製品安全

事故情報特記ニュースNo.57

2003.3.26

~ EMSベルト(注)を使用するにあたって(注意喚起) ~

腹部やふともも等に装着して筋肉に電気刺激を与え、筋肉の増強やシェイプアップ効果をうたったEMSベルトの事故が、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「機構」という。)に3件報告されています。
当機構が調査した結果、使用方法等によっては事故につながる可能性も否定できないため、事故の再発防止の観点から事故内容をお知らせするとともに、注意喚起を行います。

  1. (注):EMSとは、Electrical Muscle Stimulation(電気刺激による筋肉収縮運動)の略。

1.事故事例

(事例1)
EMSベルトを腹部に取り付けて10分間を9回連続使用したところ、腹部に直径約2mm、深さ約1mmの穴のような傷跡が6カ所できた。3ヶ月後に病院へ行くと、「腹部の傷は低温火傷で、傷跡は残る。」と診断されました。
(事例2)
EMSベルトを使用した結果、ふくらはぎと太ももの皮膚が赤く腫れた。病院で「軽い火傷」と診断されました。
(事例3)
EMSベルトを下腹部に取り付けて使用したところ、3日目頃からパッドのあたる部分に痛みを感じていました。しかし、我慢して10日ほど使用したところ、パッドがあたる部分に赤い湿疹が多数できました。パッドには、販売店の指示どおりに水を塗って使用していました。

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2.調査結果

当機構が調査したところ、使用中0.00002秒という極めて短い時間に最大約0.7A(電圧は約25V)の大きさの電気が0.02秒間隔で断続的に4~5回程度人体に流れており、このような電気の流れの一群が0.2秒ごとに繰り返されていました。
当該製品は10分間で自動的に電源が切れる構造であったことから、この時間内の使用であれば障害が生じる可能性は低いと考えられました。
同様に人体に電流を流す医療用具である低周波治療器との比較においても、電流値はJISで定められた基準の範囲内でありました。
こうした情報から、使用者の体質や使い方等の個人差により火傷等に至る可能性は否定できないものの、使用にあたりジェルを使用する、長時間使用し続けないなどの利用方法を守れば、一概に危険な製品と決めつけることは現時点ではできないものと判断されます。

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3.注意喚起事項

使用にあたりジェルを使用しない、痛みを我慢してまで長時間連続使用するなどの誤った使用方法が、事例のような事故につながると考えられます。
したがって、EMSベルトを使用する場合には、次の注意事項を守って使用することが重要です。

  1. (1)使用に当たっては、製品添付又は別売のジェルを電極部に塗布した上で使用すること。

    低周波治療器のJISにおいて、電極については「皮膚に接する際熱傷のおそれを少なくするため、含水物質で被覆し、金属部が直接皮膚に接触しない構造」のものとされていますが、EMSにおいては、ジェルがこの含水物質に当たるものと考えられます。

  2. (2)EMSベルトは、取扱説明書等で示された時間内で使用し、強度設定も過度にしないこと。

    低周波治療器のJISにおいても、出力調整器の構造については、人体への通電の痛みを減少させ、電撃ショックを与えることを防止するために、電圧・出力を徐々に高めていく構造とされていることからも、EMSの使用に当たっても同様の注意が必要と考えられます。

  3. (3)胸部に装着するような使用は避けること。

    胸部等、心臓に近い部分に装着して使用した場合、心臓に電流が流れることが予測されることから、心臓に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。

  4. (4)身体に痛み等の異常を感じたら、直ちに使用をやめること。

    医療用具である低周波治療器においても、取扱説明書等で同様の注意喚起がされていることからも、EMSの使用に当たっても同様の配慮が必要と考えられます。
    また、幼児等自分で意思表示ができない方の場合も、使用を避ける必要があるものと考えられます。

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4.経済産業省の対応

経済産業省は、平成15年3月10日付けで事業者に対し、製品の取扱に関する消費者への注意喚起を行うよう要請を行っています。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図