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芳香族炭化水素分解

概要

芳香族炭化水素 (aromatic hydrocarbons) は、芳香族性を示す単環あるいは複数の環(単結合もしくは縮合)から構成される炭化水素化合物である。(例:ベンゼン (benzene), アルキルベンゼン (alkylbenzene), フェノール (phenol), ビフェニル (biphenyl), ナフタレン (naphthalene) 等) 生物へ毒性を示し、また難分解性である化合物が多く含まれ、それらによる環境汚染が問題となっている。近年では、微生物や植物を利用した浄化技術(バイオレメディエーション)の研究開発が注目されている。
微生物による芳香族炭化水素の分解は、環数や置換基によって様々な経路を取るが、共通するのは二個の隣接した水酸基の導入と環の開裂反応である。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

芳香族炭化水素の分解は、ベンゼン環に二個の隣接した水酸基が導入されることによって始まる。この酸化反応は、単環、二環、三環など環数に関わらず、芳香族化合物の分解において共通して起こる反応である。
上図のように、単環芳香族の分解では、まずベンゼン環の酸化によってカテコール (catechol) もしくはプロトカテク酸 (protocatechuate) が生成され、その後ベンゼン環の開裂が起こる。
カテコール・プロトカテク酸の生成まで (upper pathway)
第一反応は、dioxigenase もしくは monooxygenase (hydroxylase) によるベンゼン環の酸化である。
これらの酵素は以下のような特徴を持っている。
Ring-hydroxylating dioxygenase の場合
  • multi components から成る (oxygenase component [alpha (large) subunit, beta (small) subunit], electron transfer component [ferredoxin, ferredoxin reductase])
  • 基質特異性が広く、互いに相同性を示すことが多い
  • 遺伝子はオペロン状が多い
Monooxygenase (hydroxylase) の場合
  • 1-3 subunits から成る (oxygenase component)
  • electron transfer component [ferredoxin/ferredoxin reductase もしくは flavin reductase] が必須な場合がある
  • effector protein が必須な場合がある
  • 基質特異性が広く、互いに相同性を示すことが多い
カテコール・プロトカテク酸の分解 (lower catabolic pathway)
カテコールもしくはプロトカテク酸のベンゼン環開裂は、開裂の起こる位置によって経路が分かれる。二つの水酸基の間で開裂が起こる オルト開裂経路 と、隣で開裂が起こる メタ開裂経路 である。 開裂によって生じた化合物は、数段階の反応を経て、最終的にはTCA回路に組み込まれる。

機能を持つことが知られている生物

自然界からはこれまでに多くの芳香族炭化水素分解菌が単離されている。細菌ではPseudomons, Rhodococcus, Mycobacterium, Sphingomonas属等。

関連外部リンク

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(更新日 2015/07/22)