バイオテクノロジー

NITEと株式会社ゲノム創薬研究所が薬剤耐性菌に有効な抗生物質を生産する希少放線菌の探索を開始

公表日

平成31年1月25日

本件の概要

報道発表資料

発表日:
平成31年1月25日(金)
 
タイトル:
NITEと株式会社ゲノム創薬研究所が
薬剤耐性菌に有効な抗生物質を生産する希少放線菌の探索を開始
-社会実装を見据えて有望菌株の優先使用を設定可能に-
 
発表者名:
独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
 
資料の概要:
 NITE(ナイト)[独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長:辰巳 敬、本所:東京都渋谷区西原]は、株式会社ゲノム創薬研究所(以下、ゲノム創薬研)[代表取締役:安川 喜久夫、本社:東京都文京区本郷、法人番号 1010001093545]と「希少放線菌培養抽出物の抗細菌活性評価」に関する共同事業を1月24日より開始しました。本共同事業では、ゲノム創薬研が開発した評価方法を用いて、昨今の社会問題となっている薬剤耐性菌に対して有効な抗生物質を生産する菌株をNITEの希少放線菌から探索します。併せて、本共同事業で見出された有望菌株に対して、 NITEはゲノム創薬研が研究開発を行う期間において、試行的取組として「優先使用措置」を適用します。これにより、創薬に向けた研究開発や社会実装が促進されることが期待されます。
  1. 1. 近年、抗菌薬の不適切な使用による薬剤耐性菌の増加が懸念されています。薬剤耐性菌による集団感染も報告されており、公衆衛生上大きな問題となっています。このため、薬剤耐性菌に有効な新規抗菌薬の開発は世界的にも喫緊の課題となっています。
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  3. 2. NITEは、多種多様な抗生物質を生産することが知られる放線菌※1を多数保有しており、製品開発に利用可能なスクリーニング用微生物(RD株)※2として提供しています。なかでも、「希少放線菌※3」と呼ばれる微生物は、医薬品候補物質の探索源として期待されるものの、分離・培養が難しいため、一部の菌株を除きこれまで利用されてきませんでした。
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  5. 3. そこでNITEは、保有する希少放線菌が創薬資源として有用かどうかを評価するための共同事業を公募し、応募のあったゲノム創薬研と共同でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)※4に有効な抗生物質を生産する希少放線菌の探索を開始しました。NITEは多様な希少放線菌の培養抽出物を提供し、ゲノム創薬研はその中からMRSAに有効な新たな抗生物質を、独自に開発したカイコを使った評価方法を用いて探索します。
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  7. 4. NITEは今回、試行的取組として、本共同事業で見出された有望な抗生物質生産菌について、ゲノム創薬研が引き続きこれを使用して研究開発を進める場合に、一定期間優先的に使用できるような措置(優先使用措置)を講じます。また、ゲノム創薬研の試験結果はNITEに提供され、菌株の付帯情報として公開されます。これにより、NITEは企業が優位性を保ったまま研究開発を進めることができる環境を提供しつつ、菌株に有用な情報が付加されることで微生物遺伝資源の産業利用が促進されることが期待されます。
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  9. ※1 一般的には、菌糸が細長く枝分かれしながら増殖する形態的特徴を有し、グラム染色陽性の細菌群を指します。系統分類学的にはアクチノバクテリア門に属する菌をいいます。放線菌は多様な抗生物質を生産することで知られており、代表的な放線菌にストレプトマイセス属があります。有名な抗生物質であるストレプトマイシンもストレプトマイセス属から発見されました。
  10. ※2 国内外の様々な環境から分離した菌株を属レベル程度まで同定し、提供している菌株。製品開発に適した微生物を選抜するために多数の微生物株を試験したい場合などに適しており、株数に応じて年間利用料を支払うことで比較的安価に利用することができます。
    ■スクリーニング株(RD株)提供のウェブサイト
    https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/index.html
  11. ※3 希少放線菌:放線菌のうち、ストレプトマイセス属以外のものをいいます。様々な属や種が知られていますが、ストレプトマイセス属と比べて分離・培養が難しいため産業有用性の評価は進んでいません。
  12. ※4 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA):院内感染症の主要な原因菌の一つで、抗菌薬であるメチシリンが効かなくなった薬剤耐性黄色ブドウ球菌をいいます。

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