死亡事故が発生しました。(2010年7月 大阪府 60歳代女性 死亡)
→前後のブレーキの効きが悪いことを知りつつも使用し、後輪ブレーキが効かない状況下で、前輪ブレーキワイヤーが切れたため、坂道上で止まることができず、壁に衝突したものと推定されます。
【事故事例.7】
電動アシスト自転車で走行中、転倒し、左脚を負傷しました。(2017年7月 大阪府 80歳代男性 重症)
→電動アシスト自転車が急発進して使用者がバランスを崩し、転倒したものと推定されます。
【参考】電動アシスト自転車
電動アシスト自転車は、ペダルをこぐ力をモーターが補助してくれる乗り物で、坂道や発進時でも小さな力でスムーズに走れます。高齢者にとっては、足腰への負担を減らしながら安全に移動できる手段となり、外出の不安を軽減して活動の幅を広げてくれます。高齢者には、低床タイプや軽量のものが適しています。
◆気を付けるポイント
〇シルバーカー・歩行車で気を付けるポイント
(1)身体の状態に適しているかを専門家に確認する。
シルバーカー・歩行車を安全かつ効果的に使用するためには、使用者の歩行能力が使用に適しているかを事前に確認することが大切です。シルバーカー・歩行車は、基本的に自立歩行ができる高齢者の方が、より安定して歩行できるように補助的に用いる福祉用具です。
歩行能力が著しく低下している場合や、バランス感覚に大きな不安がある場合には、これらの製品を使用することでかえって危険を伴うこともあります。歩行能力や身体状況によっては、シルバーカーや歩行車よりも、車いすや杖など他の福祉用具の方が適している場合もあります。
使用前には医療・介護の専門家に相談し、実際の歩行状況の観察を通じて、これらの製品の使用が本人にとって安全かつ有効であるかを慎重に判断するようにしましょう。
(2)利用する道路環境を介助者とともにあらかじめ確認する
初めてシルバーカーや歩行車を使って道路に出るときは、ご家族や介助者などと一緒に歩行練習を行い、交通ルールや安全な通行順路を確認してください。また、事前に道路環境を確認し、次のような危険な道路、危険箇所には近づかず、避けるようにしましょう。
・段差がある箇所
・踏切や舗装が不十分な道路など、車輪が引っかかりやすい場所
・横断に時間のかかる広い道路や信号のない交差点
・歩行に負担がかかりやすい、急な坂道
段差がある箇所ではなくスロープを使用するなど、安全な道を選びましょう。やむを得ずそのような場所を通行する必要がある場合は、転倒などの事故を防ぐために、段差の前では一旦停止し慎重に乗り越えるなど、無理のない動作を心がけましょう。必要に応じて、介助者の支援を受けるようにしてください。
(3)正しい高さに調整し、重い荷物を載せる、ペットをつなぐなど無理な使用をしない。
シルバーカー・歩行車を安全に使用するためには、使用者の体格や歩行状態に合わせて正しい高さに調整することが大切です。高さが合っていないと、姿勢が不自然になり、転倒や身体への負担につながる可能性があります。
重い荷物を載せる、段差を無理して乗り越えるような使用は避ける必要があります。過度な荷重は、車体のバランスを崩したり、破損や事故の原因となることがあります。また、段差はなるべく避け、やむを得ない場合は段差の前で一旦停止し慎重に乗り越えるか、段差が大きい場合は周囲の人に助けを求めるようにしましょう。
ペットをつなぐことは避けましょう。ペットが予想外の動きをすると、シルバーカー・歩行車が引っ張られて転倒や衝突の危険が生じる可能性があります。
使用前には、適切な高さや荷物の積載可能重量荷物の量などを確認し、無理のない適切な使い方を心がけましょう。
〇電動車いすで気を付けるポイント
(1)利用する道路環境を介助者とともにあらかじめ確認する。
初めて道路に出るときはご家族や介助者等と一緒に、走行練習や交通ルール、安全な通行順路を確認しましょう。また、事前に道路環境を確認し、次のような危険な道路、危険箇所には近づかず、避けるようにしましょう。やむを得ず走行する必要がある場合は、脱輪防止のため踏切や道の端を走行しないようにしましょう。
・転落のおそれのある、ガードレールのない崖や蓋のない側溝
・踏切
・横断に時間のかかる広い道路や信号のない交差点
・転倒や衝突のおそれのある、急な坂道
(2)乗車前にバッテリーの状態を確認する。
電動車いすを使用する際には、バッテリー残量を必ず確認しましょう。残量が少ないまま利用すると、途中でバッテリーが切れてしまい、帰宅できない、踏切内で停止し電車と接触してしまうなどのおそれがあります。
(3)転倒防止装置がある場合は機能しているか等、乗車前点検、定期点検を行う。
電動車いすを使用する前には、転倒防止装置がある場合は正常に機能しているかを確認しましょう。また、乗車前にハンドルやアクセルレバーに緩みがないか、タイヤに亀裂がないかなどを点検することも、製品の故障による事故の防止につながります。
さらに、定期的に取扱店などで専門の点検を受けることも大切です。不具合のある状態で使用すると、けがをしたり電動車いすを損傷したりする原因になります。
点検項目の詳細、点検時期については、製品に付属の取扱説明書やメーカーのホームページをご確認しましょう。安全機能が不十分な電動車いすをご使用の場合は、事故防止のためにも、転倒防止機能などを備えた製品への買い替えも検討しましょう。
〇電動アシスト自転車で気を付けるポイント
(1)初期点検は必ず受ける。乗車前に点検を行う。
自転車を購入してから 1 カ月ほど経過したら必ず初期点検を受けましょう。自転車は新車で乗り始めてからしばらくするとブレーキワイヤーなどが伸びます。再度調整が必要になるので、必ず初期点検を受けてください。また、乗車前にも以下の点について点検を行いましょう。
・バッテリーが確実に取り付けられているか
・車輪やハンドルまわり、ペダルにゆるみやがたつきがないか
・ブレーキの効き具合に問題はないか
(2)アシスト機能を過信しない。急発進や「けんけん乗り」を避ける。
ペダルを漕ぐ力が楽な電動アシスト自転車ですが、上り坂では平坦な道よりも大きな力が必要になります。平坦な道と同じ感覚でこぎ出すと、アシストが追いつかず、バランスを崩すおそれがあります。アシスト機能はあくまで補助であり、過信せず慎重な発進を心がけましょう。
また、平坦な道でペダルを強く踏み込みすぎると、急発進してしまい危険です。乗車時はサドルに座り、軽く踏み込むようにしましょう。さらに、片足で地面を蹴りながらもう片方の足をペダルに乗せて発進する「けんけん乗り」は絶対に避けましょう。電動アシスト自転車ではこの動作が不安定になりやすく、急な加速や転倒の原因になります。必ず両足をペダルに乗せ、サドルに座った状態で安全にこぎ出しましょう。
○過去に発生した事故情報、リコール情報を確認する。
シルバーカー・歩行車、電動車いす及び電動アシスト自転車の事故の中には、リコールが開始された後に発生したものもあります。お持ちの製品がリコール対象になっていないか今一度ご確認ください。毎号でご案内している 「NITE SAFE-Lite」 で、リコール情報を検索できます。ぜひご活用ください。
https://safe-lite.nite.go.jp/
消費者庁のリコール情報検索サイトでも確認できます。
https://www.recall.caa.go.jp/
もしリコールの対象となっている製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談をしてください。そのまま使い続けないようにしてください。
■NITE では、この PS マガジンと同じく、9月9日に注意喚起として『敬老の日、贈ろう”安心”~安全ライドで、笑顔の毎日~』をプレスリリースしています。併せてぜひご覧ください。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250909.html
■新作映像資料
シルバーカー「1.段差につまずき転倒」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/20250909.html
2.製品事故収集情報
(8月3日~ 8月16日 受付74件)
NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
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1. 高圧洗浄機(充電式) ( 火災等 9件 )
2. モバイルバッテリー ( 火災等 7件 )
3. 電気かみそり(充電式) ( 破損等 6件 )
4. ポータブル電源 ( 火災等 5件 )
4. 太陽光発電システム用機器 ( 火災等 5件 )
電気かみそりは、全て同一メーカーのリコール事案(充電用差し込み口の焼損)になります。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
■事故情報の提供をお願いいたします。
事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
3.リコール情報
◆株式会社日直商会(法人番号:8010001027075)
「自転車(フロントフォーク)」
【詳細】https://www.argon18bike.jp/archives/1293
オンライン受付フォーム(24時間)
https://www.argon18bike.jp/argon-18-electron-pro-tko-fork-recall
◆ダイアテック株式会社(法人番号:7130002028292)
「自転車用ライト」2025年8月25日
【詳細】https://www.cog.inc/knog/blinder-replace
オンライン受付フォーム(24時間)
https://form.diatechproducts.com/knog-blinder-support-info
◆株式会社シィー・ネット(法人番号:8120001099970)
「電気ストーブ」2025年8月6日
【詳細】https://www.cnet-coltd.co.jp/info/20250724/index.html
オンライン受付フォーム(24時間)
https://www.cnet-coltd.co.jp/contact/koukan/index.html
◆DT Swiss Japan 株式会社(法人番号:3120001261840)
「自転車(ホイール)」2025年7月29日
【詳細】https://www.dtswiss.com/ja/recall
オンライン受付フォーム(24時間)https://www.dtswiss.com/ja/recall
4.その他の製品安全情報
経済産業省では、令和7年12月に施行される「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」の概要や、主な改正内容についての解説動画や、英語サイト(海外事業者向け)をこの度、整備いたしました。海外からオンラインモール等を通じて日本国内の消費者に製品を販売する事業者や、子供向け製品の製造・輸入・販売事業者におかれては、ぜひご覧ください。
以下リンク先に日本語版と英語版の紹介サイトを掲載しております。
【日本語版】
・(ベース)製安4法の解説動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=GuLbROueXFk
・改正法の概要動画(4分)
https://www.youtube.com/watch?v=6RRda5ZYpUI
【英語版】
1.解説動画
・(ベース)製安4法の解説(3分44秒)
https://www.youtube.com/watch?v=ltcJWVvVays
・改正法の概要動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=HatWmLQ2X7Y&t=209s
2.製品安全4法に関する解説ページ(更新版:各法の事業者向けガイド等)
https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/consumer/product_safety/index.html
ぜひご覧ください。
◆◆◇ 2025年度JACセミナー参加者募集のお知らせ ◇◆◆
特に、「生成AI」「SAF原料リサイクル」「大阪・関西万博」「JCSS質量分野」にご興味のある方、 ぜひご参加ください。
詳細はこちらをご覧ください。
https://www.nite.go.jp/iajapan/jac/information/2025_jacseminar.html
・日時:2025年10月3日(金)12:50~16:30
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・定員:会場参加80名(※オンライン参加には定員は設けておりません)
・参加費:無料
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「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
【NITE SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
消費者庁
09/05 20件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250905_01.pdf
09/02 18件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250902_1.pdf
08/29 18件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250829_01.pdf
08/26 08件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250826_01.pdf
◆◆◇ NITE公式Xアカウントのご案内 ◇◆◆
Xでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
Xアカウント→@NITE_JP
編集後記
20年以上も昔ですが、家電業界ではバリアフリー対応のムーブメントがあり、「商品レビューアーは高齢者の生活や行動を体験して評価しましょう。」とのことで、高齢者疑似体験教材を全身に付けて商品審査をしていました。
時は過ぎ、(編)も内閣府の高齢社会白書の定義にあたる65歳以上の高齢者になりましたが、当時高齢者疑似体験教材をはじめて身に付けた時に感じたような加齢による身体的な不自由さは、まだ感じません。さらに高齢になったとしても、颯爽とカッコ良くシルバーカーを使いこなしたいと思います(笑)。
お問い合わせ
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 製品安全広報課
-
TEL:06-6612-2066
FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図