バイオテクノロジー

NBRCニュース 第51号

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                      NBRCニュース No. 51(2018.6.1)
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 NBRCニュース第51号をお届けします。NITEでは夏休み時期に小中高生を対象としたイベ
ントを開催しています。今号ではそのお知らせに併せて、微生物教室・担当者の工夫や苦
労を「微生物あれこれ」で紹介しています。また前号に引き続き、定期連載「細菌・アー
キアの分類群から見た培養方法の選び方」も掲載しています。最後までお読みいただけれ
ば幸いです。

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.細菌・アーキアの分類群から見た培養方法の選び方(1)
    グラム陽性・低GC細菌(Firmicutes門)前編
    ~気相条件による3グループへの大別~
 3.微生物あれこれ(46)夏休みの微生物教室を通して
 4.夏休みに微生物を観察してみませんか? -小・中・高校生向け体験教室のご案内-
 5.NITEフレンドシップデイ2018開催のお知らせ
 6.NITE講座のご案内
 7.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆ NBRC株、ゲノムDNA
 酵母 3株、糸状菌 12株、細菌 189株、アーキア 2株、微細藻類 5株が新たにご利用可
能となりました。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

◆ RD株
  国内産の乳製品用スターターとして知られる種を含む乳酸菌28株と有胞子乳酸菌2株、
および糸状菌17株を追加しました。是非、リストをご覧ください。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/new_rd.html
【RD株リスト】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/available_rd_list.html

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 2.細菌・アーキアの分類群から見た培養方法の選び方(1)
   グラム陽性・低GC細菌(Firmicutes門)前編
   ~気相条件による3グループへの大別~             (宮下美香)
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 細菌は細胞壁構造の違いから、グラム染色によって青紫色に染まる「陽性」と染まらな
い「陰性」の2種類に分けられます。この細胞壁構造の違いによるグループ分けは、遺伝
子配列に基づいた系統分類にも相関性があり、それぞれグラム陽性または陰性細菌として
系統の分かれたグループを作ります。グラム陽性細菌はさらに、ゲノム中のGC含量%が高
いグループと低いグループに分けられます。このうちGC含量%が低いグループにはFirmi-
cutes門が該当します。
 NBRCで保存しているFirmicutes門に含まれる代表的な菌種としては、Bacillus属や
Staphylococcus属を含むBacillales目と、いわゆる乳酸菌と呼ばれるLactobacillales目、
Clostridium属を含むClostridiales目があります。これら3つの目(もく)の培養には、
それぞれ異なる気相条件が当てはまり、Bacillales目には好気的な、Lactobacillales目
には通性嫌気的な、Clostridiales目には偏性嫌気的な条件が適しています。それぞれの
気相条件での培養方法は以下の方法を想定しています。

【好気的な培養】通常の大気条件下で培養します。試験管には通気性のある栓を用い、
        液体培地の場合は振とうにより通気性を高めて培養します。
【通性嫌気的な培養】固形培地(平板や斜面)は嫌気ジャーを用いて培養し、液体培地は
          深さのある状態で静置培養、または嫌気ジャーを用いて培養します。
【偏性嫌気的な培養】バイアル瓶などの密栓できる容器に、気相置換して封入した液体培
          地で培養します。
◆Bacillales目
 好気的な培養が適しているBacillales目でも、Bacillus属の一部やStaphylococcus属の
ように通性嫌気性菌とされる菌種が含まれます。しかしこれらの菌種は嫌気的な条件よ
り、むしろ好気的な条件の方が旺盛に生育するため、基本的な培養条件としては好気的な
条件を用います。例外として、Sporolactobacillus属やHalolactibacillus属は系統的に
はBacillales目に入るものの、Lactobacillales目に含まれる乳酸菌とよく似た性質を示
すため、通性嫌気的な培養が適しています。またAmphibacillus属は、株や種による違い
はありますが好気的・通性嫌気的どちらの条件でも同じように生育することが可能です。
 好気的または通性嫌気的条件どちらが適しているかは、酸素に対する防御機構と、通性
嫌気的な条件下で糖発酵によりエネルギーを獲得できるかが関係するため、指定培地の組
成にグルコースなどの糖が含まれているか否かもチェックポイントのひとつです。ただ
し、好気的な代謝により増殖を促すための栄養源として培地に含まれる場合もありますの
で、糖の有無だけでは判断できません。通性嫌気的な条件で生育させる乳酸菌などの菌種
と同じ培地、例えばMRS培地やGYP培地などが指定されている場合は、気相条件も同様に通
性嫌気的な条件を用いる場合が多いです。
◆Lactobacillales目
 通性嫌気性菌とされるLactobacillales目は、種による強弱の違いはありながらも基本
的に酸素の存在が生育を阻害します。また特にEnterococcos属やStreptococcus属のよう
にCO2の存在が生育を促進すると報告される菌種も含まれており、気相がCO2置換される嫌
気剤による通性嫌気的な条件を用いることで、Lactobacillales目全般の培養をカバーす
ることが出来ます(参考:NBRCニュース第24号「微生物の培養法(12)」乳酸菌の復元培
養法)。
 培地の形状は基本的に固形培地(平板培地)と液体培地のどちらでも生育しますが、液
体培地での生育の方が早く旺盛な株が多く見られ、中には平板培地では非常に弱いまたは
生育しない株もあります。平板培養していて元気がなくなったと感じたら、液体培養する
とリフレッシュすることがあります。
◆Clostridiales目
 Clostridiales目は偏性嫌気的な条件が適しています。しかし中には通性嫌気的な条件
下でも生育可能な属種がいます。分類群から見ると、Clostridium属に通性嫌気的な条件
下で生育可能な種が多く含まれます。どちらの嫌気度を選ぶべきか、判断を助ける情報の
ひとつとして指定培地が挙げられます。クロストリジア強化培地やチオグリコレート培地、
PYG培地のように、炭素源が豊富で組成や調整手順が単純な培地が指定されている場合、
通性嫌気的な扱いでも培養可能だと推測できます。一方で気相置換の手順が明記されてい
る場合はその手順に従い偏性嫌気的な扱いをする必要があります(参考:NBRCニュース第
2号「微生物の培養法(1)」嫌気性菌の培地調製法)。

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 3.微生物あれこれ(46)
   夏休みの微生物教室を通して                  (岡田和也)
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 NBRCでは10年以上前から、毎年夏休みに小中高生を対象とした微生物実験教室を開催し
ています。平成24年度からは、千葉県の教育委員会が主催する「千葉県夢チャレンジ体験
スクール」に協力して、小学4~6年生を対象とした「サイエンススクール」と中高生を対
象とした「科学・先端技術体験キャンプ」を実施しています。
 微生物は醤油やお酒といった発酵食品をはじめ、私たちの生活に密接に関係しています
が、肉眼では見ることができないため、その身近さを実感しづらい存在です。この教室で
は微生物を身近に体感してもらうために、においをかいだり、増やしてみたり、顕微鏡で
観察したりしています。この教室を通して、子供達に少しでも微生物に興味を持ってもら
いたいと考えています。今回は、この教室を開催する上での工夫や苦労している点を紹介
します。
 教室ではまず初めに「微生物のイメージ」について質問します。子ども達の回答は二つ
に分かれます。一方は少人数で、「乳酸菌」等の人の役に立つ微生物を連想し、微生物に
対して良いイメージをもった回答です。大多数を占めるもう一方の回答は、「ばい菌」等
の悪いイメージです。続いて、今まで発見されている微生物の種類の中で、人に感染する
と重篤な疾病を起こすもの(BSL3以上)は、何%くらいいると思うかと聞くと、ほとんど
の子どもが50~80%くらいではないかと回答します。実際は1%にも満たない極わずかで
すが、子ども達の認識では、「微生物=危険なもの」という印象があるようです。このた
め教室では、これから観察する微生物がどのようなものか説明し、他の動植物と同じよう
に、確かに危険なものもいるが、人の役に立っている微生物も多くいることを説明し、同
伴した保護者を含めた参加者に安心してもらうことから始めています。扱う微生物も、以
前の記事(NBRCニュース第41号「微生物あれこれ(37)」)で紹介したとおり、子ども達
が扱っても危険性が低い納豆菌(細菌)やパン酵母、麹菌(糸状菌)、ユーグレナ(ミド
リムシ)、また、市販のキノコ(しいたけ等)を選択しています。
 微生物の観察には、顕微鏡を準備して2人につき1台を割り当てて自由に使ってもらいま
すが、多くの子ども達がつまずく点が2点あります。それはピント合わせとレンズを覗き
ながらのステージの移動です。これは、微生物を実際に顕微鏡で見た際のサイズ感や見え
方が分からないためと思われます。そこで極小の文字を書いた紙を用意しておき、微生物
の観察を始める前に、この紙を使って顕微鏡の操作を練習してもらいます。形の分かって
いる文字を観察することで、ピント合わせや、レンズを覗きながらのステージ移動も簡単
に練習することができます。
 準備した微生物を観察する順番も工夫しています。はじめに形が単純で大きさもあるパ
ン酵母を、その次に麹菌を観察し、ステージを動かして分生子柄の先に作られている胞子
を探します。その後に、サイズの小さな納豆菌を、最後に泳ぐユーグレナを観察します。
 また子供達は顕微鏡観察に熱中すると、接眼レンズにぶら下がったり、狭い視野の中で
グルグルとステージを移動させて目を回し、体調不良になることがあります。これらを防
ぐために、顕微鏡の高さやイスの高さを調整したり、観察の時間に講義を挟んで、遠くを
見る時間を作っています。また扱う実験器具には、ピンセットやプレパラートなど使い方
によっては怪我をするものもありますので、カバーガラスは割れにくいプラスチック製を
採用したり、スタッフを顕微鏡1台につき1人つけてサポートや質問をしやすい環境を作っ
ています。
 子ども達の多くは、はじめは戸惑いながら行っていますが、講義を聴き、顕微鏡の観察
等を続けて行くと、パン酵母や納豆菌のにおいに驚いたり、ユーグレナの動きをずっと眺
めていたりして、最後には「もっとやりたい」や「微生物ってすごい」と感想を持っても
らえます。
 この講座では観察以外にも、参加者自身で行う微生物の培養や、中高生はクリーンベン
チを使用した無菌操作が体験できます。今年度の夏休みにも実施しますので、ぜひご応募
ください。
顕微鏡観察 クリーンベンチ操作
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 4.夏休みに微生物を観察してみませんか? -小・中・高校生向け体験教室のご案内-
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 NBRCでは千葉県教育委員会が主催する「千葉県夢チャレンジ体験スクール」に協力して
います。今年の夏も、顕微鏡を自分で操作する等の体験を通じて、子供達が微生物の世界
を知り、慣れ親しんでもらえるような教室を開催します。夏休みに微生物を観察してみま
せんか?

○科学・先端技術体験キャンプ
  日時:平成30年7月25日(水)10:00~16:00
         7月26日(木)かずさDNA研究所で体験
  場所:製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
     千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
  内容:身近な微生物の観察や培養、施設見学等
  対象:中高生(保護者同伴可)
  募集人数:20名
  参加費用:90円

○サイエンススクール
  日時:平成30年7月27日(金)10:00~15:30
  場所:製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
     千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
  内容:身近な微生物の観察や施設見学等
  対象:小学4~6年生(保護者同伴必須)
  募集人数:20名
  参加費用:45円

<申込方法>
 申し込み受付は千葉県が行っています。申込用紙等の詳細な情報は平成30年6月初旬に
下記URLのページに掲載予定です。ちば電子申請サービスでご応募いただくか、申込用紙
に必要事項を記入の上、郵送またはFAXで、千葉県教育庁教育振興部生涯学習課 学校・家
庭・地域連携室「千葉県夢チャレンジ体験スクール」係までご応募ください。

「千葉県夢チャレンジ体験スクール」の詳細
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/shougaku/career/taikenschool.html

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 5.NITEフレンドシップデイ2018開催のお知らせ
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 夏真っ盛りの夏休みに、NITEフレンドシップデイ2018をやります!NITEの技術を活かし
た実験教室や工作をふんだんに取りそろえていますので、お子様の自由研究にも最適か
も?!お父様やお母様も普段見ることができないものを見て学んで頂くこともできます。
東京や大阪近郊にお住まいの方は、ぜひお越しください!
 2018年度の詳細は、6月下旬頃にNITEフレンドシップデイのページでお知らせします。

【NITEフレンドシップデイのページ】
https://www.nite.go.jp/nite/koho/event/friendship/index.html

○NITEフレンドシップデイ東京
 日時:平成30年7月22日(日)10:00~16:00
 場所:製品評価技術基盤機構 本所
    東京都渋谷区西原2-49-10
【昨年の様子】 https://www.nite.go.jp/nite/koho/event/friendship/2017r.html

○NITEフレンドシップデイ大阪
 日時:平成30年8月5日(日)10:00~16:00
 場所:製品評価技術基盤機構 大阪事業所
    大阪府大阪市住之江区南港北1-22-16
【昨年の様子】 https://www.nite.go.jp/nite/koho/event/osaka2017r.html

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 6.NITE講座のご案内
   生物遺伝資源の産業利用によるバイオ・イノベーション
   ~微生物遺伝資源の利用環境整備~
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 新産業創出・循環型社会の実現のため、革新的なバイオ技術の活用が期待されています。
また、バイオテクノロジーの社会への更なる貢献を目指して、政府において「バイオ・イ
ノベーション戦略」の策定が検討されており、夏頃に中間的なとりまとめが行われる予定
です。
 NITEでは、生物遺伝資源を活用したバイオ・イノベーションの創出を支えるため、カル
タヘナ法や生物多様性条約、特許微生物寄託への対応を行っています。バイオ・イノベー
ション戦略策定の概略と、研究開発成果の社会実装の促進に向けたNITEの取組について紹
介するNITE講座を開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

○東京会場
 日時:平成30年7月27日(金)14:00~17:00(予定)
 場所:製品評価技術基盤機構 本所
    東京都渋谷区西原2-49-10

○大阪会場
 日時:平成30年8月1日(水)14:00~17:00(予定)
 場所:製品評価技術基盤機構 大阪事業所
    大阪府大阪市住之江区南港北1-22-16
 
参加費:無料
定員:各50名
受付開始:平成30年6月1日(金)

 ※内容の詳細やお申し込み方法につきましては、以下のウェブページをご覧ください。
【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/information/2018_bio-kouza.html

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 7.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ
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 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門主催の関西バイオ医療研究会 第6回講
演会にNBRCからも演者として2名が参加します。是非お越しください。

◆ 関西バイオ医療研究会 第6回講演会
  日程:平成30年6月8日(金)14:00~18:00
  場所:産業技術総合研究所 関西センター C-4棟(基礎融合材料実験棟)2F大会議室

  ※事前申し込みが必要です。詳細は下記URLをご覧ください。
  http://www.aist.go.jp/kansai/ja/news/e20180608.html

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 編集後記
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 NBRCは千葉県木更津市の房総丘陵にあります。先日、木更津市の南、富津市・鋸南町に
ある鋸山に登ってきました。麓から山頂まで2時間弱でしたが、日頃パソコン作業しかし
ていない身体には、ハードな登山となりました。二日経っても、筋肉痛が治まりません。
ですが、山頂からの眺望は素晴らしく、浦賀水道、対岸の三浦半島、久里浜・金谷を結ぶ
フェリー、富士山の頂を見られました。道中、石切場跡や素掘りのトンネル、モリアオガ
エルの卵も見られました。房総の山の中での、ある一日の出来事でした。(HS)

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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
 ・NBRCニュースは配信登録いただいたメールアドレスにお送りしております。
  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、下記のアドレスにご連絡
  ください。
 ・ご質問、転載のご要望など、NBRCニュースについてのお問い合わせは、下記のアド
  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容は予告なく変更することがございます。掲載内容を許可なく複製・転載さ
  れることを禁止します。
 ・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第52号は2018年8月1日に配信
  予定です。

  編集・発行
    独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
    NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物資源利用促進課
TEL:0438-20-5763  FAX:0438-52-2329
住所:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 地図
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