化学物質管理

CMC letter No.5(第5号) - [特集・1]学物質管理センターは今

連載第4回 リスク管理課~化学物質の環境リスクの低減に向けて~

本号では、リスク管理課の業務について、ご紹介いたします。

リスク管理課は、我が国の化学物質管理において、PRTR制度とMSDS制度を柱とする化学物質排出把握管理促進法(化管法)の実施基盤として、その円滑な施行に取り組んできました。具体的には、本号で解説するPRTR制度に係わる業務の他、MSDS制度の諸外国における状況の調査などの関連業務なども行っています。ここでは、リスク管理課の業務の一端をご理解いただくため、PRTR制度に基づいて集計された平成18年度のPRTR公表データとその過去5年間の経緯を中心に解説いたします。

1.nite化学物質管理センターの化管法に基づくPRTR制度における役割

特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(略称「化管法」)に基づくPRTR制度が始まってから7年目になります。この間、nite化学物質管理センターでは、事業者から都道府県や市を経由して国あてに届け出られた届出の内容を確認するとともに、集計、ファイル記録、公表用資料の原案作成等を行うなど、PRTR制度の中心的役割を担ってきました。

また、当センターは事業者の届出利便性向上のための電子届出システムの整備、都道府県や市、国が、的確に受付・届出確認を行うための届出管理システムの整備などのコンピュータを使った処理システムの整備運営や、PRTRサポートセンターによる事業者や都道府県等の窓口担当者からのさまざまな質問への対応、地方自治体の行うPRTRに関する講演会への講師としての協力などを行ってきました。さらに、政府代表団の一員として、国際会議に参加するなど、国際的な取り組みも進めています。

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2.平成18年度PRTR公表データの概要

経済産業省と環境省から、事業者から平成18年度に届出のあった平成17年度排出量・移動量及び国が推計を行った平成17年度届出外排出量について、その集計結果が2007(平成19)年2月23日に公表されました。また、個別事業所データの開示請求の受付も同日から開始されています。ここでは、届出排出量・移動量を中心に解説いたしますが、詳細については、当センターのホームページをご覧下さい。
http://www.prtr.nite.go.jp/prtr/total_indexh17.html

(1)届出事業所数、届出排出量及び届出外排出量

平成18年度には、全国で40,823の事業所から届出がありました。届出方法別にみた届出状況は、紙による届出が24,706事業所、磁気ディスクによる届出が1,251事業所、電子情報処理組織による届出(インターネット等による電子届出)が14,866事業所となっています。

届出排出量と届出外排出量の合計は607千トンであり、このうち届出排出量は259千トン、届出外排出量は348千トンとなっています。また、届出移動量は、231 千トンでした。

届出排出量と届出移動量の内訳は、図1のとおりです。なお、届出排出量の約90%は、大気への排出となっています。

図1 届出排出量・移動量の構成

(2)届出排出量・移動量が多い化学物質

届出排出量・移動量が多い上位10 物質の合計は365千トンで、届出排出量・移動量490千トンの75%に当たります。そのうち、トルエン(160千トン、32.7%)、キシレン(58千トン、11.8%)、塩化メチレン(33千トン、6.7%)などの割合が大きくなっています。

(3)届出排出量・移動量の多い上位業種

製造業・非製造業を合わせた全45業種のうち、製造業(23業種)における届出排出量・移動量の合計は467千トンで、届出排出量・移動量490 千トンの95%を占めます。

また、届出排出量・移動量の多い化学工業など上位10 業種の合計は409千トンで、届出排出量・移動量の84%に当たり、その内訳は図2のとおりです。

図2 届出排出量・移動量上位業種

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3.5年間の届出データの推移

(1)届出数の変遷

リスク管理課では、国から公表されたデータをもとにPRTRデータの経年変化の解析を行い、ホームページで公開しています。その一部を概説しますが、詳細は下記アドレスをご参照下さい。
http://www.prtr.nite.go.jp/prtr/prep.html

届出事業所数は、初年度の34,820事業所に比べて平成18年度は40,823事業所であり、6,003事業所の増加となっています。また、届出物質数(のべ)は初年度の182,714物質に比べて平成18年度は222,601物質であり、39,887物質の増加となっています。

平成16年度の届出から届出対象事業所の要件である第一種指定化学物質の取扱量が5トンから1トンに引き下げられたため、届出事業所数と届出物質数とも平成16年度に大きく増加しましたが、それ以降は、ほぼ横ばいです。

(2)届出排出量・移動量の推移

届出排出量は毎年減少する傾向が見られ、5年間で54千トンの減少となっています。届出移動量は、5年間で15千トンの増加となっています。

図3に示したように、1事業所あたりの平均排出量と平均移動量はともに毎年減少しており、平均排出量は5年間で2.7トンの減少、平均移動量は5年間で0.56トンの減少となっており、化管法の目的である化学物質の自主管理が進んでいると思われます。

図3 1事業所あたりの平均排出量・移動量の5年間の推移

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4.国際関連の取り組み

PRTR制度は、20以上の国々(欧州汚染物質排出登録制度加盟国【EPER】含む)で実施されており、OECD(経済協力開発機構)からこれを推進するよう勧告が出されています。このため、OECDにPRTRタスクフォースが設置され、(1)排出量推計手法の改善及び広く利用可能なものにすること、(2)国家間のPRTRデータの共有・比較を促進すること、(3)PRTRデータの活用について促進改善すること、(4)PRTR制度構築を促進するためのツールの識別、分析、開発及びガイダンスの提供を行うことを目的とした活動が行われています。

2007(平成19)年2月末に行われた第10回会合では、製品からの排出に関する排出量推計手法の開発、「廃棄物中の化学物質」または「廃棄物そのもの」として報告された移動量データの活用・比較、中小企業からの排出に関する排出量推計手法・届出方法の開発等についての検討が行われました。当センターはこの会合で、日本の現状を報告するなど化学物質管理の国際整合に向けた活動に積極的に参画しています。

また、ホームページでは、わが国のPRTR制度や排出量等の集計結果を英語で紹介しています。
http://www.prtr.nite.go.jp/index-e.html

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
TEL:03-3481-1977  FAX:03-3481-2900
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