バイオテクノロジー

国産初 研究用「ヒト常在微生物カクテル」の提供開始
~ 腸内細菌等の微生物を利用した新たな医薬品や食品等の研究開発の信頼性向上に貢献 ~

 

ヒト常在微生物カクテルのイメージ画像

公表日

令和4年1月13日

本件の概要

報道発表資料

発表日:
令和4年1月13日 (木)
 
タイトル:
国産初 研究用「ヒト常在微生物カクテル」の提供開始
~ 腸内細菌等の微生物を利用した新たな医薬品や食品等の研究開発の信頼性向上に貢献 ~
 
発表者名:
独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
 
資料の概要:
 NITE(ナイト)[独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、令和4年(2022年)1月13日より、ヒトの体に生息する微生物を模した「ヒト常在微生物カクテル」の提供を開始します。
 腸内細菌をはじめ、ヒトの体に生息しているヒト常在微生物(ヒトマイクロバイオーム)はヒトの健康と密接に関連していることが明らかになっています。一方で、ヒトマイクロバイオームの計測データには測定機関や作業者の技量によりばらつきが生じることが知られており、研究開発を行う上での課題となっていました。
 この度、NITEが提供する「ヒト常在微生物カクテル」を参照用サンプルとして使用することで、研究者はヒトマイクロバイオーム解析における実験手法や試験間の妥当性を評価することが可能となります。その結果、測定データの信頼性・比較互換性が向上し、ヒトマイクロバイオームを利用した新たな医薬品や食品等の研究開発の促進が期待されます。
  1. ・ 近年、ヒトの腸内に生息する一部の細菌が肥満やうつ病などと深い関係にあることがわかってきています。また、がんの治療薬として注目されている免疫チェックポイント阻害薬の薬効も腸内細菌と関連することが示唆されています1),2),3)。これらのことから、ヒトマイクロバイオーム解析を基にした新たな医薬品や食品等の創出が期待されています。
    一方、ヒトマイクロバイオーム解析は、試料の採取・保存、DNA抽出、ライブラリー調製、シーケンス、データ解析と多くの工程からなり、各工程の手法や作業者の違いにより測定結果に偏りが生じてしまいます4)。そのため、得られたデータの信頼性や比較互換性が乏しいことが課題となっていました。

    この課題の解決には、解析の手順や結果が妥当かどうかを確認するための“ものさし”が必要でした。そこで、NITEは、NEDO先導研究プログラムにおいて、ヒトの体に生息する微生物を模した2種類の「ヒト常在微生物カクテル」を開発し、このたび提供を開始しました。

  2.   <NITEが提供する「ヒト常在微生物カクテル」>
    ①「NBRCヒト常在菌菌体カクテル」:ヒトの腸内、口腔、皮膚に生息する18種類の微生物の細胞を混合
    ②「NBRCヒト常在菌DNAカクテル」:ヒトの腸内、口腔、皮膚に生息する20種類の微生物のゲノムDNAを混合

  3. ・ NITEが提供する「ヒト常在微生物カクテル」は、ヒトマイクロバイオーム解析を実施する機関におけるデータの信頼性確保に加え、検査試薬や機器の開発等への活用も期待されます。また、「ヒト常在微生物カクテル」を利用することで、異なる測定者により取得されたデータの比較互換性も高まります。品質が確保されたヒトマイクロバイオームのビッグデータ化が進むことで、今後の研究が発展し、ヒトマイクロバイオームを活用した産業の拡大が期待されます。

  4. ・ 本カクテルは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDO先導研究プログラム/新産業創出新技術先導研究プログラム/ヒトマイクロバイオームの産業利用に向けた、解析技術および革新的制御技術の開発」(2018年度~2020年度)による支援を受け、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)、および国立研究開発法人理化学研究所(RIKEN BRC-JCM)と共同で開発されました。
  5. ヒト常在菌微生物カクテルの特徴を示した図、菌体カクテルとDNAカクテルの使用例と検証値を表に表している

    図 「ヒト常在微生物カクテル」の特徴
  6.  
  7.   ○参考文献
    1) Ozato N. et al., npj Biofilms Microbiomes, 5:28 (2019)
    2) Valles-Colomer M. et al., Nat. Microbiol., 4:623–632 (2019)
    3) Routy B. et al., Science, 359:91-97 (2018)
    4) Tourlousse D. M. et al., Microbiome, 9:95 (2021)

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