バイオテクノロジー

環境庁(当時)の実環境実験

1997年に日本海でロシア船籍タンカー・ナホトカ号による重油流出事故が発生し、日本海沿岸海域に大規模な被害をもたらしました。その後も国内外において様々な油流出事故が発生しています。

流出油で汚染された海岸を浄化するには、主に汲み取りや汚染箇所の掘削といった回収方法が実施されますが、これらに加えて、近年ではバイオレメディエーション技術が注目されてきています。一般的な石油汚染海域には、すでに石油分解菌が多量に存在していると考えられます。そのような環境では微生物が石油を分解するために必要な窒素・リン等の栄養塩が不足しており、これらを外部から付与するバイオスティミュレーションが妥当であると考えられます。

実験室内の石油とその分解菌からなる単純な系では、栄養塩の添加により分解促進効果が確認されています。しかし、実際の石油汚染海域は石油分解菌以外の多種多様な生物が生息する開放形です。バイオレメディエーションが生態系に与える影響等について不明な点が多く、そのような場所でバイオレメディエーションを適用するには、その有効性や安全性について検討する必要があります。ところが、日本におけるバイオレメディエーションの実施例は少なく、学術的なあるいは公的機関によって評価された事例はほとんど無い状況でした。

そこで、実際の汚染現場へ適用する前に、兵庫県城崎郡香住町(日本海沿岸部)及び鹿児島県西之表市(種子島・太平洋沿岸部)に実証実験場を設置して、バイオレメディエーション技術適用の際の有効性と安全性を評価するための研究を実施しました。

研究は平成10年度から平成14年度にかけて実施され、「汚染現場からの物理的剥離も含めた石油除去量全体に関して、肥料非添加区と比較して肥料添加区では除去量が大幅に増加していた。」、「肥料添加実験中は微生物群集の多様性が低下(特定菌の優先化)したが、時間が経つにつれ復帰し、結果的には栄養塩添加区と非添加区とでは、微生物群集組成は相似したものとなった。」、「肥料の添加による海産甲殻類(端脚類)、珪藻に対する悪影響は見られなかった。」等の成果が得られました。

引用・参考資料など
www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/sr53/sr53.pdf

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