バイオテクノロジー

NBRCニュース 第75号

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          NBRCニュース No. 75(2022.6.1)
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 NBRCニュース第75号をお届けします。今号では新連載「微生物の観察法」にて、実体顕
微鏡や光学顕微鏡を用いた微生物の観察法を紹介いたします。また、「DBRP掲載株のご紹
介」では、鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センターのTUFCコレクションにつ
いてご案内いたします。最後までお読みいただければ幸いです。

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.微生物の観察法(1)
   実体顕微鏡と光学顕微鏡による微生物の観察
 3.DBRP掲載株のご紹介(5)
   鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センターが提供する資源
   きのこ菌株「TUFCコレクション」のご紹介
 4.DBRPのリニューアル ~見やすく便利な検索画面に更新~
 5.ビフィズス菌を含むヒト腸内細菌の微生物画像公開のお知らせ
 6.NITEと国立遺伝学研究所の連携協定締結のお知らせ
 7.NBRCの展示について
 8.非常勤職員の募集について

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆NBRC株
 酵母10株、糸状菌7株、細菌6株、藻類1株が新たにご利用可能となりました。

 酵母では、日本ワインおよび醸造用ブドウのマスカット・ベリーAから分離された
Saccharomyces cerevisiae 計10株(NBRC 115463, NBRC 115464, NBRC 115465, NBRC 115466
およびNBRC 115467, NBRC 115468, NBRC 115469, NBRC 115470, NBRC 115471, NBRC 115472)
を公開しました。糸状菌では、サトイモ疫病の病原菌(Phytophthora colocasiae)の防除
を行う上で重要となる、日本での交配型の分布に関する研究において使用された菌株およ
びその関連菌株(NBRC 113138, NBRC 113139, NBRC 114523, NBRC 114524, NBRC 114525, 
NBRC 114526)を公開しました。うち3菌株は交配型の情報がついた株になります。

【詳細】https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

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 2.微生物の観察法(1)
   実体顕微鏡と光学顕微鏡による微生物の観察           (山口 薫)
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 NBRCニュースではこれまで、微生物を取り扱う手法として培養法や保存法などを紹介し
てきましたが、今号から新連載「微生物の観察法」をスタートします。今回は、実体顕微
鏡や光学顕微鏡を用いた微生物の観察法を紹介します。

◆実体顕微鏡による観察
 微生物のコロニーは肉眼でも観察できますが、平板培地(プレート)や斜面培地(スラ
ント)上での培養物のコロニーの色や性状(細菌や酵母はツヤ・マットなど、糸状菌(カ
ビ)はビロード状・羊毛状・綿毛状など)をより詳細に観察するには、実体顕微鏡を使用
します。プレパラートを作製する必要がなく、対象物を直接観察できます。

◆光学顕微鏡による観察
 光学顕微鏡は、培養物からプレパラートを作製して、細胞や胞子等の形態を観察する際
に使用します。実体顕微鏡と異なり、像は左右が反転して見えます(顕微鏡により上下左
右が反転して見えるものもあります)。細菌や酵母の場合、液体培地の培養物はそのまま
(場合によっては集菌して)、固体培地の培養物はコロニーをかきとり生理食塩水などの
マウント液に懸濁したものをプレパラートにして観察します。糸状菌の場合は柄付き針や
白金線などで培養物から一部を切り出し、滅菌水をマウント液としてプレパラートを作製
します。複雑な構造のものはプレパラートに空気が入りやすいので、70%エタノール液を
マウント液に使用します。糸状菌や酵母の場合、ラクトフェノール液(フェノール(結晶)
20 g、乳酸20 g、グリセリン40 g、蒸留水20 ml)(1)等のマウント液を使用して、マニ
キュアでカバーガラスの周りをシールすると半永久的に観察ができる標本を作ることもで
きます。細胞や胞子のサイズを測定する場合は、接眼レンズに接眼ミクロメーターを入れ
て計測します。

 無色透明の細胞や菌糸を観察するには、光学顕微鏡に微分干渉用の偏光板とプリズムを、
または、位相差用の位相板の入ったレンズとリング絞りの入ったコンデンサーを追加して
コントラストをつけて観察します(2)。そういった装置がない場合は、細菌ではメチレ
ンブルーやグラム染色で用いられるクリスタルバイオレットやサフラニン、塩基性フクシ
ンなど、糸状菌や酵母ではコットンブルーや酸性フクシンなど、用途にあった染色剤をマ
ウント液に加えて、色をつけて観察します。

 また、4~10倍の対物レンズは作動距離(W.D.)が大きいため、平板培地(プレート)
上の培養物を直接観察することができる機種もあります。糸状菌や放線菌では、20倍や50
倍の長作動距離の対物レンズを使用することで、プレパラートを作製しなくても平板培地
の上で菌糸の上に立ち上がる連鎖した胞子等の構造を観察することができます。

 次回は光学顕微鏡による糸状菌の観察法について、さらに詳しく紹介します。

【文献】
(1) 宇田川ほか (1978). 菌類図鑑(下), 講談社
(2) 財団法人発酵研究所監修 (2010). IFO微生物学概論, 培風館

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 3.DBRP掲載株のご紹介(5)
   鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センターが提供する資源
   きのこ菌株「TUFCコレクション」のご紹介
        (鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター 早乙女 梢)
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 菌類のうち、胞子を作るための構造物(子実体)が肉眼で認識できる程に大型となるも
のは「きのこ」と呼ばれ、その多くは担子菌類と子嚢菌類に属します。皆様がご存じのと
おり、きのこは人工栽培による食品や薬用としての利用はもちろん、その酵素活性を利用
した汚染土壌の修復など、幅広い分野で活用が進められている生物群です。

 きのこを含む菌類の現存種は、9割以上が未知と推定されていることから(1)、鳥取大
学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター(Fungus/Mushroom Resource and 
Research Center:FMRC)では、未利用資源としてのきのこの可能性を広げることを目的
とした研究に取り組むとともに、きのこ資源の発掘・活用に資する人材の育成も体系的・
包括的に実施しております。

 一方で、FMRCは菌株保存機関として国内外におけるきのこ菌株の収集・保存にも努めて
まいりました。FMRCでは、収集した菌株にTUFC(Tottori University Fungal Culture 
Collection)番号を付して保存・管理しており、その総保有菌株数は、588属1,817種
9,125菌株に至ります(2022年4月末時点)。これらのうち、菌株の分離源である子実体
(きのこ)の形態的特徴やDNA塩基配列情報に基づく精査により、菌名が確かとなった菌
株については、大学や民間企業等、様々な研究組織で活用していただくための分譲サービ
スを行っています(大学・教育機関・国公立試験研究機関:1菌株7,700円(税込)、その
他の民間試験研究機関:1菌株15,400円(税込))。現在の分譲可能な菌株数は370属852
種1,933菌株(2022年5月時点)で、菌株の詳細は、TUFC菌株カタログ
(http://fungusdb.muses.tottori-u.ac.jp/searches)にて公開しております。2022年3
月には、NITEの生物資源データプラットフォーム(Data and Biological Resource 
Platform:DBRP)にて、2020年度までに公開した菌株の情報を掲載していただいており、
TUFC菌株に興味・関心をお持ちのユーザーが、よりアクセスしやすくなりました。

【DBRPに掲載しているTUFC菌株のコレクション情報】
https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=COLL0000700000001

 TUFCコレクションは、その大半が分離・培養が容易な日本産の木材腐朽性きのこ種です。
シイタケのような、ヒダと柄がある子実体を形成する「ハラタケ類」も含まれますが、湿
布のように平たい形の子実体を形成する「コウヤクタケ類」や大型で木質かつ硬質な子実
体を持つ「サルノコシカケ類」の菌株が充実しており、他にも、子実体が不定形でゼラチ
ン質であることで特徴づけられる「キクラゲ類」も含まれます。FMRCでは近年、植物の根
に「菌根」と呼ばれる構造物を形成して共生関係を構築し、多くが難培養性であることで
知られる、国内外の他の保存機関では扱われないような菌根性きのこ類の菌株収集にも注
力しており、これらの菌株も分譲しています。つまり、TUFCコレクションはマツタケやホ
ンシメジのような食用きのこの代表種や産業利用される有用種、生態的な重要種・希少種、
そして分類学的に重要なタイプ株までを含み、基礎研究から応用研究に至る様々なユーザ
ーにご活用いただける充実したコレクションとなっております。

 FMRCでは、TUFC菌株の利活用を推進するための新たなアプローチとして、「抽出物ライ
ブラリー」の構築に2014年度から着手しています。これは、TUFC菌株や人工栽培あるいは
野生の子実体から抽出物を作製し、生理活性物質の探索源とする取り組みです。これまで
の成果として、医療分野や農業分野での特許出願や論文発表がされています。例えば、マ
ツオウジ菌株の抽出物からは、美白成分としての活用が期待されるチロシナーゼ阻害物質
が単離されました(2)(特開2018-162237)。また、ピロリ菌とカンピロバクター菌への
生育阻害活性物質(特願2019-208982)や植物成長調節剤として期待される物質も単離さ
れています(3)(特開2020-029406)。

 FMRCは、第5期(令和4年度~令和8年度)ナショナルバイオリソースプロジェクト中核
的拠点整備プログラム(文部科学省)に採択されたことから、今後も、きのこ菌株の収集
を進め、DBRPと連携しながら、品質評価が完了した菌株情報を順次公開していく予定です。
FMRCでは、菌株の有用性に関する研究成果も発信することで、きのこ遺伝資源の活用を推
進してまいりたいと考えております。最後に、TUFC菌株の分譲手続きについては、FMRCウェ
ブページ(http://muses.muses.tottori-u.ac.jp/facilities/FMRC/distribution.html)
やTUFC菌株カタログのウェブページに掲載しています。 また、今回ご紹介した「きのこ
抽出物」は学外提供にも対応しております。ご興味のある方は、FMRCウェブページにある
「遺伝資源分譲係」まで、お問い合わせください。

【引用文献】
(1) Hawksworth (2001). Mycol. Res., 105, 1422-1432. 
(2) Ishihara et al. (2018). Biosci. Biotechnol. Biochem., 82, 22-30.
(3) Ishihara et al. (2019). J. Pestic. Sci., 44, 9-14.

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 4.DBRPのリニューアル ~見やすく便利な検索画面に更新~
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 NBRCでは、2019年6月からDBRP(Data and Biological Resource Platform:生物資源デ
ータプラットフォーム)を運用しています。DBRPは、5万株以上の微生物資源とその関連
情報(微生物の特性情報、オミックス情報など)を一元的に検索することができるデータ
プラットフォームです。

 2022年5月にDBRPのトップページの検索画面をリニューアルしました。ユーザーの皆様
から寄せられた「検索窓がたくさんあり、用途が分かりにくい」というご意見をもとにリ
ニューアルした検索画面では、どのような検索ができるのかという説明を記載し、検索メ
ニューの配置を整理しました。また、使いやすいサイトになるよう全体的にメニューの配
置を変更しています。デザインも一新し、今までは青地に黄色いゾウさんが印象的な画面
となっていましたが、黄色いゾウさんも少し形を変え緑色を基調とした画面へと変更して
おります。下のURLからDBRPのトップページにアクセスして、是非お試しください。

 今後もDBRPの機能やデータを更新し、ユーザーの皆様の利便性を高める取り組みを続け
てまいります。リニューアルしたDBRPはいかがでしたでしょうか?ユーザーの皆様のご意
見を積極的に取り入れ、ユーザーフレンドリーなサイト構築を目指しますので、DBRPに対
するご意見、ご要望がありましたら、お気軽に窓口bio-dbrp【@】nite.go.jp(メールを
送信される際は@前後の【】を取ってご利用ください)までご連絡ください。

【DBRPトップページ】https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/top

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 5.ビフィズス菌を含むヒト腸内細菌の微生物画像公開のお知らせ
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 NBRCのウェブページでは、保有する微生物の画像を提供しています。今回新たにビフィ
ズス菌を含む以下6株のヒト腸内細菌の画像を追加しました。腸内細菌の他にも多くの微
生物の画像を公開しておりますので、微生物に関するプレゼンテーションや資料等にぜひ
ご活用ください。

◆新たに公開したヒト腸内細菌の画像
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum subsp. longum NBRC 114494)
バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis NBRC 113350)
パラバクテロイデス・ディスタソニス(Parabacteroides distasonis NBRC 113806)
ブラウティア属細菌(Blautia sp. NBRC 113351)
エンテロクロスター・クロストリジオフォルミス(Enterocloster clostridioformis NBRC 113352)
ルミノコッカス・グナバス(Ruminococcus gnavus NBRC 114413)

◆これまでに公開しているヒト腸内細菌の画像
ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum NBRC 100015)
ムチン分解菌アッカーマンシア(Akkermansia muciniphila NBRC 114322)

【微生物画像の提供ページ】
https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/mphoto_consent.html

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 6.NITEと国立遺伝学研究所の連携協定締結のお知らせ
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 NITEと大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所は、令和4年
4月1日に、バイオテクノロジー分野における包括的な連携に関する協定を締結しました。
微生物の遺伝情報の解析分野等で双方の強みを融合させ、バイオものづくりの研究開発と
その実用化に貢献してまいります。

【ニュースリリース】
https://www.nite.go.jp/nbrc/information/release/20220527.html

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 7.NBRCの展示について
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 以下のイベントに出展いたします。ぜひご参加ください。

 日本微生物資源学会第28回大会(講演・ポスター発表)
 日時:2022年7月1日(金)~3日(日)
 場所:東京理科大学 野田キャンパス(千葉県野田市山崎2641)
 URL:https://www.jsmrs.jp/ja/#jsmrs28

 第26回腸内細菌学会学術集会(講演・ブース出展)
 日時:2022年7月7日(木)、8日(金)
 場所:タワーホール船堀(東京都江戸川区船堀4-1-1)
 URL:https://bifidus-fund.jp/meeting/index.shtml
 (NITEの演題)
 日時:2022年7月7日(木)10:00~10:07
 会場:タワーホール船堀 小ホール
 演題:「ヒト細菌叢解析の妥当性評価のために開発した mock community
    (微生物カクテル)の品質について」

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 8.非常勤職員の募集について
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 現在、NITEバイオテクノロジーセンターで非常勤職員を募集しております。詳細は以下
をご覧ください。ご応募、お待ちしております。

【募集内容】
・技術補助職員2件
https://www.nite.go.jp/data/000137674.pdf
(勤務地:千葉県木更津市、令和4年6月30日締切)
https://www.nite.go.jp/data/000137677.pdf
(勤務地:千葉県木更津市、令和4年6月30日締切)

・事務補助職員1件
https://www.nite.go.jp/data/000137676.pdf
(勤務地:千葉県木更津市、令和4年6月30日締切)

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 編集後記
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 2歳の娘の語彙が増えてきて、「暑いからいや」「あっちの服が良い」など要望をはっ
きり伝えてくるようになり、育児が少し楽になってきました。ああ、難培養性微生物さん
たちもこんな感じで要望を伝えてくれるとありがたいんだけどな、と着替えさせながらぼ
んやり考えています。(KA)
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微生物に関する情報、ツールを公開しています。ぜひご活用ください!
●微生物情報の検索は「DBRP(生物資源データプラットフォーム)」
 https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/top
▲NBRC株の検索、ご依頼は「NBRCオンラインカタログ」
 https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/NBRCDispSearchServlet?lang=ja
◆微生物の復元、培養、保存法の紹介動画
 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/ampoule.html
■微生物の有害情報の検索は「M-RINDA」
 https://www.nite.go.jp/nbrc/mrinda/
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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
 ・NBRCニュースは配信登録いただいたメールアドレスにお送りしております。
  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、以下のアドレスにご連絡
  ください。
 ・ご質問、転載のご要望など、NBRCニュースについてのお問い合わせは、以下のアド
  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容を許可なく複製・転載することを禁止します。
 ・NBRCニュースは偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。次号
  (第76号)は2022年8月1日に配信予定です。

  編集・発行
   独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)
   NBRCニュース編集局(nbrcnews【@】nite.go.jp)
   (メールを送信される際は@前後の【】を取ってご利用ください)
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お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物資源利用促進課
TEL:0438-20-5763  FAX:0438-52-2329
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