製品安全

Vol.480 7月8日号「油の発火事故」


Vol.480  7月8日号 「油の発火事故」 【PDF:1,334KB】

 夏は気温が高くなることで、身近な製品がいつもより熱を持ちやすくなります。特に油(※1)が浸みた布類や紙類は、空気中の酸素と反応して発熱しやすく、また、高温環境下では熱が逃げにくくなり、思わぬ事故につながることがあります。
 例えば、エステ店等でオイルマッサージを行い、アロマオイルやマッサージオイルが浸み込んだタオルを洗濯後に乾燥機で加熱したり、そのまま重ねて置いたりした場合、内部に熱がこもり、自然発火に至ることがあります。
 また、床用ワックスや塗料などが付着した大量の布類や紙類を何日も放置した場合、自然発火に至る可能性があります。揮発性の高い成分が含まれている場合、換気が不十分な状態で火気が近くにあると引火する危険性もあります。
 これらの事故は、製品の特性を理解し、使い方や保管方法に少し注意を払うことで防ぐことができます。今回は、油の発火事故について注意するポイントを事故事例と併せてご紹介します。



※1 油を含む製品とは、例えばエステ店等でオイルマッサージの際に使用されるようなアロマオイルやマッサージオイル、清掃時に使用される床用ワックス、他には塗料等のような、成分に油を含む製品のことです。

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項目一覧

1. 油の発火事故
2. 製品事故収集情報(6月1日~ 6月14日 受付91件)
3. リコール情報 9件
4. その他の製品安全情報
 ・製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新
 ・「NITE SAFE-Lite」のご案内
 ・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
 ・NITE公式X アカウントのご案内

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1.油の発火事故

◆事故事例
【事故事例.1】
 エステ店でバスタオルを乾燥終了後、電気洗濯乾燥機の槽内から発火しました。(2013年 岡山県 年齢不明・女性 製品破損)
→油分が付着したバスタオルを乾燥したため、残留していた油分が酸化熱により自然発火したものと考えられます。
 なお、本体及び取扱説明書には、「油などの付着した衣類は洗濯後でも絶対に乾燥しない、油などの酸化熱(※2)による自然発火や引火の恐れがある」旨、記載されていました。
 
【事故事例.2】
 ガス衣類乾燥機を使用中に発煙し、ガス衣類乾燥機及び内部の可燃物(鮮魚店で魚を拭くなどに使用したタオル)を焼損する火災が発生しました。(2012年 大阪府 40代・男性 拡大被害)
→内部にあったタオルから油分が検出されました。油分が付着したタオルを乾燥したため、油分が酸化熱(※2)によって自然発火し、火災に至ったものと考えられます。
 なお、本体及び取扱説明書には、「食用油、動物系油などの付着した衣類は洗濯後でも絶対乾燥しない」旨、記載されていました。
 
【事故事例.3】
 塗料の拭き取りに使ったウエスをビニール袋に入れて保管していたところ出火し、周辺を焼損しました。(2016年 宮城県 60代・男性 拡大被害)
→塗料は、不飽和脂肪酸を多く含む植物油(えごま油)を主成分としたもので、拭き取ったウエスと枯れ草を同じビニール袋に入れて長期間(7日)放置したため、植物油の酸化熱(※2)が蓄熱されて自然発火に至ったものと考えられます。
 なお、本体には、拭き取ったウエスを水に浸して捨てるなどの処理方法について記載されていました。

油の自然発火はどうして起こるのか  酸化熱 ※2 の解説
 油は脂肪酸を含む化合物であり、脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。自然発火は、不飽和脂肪酸を含む油の酸化による発熱で起こります。
 飽和脂肪酸は分子構造の中に炭素―炭素間の二重結合(以下、二重結合)を含まない脂肪酸、不飽和脂肪酸は二重結合を含む脂肪酸を指します。

 身近な製品でいえば、オイルマッサージに使用されるアロマオイルの一種であるホホバオイルにはオレイン酸、グレープシードオイルやひまわり油にはリノール酸が豊富に含まれます。また、アロマオイルや塗料の成分として使用される亜麻仁油にはα-リノレン酸が豊富に含まれます。さらに、床用ワックスにはオレイン酸が含まれるものもあります。
 不飽和脂肪酸を含む油は外部の火種がなくても油自らが発熱し、最終的に発火に至ることがあります。これは、不飽和脂肪酸が持つ二重結合が空気中の酸素に触れることで酸化反応が起こり、発熱し、この発熱反応が繰り返されることで熱が蓄積し、やがて発火点(※3)に至るためです。
 不飽和脂肪酸を含む油が布類や紙類などに浸みている場合、油が空気に触れる面積が大きくなり酸化反応が起こりやすく、発火に至りやすくなります。また、酸素が二重結合と反応しやすいため、二重結合を多く持つ不飽和脂肪酸ほど酸化反応が起こりやすく、発火に至りやすくなります。

 夏の高温環境では、酸化反応によって発生した熱が外に逃げにくく、内部に蓄積しやすくなります。その結果、他の季節に比べて発火に至りやすくなるため、特に注意が必要です。

※3 発火点とは、物質が外部の点火源(火や火花など)なしで自然に発火する最低温度のことです。


油を含む製品の取扱いで気を付けるポイント
 (1)油分が付着した布類は洗濯後でも乾燥機で加熱しない。
 アロマオイルやマッサージオイルが浸み込んだタオルや衣類は、条件が重なると自然発火に至るおそれがあります。こうした事故を防ぐためには、洗濯前に油汚れに強い洗剤を使用してしっかりともみ洗いをし、できるだけ油分を落とすことが大切です。そのうえで、乾燥機にはかけず、洗濯後はすぐに広げて風通しのよい場所で乾かすようにしましょう。 また、使用済みの布類を洗濯かごなどに重ねて放置することも避けてください。


 (2)油分が付着した布類や紙類を水に浸さずに袋や容器などに入れて放置しない。
 床用ワックスや塗料などを拭き取った布類や紙類は、何日かかけて自然発火に至るおそれがあります。これらは水に浸してから廃棄するなどの安全な処理を行うことが大切です。



(3)購入後、「高温注意」「火気厳禁」などの注意書きやラベル表示内容をよく確認する。
 床用ワックスや塗料などの中には揮発性が高く、成分が空気中に広がりやすいものもあります。製品に記載されている「高温注意」や「火気厳禁」などの表示は、安全に使用・保管するための重要な情報です。
 また、使用前に必ず注意書きやラベル表示内容をよく確認し、直射日光や高温になる場所を避け、火気の近くでは使用しないなど、表示に従った行動を徹底しましょう。



■NITE では、この PS マガジンと同じく、7月8日に注意喚起として『真夏の“油”断が火を招く!~高温環境で起こりやすくなる油の発火事故~』をプレスリリースしています。併せてぜひご覧ください。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250708.html
■新作映像資料
アロマオイル「1.オイルが付着したタオルが自然発火​」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/20250708.html

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2.製品事故収集情報

◆◆◇    消費生活用製品の事故情報収集状況    ◇◆◆
(6月1日~ 6月14日 受付91件)
     NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
========================================================       
 製品名                   (事故状況と件数)
            
          1. 電気かみそり(充電式)                       ( 破損等       24件 )
             2. ACアダプター(楽器用)                     ( 破損等       11件 )
          3. モバイルバッテリー                              ( 火災等          3件 )
          3. 電動アシスト自転車用バッテリー          ( 破損等          3件 )
          3. タブレット端末                                    ( 火災等          3件 )
          3. 電子レンジ                                           ( 火災等          3件 )
          3. サーキュレーター、扇風機                   ( 火災等          3件 )
========================================================
電気かみそりは、全て同一メーカーのリコール事案(充電用差し込み口の焼損)になります。
ACアダプターは、全て同一メーカーのリコール事案(DCプラグ付近が溶融)になります。
 
 
◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
 
■事故情報の提供をお願いいたします。
 事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html

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3.リコール情報

◆イオンリテール株式会社(法人番号:2040001000456)
「スリッパ」2025年6月27日
【詳細】https://www.aeonretail.jp/pdf/250627R_01.pdf
 
◆アンカージャパン株式会社(法人番号:8010001151445)
「リチウム電池内蔵充電器」2025年6月26日
【詳細】https://corp.ankerjapan.com/posts/555
オンライン受付フォーム(24時間)https://www.ankerjapan.com/pages/202506-support

◆イオンリテール株式会社(法人番号:2040001000456)
「ハンディファン」2025年6月25日
【詳細】https://www.aeonretail.jp/pdf/250625R_0.pdf
 
◆ELVEN公式楽天市場店
「電気温風機」2025年6月25日(HP)
【詳細】https://www.rakuten.co.jp/maria999/
 
◆株式会社トーエートレーディング(法人番号:1120101046094)
「レーザーポインター(猫用玩具)」2025年5月21日(HP)
【詳細】https://toei-trading.jp/
 
◆株式会社星テック(法人番号:9040001107402)
「電気毛布(敷毛布)」2025年4月18日(HP)
【詳細】https://www.hoshitec.co.jp/
 
◆ペツルジャパン株式会社(法人番号:2030001027491)
「墜落制止用具(フルハーネス型)」2025年3月7日(HP)
【詳細】https://www.petzl.co.jp/professional/newton-recall/
 
◆Igloo Products Corp.
「クーラーボックス」2025年2月13日(HP)
【詳細】https://igloo90qtrecall.expertinquiry.com/?lang=ja
オンライン受付フォーム(24時間)https://igloo90qtrecall.expertinquiry.com
 
◆ベンキュージャパン株式会社(法人番号:1010001102173)
「ACアダプター(液晶ディスプレイ用)」2024年9月13日(HP)
【詳細】https://www.benq.com/ja-jp/news/products/20240913-lcdm-news.html2-1/

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4.その他の製品安全情報

◆◆◇ 製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新 ◇◆◆
経済産業省 製品安全課
 
経済産業省では、令和7年12月に施行される「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」の概要や、主な改正内容についての解説動画や、英語サイト(海外事業者向け)をこの度、整備いたしました。海外からオンラインモール等を通じて日本国内の消費者に製品を販売する事業者や、子供向け製品の製造・輸入・販売事業者におかれては、ぜひご覧ください。
 
以下リンク先に日本語版と英語版の紹介サイトを掲載しております。
【日本語版】
・(ベース)製安4法の解説動画(3分半)
 https://www.youtube.com/watch?v=GuLbROueXFk
・改正法の概要動画(4分)
 https://www.youtube.com/watch?v=6RRda5ZYpUI
 
【英語版】
1.解説動画
・(ベース)製安4法の解説(3分44秒)
 https://www.youtube.com/watch?v=ltcJWVvVays
・改正法の概要動画(3分半)
 https://www.youtube.com/watch?v=HatWmLQ2X7Y&t=209s
 
2.製品安全4法に関する解説ページ(更新版:各法の事業者向けガイド等)
 https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/consumer/product_safety/index.html
 
ぜひご覧ください。
 
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◆◆◇  「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
 
 NITE は、より安心・安全な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信しており、NITE のウェブサイトで、製品事故の調査結果、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを提供しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「NITE SAFE-Lite」というサービスを提供しています。
 
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
 
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
 
【NITE SAFE-Lite】
 https://safe-lite.nite.go.jp/
 
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       ◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
 
                                    消費者庁
 
 消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。

07/04 14件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250704_01.pdf
 
07/01 07件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250701_01.pdf

06/27 10件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250627_01.pdf

06/24 08 件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250624_1.pdf
 
 
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◆◆◇ NITE公式Xアカウントのご案内 ◇◆◆
 
 NITEでは、公式アカウントを開設しています。
 Xでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
 
 Xアカウント→@NITE_JP

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編集後記

 今日7月8日は、(編)の好きな揚げ物料理でもある、「チキン南蛮の日」です。これは、チキン南(7)蛮(8)、と読む数字の語呂合わせから来ていて、一般社団法人日本記念日協会にも記念日登録がされています。
 さて、今回は紹介していませんが、チキン南蛮などの揚げ物調理には欠かせないサラダ油などでも自然発火の事故が報道などでたまに見かけます。発火のメカニズムは今回ご紹介したものと同じです。みなさん、揚げ物調理で使った油が浸み込んだキッチンペーパーなども自然発火する危険性がありますよ。水に浸してから廃棄するなどの安全な処理を行なってから捨てましょうね。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図