モンゴルとの協力体制の構築
本ページの最終更新日:2023年6月27日
NITEは、2022年3月にモンゴル科学院(MAS: Mongolian Academy of Sciences)との間で覚書(MOU)を更新し、また同院生物学研究所(MAS-IB: Institute of Biology, Mongolian Academy of Sciences)と微生物の移転・利用とその利益配分に関する共同研究契約(PA)も更新しました。モンゴルとの間では2006年6月にMOU及びPAを締結してから15年間以上微生物に関する分類学と生態学及びその応用に関する共同研究を実施してきました。
MASは1960年に設立されたモンゴル教育科学省に属する総合的な研究機関です。16の研究所を擁し、モンゴル国内随一の規模を誇っています。
15年間以上に及ぶモンゴルとの協力関係により、モンゴルの微生物に関する知見の収集・共有ができ、これら微生物を日本の研究者へ商業利用も含め提供する体制を構築することができました。また、モンゴルの微生物を扱う研究者の人材育成にも貢献しました。
2012年MOU締結
(左からProf. Enkhtuvshin Batbold MAS総長(当時)、安井至NITE理事長(当時))
2016年表敬訪問
(左から辰巳敬NITE理事長、Dr. Oyunkhorol Dulamsurenモンゴル環境観光省大臣)
モンゴルとのMOU及びPAによる協力体制
モンゴルにおける生物資源の保全と持続的な利用を可能にするため、微生物資源の産業目的への利用及び学術的な研究の拡大を図り、以下の事業を実施します。
- 1.専門家、知識、情報、実用技術、経験の交換
- 2.日本及びモンゴルにおけるアクセスと利益配分に関連する法令・規則を遵守した微生物資源の交換
- 3.その他の活動 (講義、シンポジウム開催若しくは研究)
モンゴルとのこれまでのプロジェクトの内容と成果
1~3期 (2006年6月~2017年3月)
1. 微生物資源(カビ、酵母、放線菌、細菌など)の探索
2006年から産官合同微生物探索を実施し、日本企業等が直接モンゴルの微生物資源へアクセスする支援を行いました(10年間で、延べ8団体が参加し、約3千株を移転・利用)。また、NITEが塩湖や砂漠などの多様な自然環境や遊牧民の作る乳製品から収集した約8千株の微生物資源は、適宜整備し、スクリーニング用材料として提供しました。 探索を通じて得られた知見は、国内外の論文や報告書にまとめ、モンゴル側日本側で共有し、今後のモンゴル人日本人研究者への情報、資源提供の際に活用されます。
モンゴル分離源と微生物
合同探索参加企業とのプレスリリース一覧:
この事業の成果の論文一覧:
- Ismet Ara et al. (2010) Actinoplanes toevensis sp. nov. and Actinoplanes tereljensis sp. nov., isolated from Mongolian soil, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 60, 919–927
- Ismet Ara et al. (2010) Luteipulveratus mongoliensis gen. nov., sp. nov., an actinobacterial taxon in the family Dermacoccaceae, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 60, 574–579
- Ismet Ara et al. (2011) Pseudonocardia mongoliensis sp. nov. and Pseudonocardia khuvsgulensis sp. nov., isolated from soil, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 61, 747–756
- Ismet Ara et al. (2011) Actinophytocola burenkhanensis sp. nov., isolated from Mongolian soil, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 61, 1033–1038
- Ismet Ara et al. (2012) Cryptosporangium mongoliense sp. nov., isolated from soil, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 62, 2480–2484
- Ismet Ara et al. (2012) Herbidospora mongoliensis sp. nov., isolated from soil, and reclassification of Herbidospora osyris and Streptosporangium claviforme as synonyms of Herbidospora cretacea, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 62, 2322–2329
- Jigjiddorj Enkh-Amgalan et al. (2012) Diversity of nonribosomal peptide synthetase and polyketide synthase genes in the genus Actinoplanes found in Mongolia, The Journal of Antibiotics 65, 103-108
- Ismet Ara et al. (2013) Isolation, classification, phylogenetic analysis and scanning electron microscopy of halophilic, halotolerant and alkaliphilic actinomycetes isolated from hypersaline soil, African Journal of Microbiology Research Vol. 7(4), pp. 298-308, 22 January
2.研究者の交流/3.微生物資源の収集、分離、同定に関する技術指導
微生物資源に関する技術指導のため、モンゴル人研究者を平均1ヶ月間日本へ招へいし、NBRCにて微生物の基礎的取扱い、分類、応用利用に関する研究を行っています。この10年間で延べ19人のモンゴル人研究者を日本に招へいしました。 さらに、モンゴルで植物防疫所など微生物を扱う技術者・研究者を対象として2013年より4年間、「Identification of Mitosporic Fungi」と題した座学・実習を含めた糸状菌の同定についてのワークショップを開催しました。
2016年モンゴルワークショップ参加者全員
2016年モンゴルワークショップ実習
4-5期 (2017年4月~現在)
3期までに収集・整備した微生物資源を、引き続きスクリーニング株(RD株)として提供しております。詳細はこちら(微生物資源の特徴、利用方法 )をご覧ください。
なお、2022年6月1日にモンゴルにおいて「遺伝資源に関する法律」が施行されました。モンゴル原産のRD株の利用については、本法律に基づきモンゴルの中央行政機関から利用に関するライセンスを得る必要があります。本法律の詳細はこちら(モンゴル 遺伝資源に関する法律)をご覧下さい。
第1期から第5期の活動により、NITEとMAS及びモンゴルでアクセスと利益配分(ABS)を担当するモンゴル環境観光省との関係が強化されました。 日本がモンゴルでの微生物資源探索及び利用を実践したことにより、モンゴル国内に塩湖や乾燥地帯等の過酷な環境でも生育可能な微生物群が多様に存在し、また、豊富な乳製品の製造を支える乳酸菌や酵母が数多く存在していることがわかり、モンゴルの微生物が豊富かつ有益な生物資源であるという理解が進みました。これら微生物資源は企業や学術機関等の研究者に提供され、利用されています。
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- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 生物多様性支援課
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