バイオテクノロジー

タイとの協力体制の構築

NITEは、タイの遺伝子工学バイオテクノロジーセンター(BIOTEC :National Center for Genetic Engineering and Biotechnology)との間で、「包括的覚書」(MOU)を2016年2月に更新しました(対象期間は2016年2月24日から2021年3月31日まで)。同センターとの間では、2005年2月18日に初めてMOUを締結し、2008年3月11日、2012年10月24日にそれぞれ期間を延長したもので、これらのMOUに基づき微生物の利用に係る協力を進めて参りました。

BIOTECは、1983年に設立され、1991年タイ国立科学技術開発庁 (NSTDA) 設立後は、NSTDA研究センターの1つとなりました。BIOTECは現在、タイサイエンスパーク内で、バイオテクノロジーを活用した産業、農業、天然資源、環境分野への技術支援だけでなく、タイの人々の社会的、経済的発展に取り組んでいます。その他にも、タイ国内の生物多様性条約の遺伝資源に関するアクセスと利益配分(ABS)のルールや手続きに関する議論に参加しています。

タイとのMOU
BIOTECとのMOU調印

タイとのMOUによる協力内容

  1. 1.知識、情報、実用技術、経験の交換・発展・集約の実施
  2. 2.研究者の交流、及び技術的・情報的協力の相互検討の実施
  3. 3.相互関心事項に関する会議、講義、シンポジウム若しくは研究プロジェクトの実施
  4. 4.上記以外で、合意する活動の実施

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タイとのこれまでのプロジェクトの内容と成果

 Ⅲ期までの成果を以下で紹介します。

Ⅰ・Ⅱ期 (2005年~2012年)

NITE及びBIOTEC双方が保有する生物遺伝資源の交換、未同定株の共同解析といった日本及びタイにおける生物遺伝資源の産業利用の可能性や学術研究の発展を目的としたプロジェクトを実施しました(下図、PA1およびPA2)。PA1では菌株交換を主体とし、冬虫夏草類などを中心とした糸状菌110株がこの対象になりました。PA2の中では更に分類群や目的ごとのサブプロジェクト1~6があり、順次研究成果を各誌で報告し、菌株を公開しています 。

図:タイ王国とのBRC協力型共同事業

I・II期の詳細

Ⅲ期 (2012年~2015年)

概要

  • NITEでは2012年から4年間にわたりBIOTECとの間で「微生物資源管理のためのキュレーター育成プログラムに関するプロジェクト」を実施し、キュレーターの人材育成のためにタイ王国の研究者を15名受け入れました。
  • 研究者はNITEバイオテクノロジーセンター(NBRC)にて、キュレーターとして必要な知識と技術についてOJT(on the job training)方式の研修を受けるとともに、個別のテーマについてNBRC研究者と共同で研究活動に取り組みました。

※「キュレーター」とは、カルチャーコレクションにおいて専門的技術を用いた菌株保管、菌株の品質管理、菌株に付随するデータの管理、また利用者への分譲等を担う管理責任者の総称です。

図:キュレーター育成プログラム概要図
図:キュレーター育成プログラム概要図

成果一覧

2013年
No. 研究テーマ 成果
1 日本における冬虫夏草の収集と分類 日本各地で冬虫夏草を収集し、同定・分類の技術習得を行った。選抜した6菌株をNBRCへ登録し公開している。
2 MALDI/TOF MS を用いた酵母の迅速同定法開発 MALDI/TOF MS による酵母の同定手法の利点と問題点を解明した。今後のMALDI/TOF MS データの分析方法と手法の改良を提案した。
3 藻類の基礎と保存法 NBRCに保存されている藻類の長期保存法の可能性について基礎データを取得した。凍結保存への移行が可能となる株を見いだした。
4 NBRCコレクションに保存されているChitinophaga属細菌の同定及び再分類 Chitinophaga属に分類されると考えられた新種候補株について、多相分類の手法を用いて同定を行った。また、Chitinophaga arvensicolaとして同定されているNBRC株数株について、同手法を用いて再分類を行った。新種候補株については、今後公開する予定。
5 日本の海洋性鞭毛菌の調査 日本の海洋より鞭毛菌を分離し、同定した。今後NBRC登録し公開予定。
6 BRC運営と関連するタイの法令調査 タイの生物資源管理について、タイの法令等の調査を行い、タイ産の微生物に関するアクセスの手続きの現状について知見を得た。

2014年
No. 研究テーマ 成果
1 法的管理:微生物資源利用に係る利益配分 タイ国のABS関連国内法令を確認し、今後のタイの遺伝資源利用についての方向性を情報共有した。新たな国際的な微生物移転メカニズムについても協議を行った。
2 日本産発酵食品からの乳酸菌の分離および新種候補株の同定 日本産発酵食品に由来する乳酸菌を収集し、RD株として35株を公開した。また新種候補株の新種提案に繋げる解析を実施した。
3 油脂生産酵母の分離と選択及び脂質蓄積条件の調査 油脂生産能の高い酵母Lipomyces属を優先的に収集し、Lipomycetaceae科に属する5新種23株を取得した。油脂酵母及び新種候補株は、油脂生産能及び脂肪酸組成情報を調査し、44株をNBRC登録した。
4 国内の様々な環境における細菌叢:DNA抽出やPCR法の違いが菌叢解析結果に及ぼす影響の評価 次世代シーケンサーを用いた微生物叢解析において、前処理方法(DNA抽出方法、PCR条件等)の違いが解析結果に大きな影響を及ぼす事を明らかにした。前処理方法が異なる実験間でデータを比較することの危険性を示唆、前処理方法を統一する重要性を提示した。
5 バイオインフォマティクス:ゲノム配列を用いた放線菌の系統発生関係解析 Dactylosporangium属など複数の放線菌について、ゲノム配列の確認・修正と系統解析を行い、放線菌ゲノムの系統関係の解明に貢献した。

2015年
No. 研究テーマ 成果
1 マウス糞便中の微生物叢の比較ゲノム解析 新型シーケンサーを用いたマウス糞便中の微生物叢解析の最適化を実施し、野生群と試験群の違いを解析した。朝夕にサンプリングしたサンプル間で菌叢が異なること等を明らかにし、統一した試験方法が重要であることを示した。
2 インビトロにおけるアーバスキュラー菌根菌の分離・凍結保存と毛状根作成 陸上植物の一次生産に寄与するAM菌根菌のインビトロ培養について検討した。凍結保存に成功するなど、インビトロ株のNBRC株化への道を開いた。
3 ラビリンチュラ類の脂質生産の多様性 高い脂質生産性で産業界から注目されるラビリンチュラ類について、NBRC保有株の増殖特性と脂質プロファイルを網羅的に解析した。NBRCユーザーにとって有用なこれらの菌株情報を今後公開していく予定。
4 堆肥からの好熱性菌類の単離とバイオマス利用に関する酵素の特性解析 産業上有用な好熱性菌類収集のための新規分離手法を検討し、効率的に多様な好熱性バイオマス分解菌株を収集した。分離菌株の酵素群の解析と、本手法のさらなる活用を進めている。

図:NBRC 111629
図:Metarhizium cylindrosporum NBRC 111629
キュレーター育成プログラムにおける研究活動にて分離され、 NBRC株として登録されました。

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