バイオテクノロジー

NBRCニュース 第58号

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                      NBRCニュース No. 58(2019.8.1)
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 NBRCニュース第58号をお届けします。今号は「新たにご利用可能となった微生物株」と
連動する新連載「埋蔵菌プロジェクト」を開始いたしました。また、「細菌・アーキアの
生育の仕方から選ぶ保存方法」の連載やゲノム編集生物に関する情報提供など、盛りだく
さんの内容となっております。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.埋蔵菌プロジェクト(1)
    「埋蔵菌」活動のご紹介
 3.細菌・アーキアの生育の仕方から選ぶ保存方法(3)
    アーキア
 4.ゲノム編集技術で作出された生物のカルタヘナ法上の取扱いについて
 5.微生物画像の提供更新のお知らせ
 6.NBRCの展示のご案内
 7.お盆期間中のNBRC株・DNAリソース・NBRC微生物カクテルの発送休止について
 8.各種手数料の改定について

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆ NBRC株
 糸状菌35株、細菌73株、アーキア2株が新たにご利用可能となりました。
 糸状菌では、ツクツクボウシの体内に共生し宿主のセミに必須アミノ酸やビタミンを供
給する役割を担う冬虫夏草類3株Ophiocordyceps sp. NBRC 113216113217113218を公
開しました。
また、日本で初めて報告されたビョウタケ目菌類Pyrenopeziza protrusa NBRC 113606113607113608113609113610113611113612113613及びPyrenopeziza nervicola 
NBRC 113614113615113616113617113618113619113620113621113622113623113624113625113626113627113628113629113630113631113632113633113634113635を公開しました。これらの菌株は2種の差異を詳細に検討した分
類学的研究に用いられています。
 細菌では、フェナントレン分解菌として報告されているMucilaginibacter xinganensis 
NBRC 110384や、リン溶解能が報告されているSpirosoma lacussanchae NBRC 111852を公
開しました。また、好熱で放線菌様な生活環を持つKtedonobacteria綱に属するThermo-
gemmatispora argillosa NBRC 113122とThermogemmatispora aurantia NBRC 113123を
公開しました。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

◆ RD株
 岡山理科大学より譲り受けた植物由来乳酸菌9株の提供を7月から開始しました。「埋蔵
菌」として収集された菌株です(「2.埋蔵菌プロジェクト」を参照)。また、2018年9月
に公開したヒト糞便由来微生物に加え、7月から新たにヒトの糞便、口腔(唾液、歯垢)、
皮膚から分離したヒト由来微生物45株について提供を開始しました。年代や性別情報がつ
いている菌株もございます。マイクロバイオーム研究などにご活用ください。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/new_rd.html
【RD株リスト】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/available_rd_list.html

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 2.埋蔵菌プロジェクト(1)
   「埋蔵菌」活動のご紹介                   (紙野 圭)
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◆活動の背景と趣旨
 NBRCでは、微生物ユーザーに向けた微生物資源のさらなる充実を図るために、「埋蔵菌」
活動を開始しました。「埋蔵菌」とは、研究テーマが変わってしまったために使われなく
なった菌株、過去のスクリーニング作業で漏れた菌株、一時的なプロジェクトで分離した
菌株など、様々な事情で埋もれてしまった菌株をさします。
 本活動のきっかけは、企業や大学の研究室へのヒアリングを行う中で、第一線で活躍さ
れてきた研究者や先生より「そういえば○○先生のあの当時の菌株ってどうなったの?」、
「△△先生は来春退官予定で後継の先生はテーマが違うようだが、あの菌株はどうなるの
かな?」といったお声を耳にしたことでした。これらヒアリング結果をうけて、そういっ
た「埋蔵菌」を公開して再利用し、新たな観点での研究開発に活かすことができるのでは
ないかと考え、本活動を開始することとなりました。

◆想定される活用事例
 「埋蔵菌」は、菌株提供と共に、当時の背景、分離の経緯や関連情報などをNBRCニュー
ス等を通して提供いたします。例えば、以下のような菌株活用が想定されます。
(1)過去に創薬目的でスクリーニングされた菌株を酵素探索目的で利用するといった異
なる視点でのスクリーニング対象株として活用
(2)本格的な探索、評価の前の試行用スクリーニング対象株として菌株譲渡・分離元の
付加情報と共に活用
(3)NBRCから菌株提供後に、菌株譲渡・分離元の研究室と新たな共同研究へ展開して活
用

◆「埋蔵菌」活動へのご協力のお願い
 「埋蔵菌」活動は、実質的に現在使われていない有用な菌株を企業等で広く活用いただ
くことを主な目的としているため、産業活動における利用形態の自由度が確保できるよう
に、菌株の権利をNBRCに譲渡いただけるようお願いしています。また、譲り受けた菌株は
RD株(スクリーニング株)の提供制度により他のユーザーにご活用いただきます。NBRCで
は、菌株を一定基準で保管・提供すると共に、その菌株の背景や使用されていた先生の研
究内容を広報活動と合わせて展開して参りますので、菌株を譲渡いただくと新たな共同研
究や研究テーマ発掘のきっかけとなり、さらにはその菌株の情報付加にもつながります。
ぜひ菌株運用の一つの仕組みとして積極的に取り入れていただければと思います。

◆菌株の譲渡に際する注意事項
 菌株の譲渡に際しては、幾つか確認させていただく事項があります。例えば、対象とな
る微生物株の分離源、分離地(原則として日本国産)、分離年、機能特性、バイオセーフ
ティレベル(BSL)、現物確認等です。また、大学や共同研究者等の間で合意やご所属機
関(社会連携等の部署)との調整が必要になる場合は、必要に応じてNBRCが調整をお手伝
いいたします。ただし、菌株の保存状態や種類によっては、お引き受けできない可能性も
あることをご承知おきください。
 冷凍庫に長期間保管され、今後も使用する見込みがほとんどない菌株を日本のバイオ産
業の発展に活用するという趣旨に少しでもご賛同いただけましたら、是非とも担当者
(bio@nite.go.jp) までご相談ください。数株程度からお引き受け可能です。また、
「あの当時の△△先生の菌株は興味深い」といった情報がありましたら是非お聞かせくだ
さい。

◆最後に
 初めての「埋蔵菌」として、岡山理科大学から譲渡いただきました乳酸菌はRD株として
入手可能です(「1.新たにご利用可能となった微生物株」のRD株リスト参照)。これら
の菌株の由来につきましては、次号で改めてご紹介いたしますので併せてご参照ください。

【第1弾】植物由来乳酸菌9株
 岡山理科大学滝沢昇教授により乳酸菌発酵豆乳(豆乳ヨーグルト)の研究開発に使用さ
れたキュウリの糠漬けや、キャベツ、ダイコン、ピーマンの野菜より分離された乳酸菌

【第2弾】Lipomyces属酵母(10月公開予定)

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 3.細菌・アーキアの生育の仕方から選ぶ保存方法(3)
   アーキア                          (森 浩二)
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 NBRCで保有するアーキア(古細菌)の全ての菌種は、凍結保存法による長期保存が可能
です。アーキアに分類される菌種は、性状やエネルギー獲得様式が特異なため、その増殖
や保存において配慮が必要です。そこで、今回は好熱性アーキア、絶対嫌気性アーキア、
高度好塩性アーキア、好酸性好熱性アーキアの凍結保存法における注意点などについてご
紹介します。NBRCニュース第1号「微生物の保存法(1)」一般的な細菌の凍結保存法と併
せてお読みください。

◆好熱性アーキア
 凍結保護剤として10~15%グリセロールまたは5~7%ジメチルスルホキシド(DMSO)を
使って、通常の細菌と同様の方法で凍結保存が可能です。一般的な凍結保存は、フレッ
シュな細胞を十分な菌濃度になるように懸濁液を調製することが大切ですが、好熱性菌の
場合は増殖が速いものが多いので、過培養にならないように注意が必要です。好熱性アー
キアは、培養後に室温以下にして中期的に保存(2ヶ月程度)することも可能です。ただし、
高温で培養しているために寒天中の水分が極端に少ない状態になっていますので、培養後
の平板培地は乾燥への注意が必要です。

◆絶対嫌気性アーキア
 凍結保護剤として10~15%グリセロールまたは5~7%DMSOを使って、嫌気性細菌と同様の
方法で凍結保存が可能です(参照:NBRCニュース第15号「微生物の保存法(8)」絶対嫌
気性菌の凍結保存法)。嫌気を保った状態で凍結保存するために、保存容器として2 mL容
のブチルゴム栓付ガラスバイアル(アルミシールあるいはネジ付キャップなどでゴム栓を
固定)を、窒素ガス等でガス置換した後オートクレーブ滅菌して使用します。培養液や菌
懸濁液に添加する凍結保護剤は予め嫌気性培地と同様の方法で脱気したものを使用します。

◆高度好塩性アーキア
 凍結保護剤として10~15%グリセロールまたは5~7%DMSOを使って、通常の細菌と同様の
方法で凍結保存が可能です。浸透圧変化による損傷を軽減するために、凍結保存に使用す
る保護培地(凍結保護剤を含む保存用の溶液)は、培養に使用した培地と同程度の塩濃度
(高NaCl濃度)のものを使用します。

◆好熱性好酸性アーキア
 凍結保護剤として10~15%グリセロールまたは5~7%DMSOを使って、通常の細菌と同様の
方法で凍結保存が可能ですが、保護培地はpHを中性にしたものを使います(参照:NBRC
ニュース第28号「微生物の培養法(14)」好熱性好酸性古細菌の培養方法)。スラント等
で培養した場合はコロニーをpHが中性の保護培地に、液体培養した場合は遠心分離により
集菌してpHが中性の保護培地に懸濁し、凍結保存します。室温以下で培養液を維持すると
細胞はダメージを受け易いので、高温培養後、速やかに凍結保存することが重要です。

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 4.ゲノム編集技術で作出された生物のカルタヘナ法上の取扱いについて
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 環境省の中央環境審議会自然環境部会での検討を踏まえ、ゲノム編集技術の利用により
得られた生物であってカルタヘナ法に規定された「遺伝子組換え生物等」に該当しない生
物(以下、「当該生物」という。)の取扱いについて、留意事項が環境省により策定され
ています(平成31年2月8日付環自野発第1902081号 環境省自然環境局長通知)。この中
で、当該生物を拡散防止措置の執られていない環境下(いわゆる「開放系」)で使用する
場合には、その使用等に先立ち主務官庁に情報提供を行うこととされています。研究開発
段階と産業上の使用では書面の提供先などが異なります。詳細については、以下のURLを
それぞれご確認ください。

【ゲノム編集技術の利用により得られた生物であってカルタヘナ法に規定された「遺伝子
組換え生物等」に該当しない生物の取扱いについて】
 https://www.env.go.jp/press/106439.html

【研究開発段階(文部科学省)】
 https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n2189.pdf

【産業利用(経済産業省所管の物の生産又は流通に該当する生物)】
 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/cartagena/anzen-shinsa2.html

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 5.微生物画像の提供更新のお知らせ
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 NBRCのウェブページで、保有する微生物の画像を提供しています。地道にラインナップ
を増やしており、新たに以下の種の画像を追加しました。海洋のマイクロプラスチック汚
染問題から最近注目されているペットボトル等の素材であるポリエチレンテレフタレート
(PET)を分解する微生物の画像もあります。微生物に関するプレゼンや説明資料等にぜひ
ご活用ください。

◆糸状菌(カビ)
黒カビ(Cladosporium sphaerospermum NBRC 6348)
黒コウジカビ(Aspergillus brasiliensis NBRC 9455)
青カビ(Penicillium chrysogenum NBRC 32029)
ススカビ(Alternaria alternata NBRC 106339)

◆細菌(バクテリア)
大腸菌(Escherichia coli NBRC 3301)
耐熱菌(Geobacillus stearothermophilus NBRC 12550)
発光菌(Photobacterium phosphoreum NBRC 104104)
PET分解菌(Ideonella sakaiensis NBRC 110686)
好熱菌(Thermus aquaticus NBRC 103206)

【URL】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/mphoto_consent.html

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 6.NBRCの展示のご案内
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 以下に出展いたします。ブースではお立ち寄りいただいた皆様からのご相談やご質問に
もお答えします。是非お越しください。

国際フロンティア産業メッセ 2019
 日時:2019年9月5日(木)~6日(金)
 場所:神戸国際展示場 1、2号館
 URL :https://www.kobemesse.com/

日本微生物生態学会 第33回大会
 日時:2019年9月10日(火)~13日(金)
 場所:山梨大学 甲府キャンパス
 URL :https://www2.aeplan.co.jp/jsme2019/index.html

第71回 日本生物工学会大会
 日時:2019年9月16日(月)~18日(水)
 場所:岡山大学 津島キャンパス
 URL :https://www.sbj.or.jp/2019/

2019年度(第23回)日本放線菌学会大会
 日時:2019年9月23日(月)~24日(火)
 場所:北海道大学 学術交流会館
 URL :https://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/tre/saj34/index.html

Asian Mycological Congress 2019 (アジア菌学会2019)
 日時:2019年10月1日(火)~4日(金)
 場所:三重県総合文化センター
 URL :http://www.amcfungi2019.com/

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 7.お盆期間中のNBRC株・DNAリソース・NBRC微生物カクテルの発送休止について
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 NBRCでは以下の期間中、発送を休止させていただきます。

◆NBRC株・DNAリソース

発送休止期間:2019年8月8日(木)~16日(金)

発送予定:
 7月30日(火)午後~8月5日(月)午前まで受付分 → 8月7日(水)発送
 8月5日(月)午後~12日(月)まで受付分 → 8月20日(火)発送
 8月13日(火)~19日(月)まで受付分 → 8月22日(木)以降順次発送

※分譲受付が集中する場合や分譲標品の形態により、以上の発送日以降になることがござ
 います。

◆NBRC微生物カクテル

発送休止期間:2019年8月13日(火)~16日(金)

 ※通常、月~水曜日に発送予定です。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/information/holiday.html

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 8.各種手数料の改定について
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 NBRC株の分譲などの業務において、業務に係る経費を手数料として利用者の皆様にご負
担いただいておりますが、この度、受益と負担の適正化を図るために、実費を勘案して手
数料の見直しを行うこととなりました。新しい手数料の額や改定時期は、決まり次第ウェ
ブページ等でお知らせいたします。
 今後も円滑な事業継続に努めて参りますので、利用者の皆様にはご理解とご協力を賜り
ますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

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 編集後記
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 モンゴルにおいて、ウランバートルのような都心には、日本料理屋やファーストフード
店が増えてきています。一方で、田舎や伝統的な遊牧生活を送られている方は、夏に「白
い食べ物」として乳製品を、冬に「赤い食べ物」として肉を主食とするのが一般的だそう
です。モンゴル人に聞いたところ、夏場の作り立ての乳製品を食べることは、「冬に肉食
で疲れた胃を白くする」と言われ、病気に強く健康な体作りにつながると考えられている
そうです。乳製品がヒトの菌叢に何か影響を与えているのでしょうか?
 2020年にはモンゴルに新空港が開業し、モンゴルがより身近になると思います。NBRCに
はモンゴルの乳製品(アイラグ、アーロール、ウルム等)から分離した菌株もありますの
で、製品開発や研究に是非ご活用ください。(KO)

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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
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  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、下記のアドレスにご連絡
  ください。
 ・ご質問、転載のご要望など、NBRCニュースについてのお問い合わせは、下記のアド
  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容は予告なく変更することがございます。掲載内容を許可なく複製・転載さ
  れることを禁止します。
 ・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第57号は2019年10月1日に配信
  予定です。

  編集・発行
    独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
    NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物資源利用促進課
TEL:0438-20-5763  FAX:0438-52-2329
住所:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 地図
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