化学物質管理

CMC letter No.3(第3号) - [特集・2]企業や自治体などの取り組み

連載第2回

化学物質管理を効果的に行うには、市民、企業、行政などさまざまな主体の協働が不可欠です。そこで、CMCレター2号から、情報の共有化を推進するため、皆様の事業の参考となるような化学物質管理の取り組みをご紹介させていただいております。

3号は、花王株式会社様、東京都環境局様にお願いいたしました。

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花王

花王では、自社開発の「化学物質総合管理システム」にて、当社で取り扱う化学物質を総合的に管理しています。そのキーとなるコードは、マスターインデックス(Master Index:MI)と呼ばれる階層構造を持ったユニークな物質コードです。このコードを用いることで製品のトレーサビリティが確保できるだけでなく、法令遵守(コンプライアンス)の面でも多大の貢献をもたらしています。今後、海外の関連会社にも本システムを展開していきたいと考えています。

(花王株式会社)

花王の化学物質総合管理

花王では家庭用製品から化学製品まで幅広く取り扱っており、製品アイテム数は3,000種類を超えるものになっています。一つひとつの製品中に含まれる原料は数種から数十種類に及び、ほとんどの各原料はいくつかの成分(化学物質)で構成され、花王の取り扱う化学物質数は人での管理ができない規模となっています。一方で、近年、企業における化学物質の適切な管理が求められてきています。そこで当社では、2001年より「化学物質総合管理システム」を立ち上げ、花王の取り扱う化学物質情報を一元的に管理することを開始しました。

このシステムのキーとなるコードは、マスターインデックス(MI)と呼ばれるコードで、下図でも示しますように、4つの階層(M1、M2、M3、M4)で構成されています。M1は家庭用製品であり、「アタック」、「アジエンス」、「ビオレ」といった当社の家庭用製品が該当します。また、工業用化学製品であるM2では、コンクリート用高性能減水剤である「マイテイ」や古紙再生用脱墨剤である「DIシリーズ」などの化学製品が該当します。M3は主として購入原料であり、最小単位であるM4は各々の成分(化学物質)となっています。これらの階層をシステム的にたどっていくことで、該当する花王製品がどのメーカーのどの番手の原料で構成されているかが瞬時に分かり、最終的には成分(M4)まで分解した形で組成や法規情報などを知ることができます。

マスターインデックス(MI)の階層構造

これにより、製品のトレーサビリティが確保できるだけでなく、それぞれの成分や組成物に関連した法規情報が直ちに確認できます。社内の他のシステム(MSDS作成・管理、製品法規情報DB、PRTR物質管理、安全性情報DBなど)ともマスターインデックスを介してリンクしており、花王にとって本システムは、化学物質を総合的に管理するツールとしてなくてはならないものになっています。

NITE化学物質管理センターへの期待

来年にはEU(欧州連合)においてREACHが施行され、EUで製造・輸入される物質が危険有害性情報を付けてEUのシステム(IUCLID 5)に登録されることになります。そうした公開される危険有害性情報は、ぜひNITEの持つ「化学物質総合情報提供システム」にも反映していただきたいと思います。

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東京都

東京都は、平成12年に、旧公害防止条例を全面改正して環境確保条例を制定した際に、事業者における化学物質の適正な管理を推進するため、化学物質適正管理制度を導入しました。近年、光化学オキシダントが高濃度となる日が増加傾向にあることなどを踏まえ、平成17年度からは、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制を行う事業者の自主的取り組みに対して技術支援を行う施策に力を入れています。また、今年度からは、学識経験者などで構成する化学物質対策検討会を設置し、地域と連携した化学物質管理対策のあり方を検討しています。

(東京都環境局環境改善部有害化学物質対策課)

東京都の取り組み

1.化学物質適正管理制度

性状及び使用状況から、特に適正な管理が必要な化学物質58種類を適正管理化学物質として規則で定め、このいずれかを年間100kg以上取り扱う工場または指定作業場を設置している者に対して、毎年、適正管理化学物質ごとの年間使用量、製造量、製品としての出荷量、排出量及び移動量の報告を義務付けています。また、化学物質の排出抑制などを効果的に行うため、化学物質管理方法書の作成も義務付けており、制度対象の事業者のうち、従業員数21人以上については、同書の提出も求めています。なお、区市の地域においては、これらの事務権限は区市に移譲されています。

報告された年間排出量を集計すると、平成16年度は平成15年度に比べ、約1,000トンの減少となりました。

2.揮発性有機化合物(VOC)対策

東京都では、事業者によるVOC排出抑制の自主的取り組みへの技術支援として、平成17年度に、塗料、印刷、金属表面処理及びクリーニングに関する業界団体や学識経験者で構成するVOC対策検討委員会を設置し、中小事業者の工場などや屋外塗装向けのVOC対策ガイドの作成を行いました。今年度は、説明会の開催や業界団体を通じた配布などにより、この冊子の普及を図るとともに、インターネットを通じて、広く情報提供を行っています。また、平成17年11月からは、中小事業者を訪問して無料で対策を助言するVOC対策アドバイザー派遣制度を開始しました。

さらに、化学物質管理方法書などの作成のための手引きを改訂し、同書を排出削減目標の年次や削減率などを含めた計画的なものとするよう、事業者に求めています。

3.地域性を考慮した化学物質管理対策

個々の汚染物質の環境基準が達成されても、工場集積地域などでは、多種多様な化学物質の低濃度長期暴露により相対的に環境リスクが大きい状況にあります。そこで、予防原則に立ち、事業者・住民・行政からなる地域環境協議会においてリスクコミュニケーションを図りながら、自主的計画的なリスク管理を行う「化学物質管理東京モデル」の構築を目指して、現在、化学物質対策検討会でリスク評価や連携のあり方などを検討しています。

適正管理化学物質の年間排出量の推移

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