バイオテクノロジー

NBRCニュース 第66号

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                      NBRCニュース No. 66(2020.12.1)
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 NBRCニュース第66号をお届けします。今号は連載「微生物の保存法」にて、園芸資材で
知られるバーミキュライトを用いた担子菌類の凍結保存法をご紹介します。また、微生物
に関する相談窓口として、「微生物コンシェルジュ」を開設しましたのでご案内していま
す。さらに、生物資源データプラットフォーム(DBRP)に、民間企業が保有する生物資源
のデータがさらに追加されました。内容が盛りだくさんですが、最後までお読みいただけ
れば幸いです。

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.微生物の保存法(20)
   バーミキュライト法による担子菌類の凍結保存法
 3.「微生物コンシェルジュ」始めました
 4.DBRPでの外部機関の菌株データ公開
   味の素株式会社・第2弾!セルロース高生産酢酸菌BPRライブラリの
   生物資源データを公開
 5.食品・植物由来の微生物リスト更新のお知らせ
 6.年末年始のNBRC株・DNAリソース・NBRC微生物カクテルの発送休止について

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆NBRC株
 酵母1株、糸状菌40株、細菌54株、アーキア1株が新たにご利用可能となりました。
 酵母では、稲庭うどんの生地から分離された耐塩性酵母株 Hyphopichia burtonii 
NBRC 114656を公開しました。
 糸状菌では、アラゲキクラゲ(Auricularia cornea)の白色変異株であるNBRC 114709
など、天然のきのこから分離された担子菌類20株(NBRC 114693NBRC 114694NBRC 114695NBRC 114696NBRC 114697NBRC 114698NBRC 114699NBRC 114700NBRC 114701NBRC 114702NBRC 114703NBRC 114704NBRC 114705NBRC 114706NBRC 114707NBRC 114708NBRC 114709NBRC 114710NBRC 114711NBRC 114712)と、
金管楽器やスマートフォンなどの製品の汚染菌17株を公開しました(NBRC 114561NBRC 114562NBRC 114563NBRC 114564NBRC 114565NBRC 114566NBRC 114567NBRC 114568NBRC 114569NBRC 114570NBRC 114571NBRC 114572NBRC 114573NBRC 114574NBRC 114575NBRC 114576NBRC 114577)。
 細菌では、日本の水田土壌由来の新しい鉄還元細菌 OryzomonasNBRC 114286および
NBRC 114287を公開しました。また、高いセシウム蓄積能を有する Rhodococcus erythropolis
NBRC 114673およびRhodococcus hoagii NBRC 114674を公開しました。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html


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 2.微生物の保存法(20)
   バーミキュライト法による担子菌類の凍結保存法        (佐藤真則)
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 NBRCニュース第57号で改良パーライト法1)による担子菌類の凍結保存法についてご紹介
しましたが、今回はその方法よりもさらに良好な保存結果が得られたバーミキュライト法
についてご紹介します。バーミキュライトは蛭石(ひるいし)を高温で焼結処理し10倍以
上に膨張させたもので、多孔質でアコーディオン状の空隙層構造を持っているため保水性
や通気性に優れています。園芸などで土の代用品としてよく使われているのでご存じの方
も多いかと思います。我々はこのバーミキュライトを培養基材として担子菌株を培養し凍
結保存を行うことで、従来法のdisc法はもちろん改良パーライト法でもうまく凍結保存出
来なかったLactarius akahatsu(アカハツ;NBRC 33156)、Sarcodon aspratus(コウタケ
;NBRC 32815)をはじめとするNBRC保有担子菌株の中で最も凍結が難しいグループの1年後
の生残性および増殖性について大変良好な結果を得ることが出来ました2)。ここではその
方法についてご紹介します。

◆準備
 2 mL凍結保存用チューブ(Thermo Fisher Scientific社製 カタログNo. 351934(Nunc
クライオチューブ)、カタログNo. 363436(キャップ))に対して直径1 mmほどのバーミ
キュライト(ホームセンターで購入) 0.2 gと液体培地(接種する菌種に適した培養培地)
0.8 mLを入れて(バーミキュライト培地)、オートクレーブ滅菌します。
◆接種
 菌株を培養した寒天プレートから滅菌済ストローで菌糸を含む寒天片を打ち抜き、それ
を滅菌済の竹串でチューブ内のバーミキュライト培地に接種します。このとき寒天片の菌
が生育している面をバーミキュライトに接するようにします。
◆培養
 接種した菌株の至適培養温度で、菌糸がチューブ内で十分増殖するまで培養を行います。
培養期間は菌株によって異なりますが、目視レベルでの観察でチューブ側面や底面に菌糸
の増殖が確認出来ることを目安にします。
◆凍結保護液の添加
 菌糸が十分増殖したら凍結保護液として15%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)+30%
(w/v)トレハロースを0.4 mL(培地の半量)添加します。培地中のDMSOとトレハロースの
終濃度はそれぞれ5%と10%になります。この時1 mLピペットを使ってチューブ側面からチッ
プの先端をチューブの中央の深さまで差し込んで凍結保護液を添加します。その後培地と
凍結保護液が混ざるように静かに数回ピペッティングし、4℃で2日間静置します。
◆凍結方法
 フリージングコンテナ(Thermo Fisher Scientific社製Mr. Frosty、日本フリーザー社
製BICELL等)またはプログラムフリーザー(凍結速度: -1℃/min)を用いて緩慢凍結を行
います。
◆保存温度
 液体窒素タンク(気相)で保存します。ない場合は-80℃の超低温槽で保存します。
◆復元方法
 30℃の温浴ですばやく融解します。融解後は5 mL以上の液体培地を入れた試験管に、滅
菌済スパーテルでチューブ内の菌糸をバーミキュライトごと入れてリンスします。その後
プレート上に菌体をバーミキュライトごとスパーテルですくい、シャーレ中央部において
培養します。菌株によっては、凍結保護液をすすいだ際に菌体が残ったリンス液の方が、
復元率がよい場合もありますので、はじめて試す際には、リンス液を捨てずに一緒に培養
します。
 ご質問等がございましたら、お気軽に特許微生物寄託センター(npmd@nite.go.jp)
までお問い合わせください。
図 バーミキュライト法
             図 バーミキュライト法

A: バーミキュライト法に使用するチューブと道具、B: バーミキュライトをクライオ
チューブに入れる様子、C: プレートから菌糸付寒天discの切り出し、D: 液体培地を含む
滅菌済みバーミキュライト培地に寒天discの接種、E: 凍結保護液の添加、
F: 4℃で2日間おいて凍結準備をおえた様子

【参考文献】
1) Sato et al. (2019). Mycologia 111 (1), 161-176.
2) Sato et al. (2020). Fungal biology 124, 742-751.


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 3.「微生物コンシェルジュ」始めました
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 微生物に関する相談窓口として、「微生物コンシェルジュ」を開設しました。微生物に
関する様々なご相談にメールやビデオ通話でお応えします。是非、ご活用ください。
 以下のウェブページでは、NBRCから提供している微生物を分離源や用途などでまとめた
様々なリストも紹介しています。また、関連するお役立ち情報も本ページでまとめて発信
していく予定です。今後の微生物利用や新しい研究開発シーズ探しに是非お役立てくださ
い。

【URL】 https://www.nite.go.jp/nbrc/information/microbeconcierge.html


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 4.DBRPでの外部機関の菌株データ公開
   味の素株式会社・第2弾!セルロース高生産酢酸菌BPRライブラリの
   生物資源データを公開
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 NBRCでは2019年6月26日から「生物資源データプラットフォーム」(Data and Biological 
Resource Platform:DBRP)を運用しています。DBRPは、2万株以上の微生物資源とその関
連情報(微生物の特性情報、オミックス情報など)を一元的に検索することができるデー
タプラットフォームです。

 DBRPにはNBRC保有菌株に加えて、外部機関の保有株(味の素株式会社、静岡県、株式会
社テクノスルガ・ラボ、和歌山県(50音順))の微生物に関連した情報も掲載しておりま
すが、10月26日に新たに味の素株式会社のBPRライブラリを追加しました。このライブラ
リは今回DBRPで初めて一般に公開されたものです。
 BPRライブラリは、株式会社バイオポリマー・リサーチ(ナショナルプロジェクトで味の
素株式会社も参画して設立)において、微生物を用いてバイオセルロースを生産するため
に分離および育種された酢酸菌株のライブラリです。産生能が高い菌株に加え、種々の生
産条件(糖の種類など)に適した菌株、産生されるセルロースや副生する多糖の構造・物
性が異なる菌株もあります。各菌株の特徴や育種履歴、特許情報など様々な情報をご覧頂
けます。また、今回公開した菌株の利用を希望される方は、DBRPに記載されている連絡先
からお申し込みいただけます。
 DBRPでは、生物資源そのものだけでなく関連する様々な情報も公開しています。DBRPの
情報をご活用頂くことによって、イノベーションの創出につながることを期待しておりま
す。是非ご活用下さい。また、企業や研究機関で保有する生物資源の利活用やビジネス機
会創出をお考えの方は、DBRPへの積極的な情報提供をお願いいたします。

【DBRPトップページ】 https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/top
【BPRライブラリに関するコレクション情報ページ】
 https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=COLL0000100000006


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 5.食品・植物由来の微生物リスト更新のお知らせ
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 ご好評いただいております食品・植物に由来する乳酸菌、酵母などをまとめたNBRC株お
よびRD株(国内株)のリストを更新しました。一番人気のNBRC株のリストには乳酸菌を中
心に23株を追加しています。Excelファイルでダウンロードできますので検索も簡単です。
醸造用、商品開発などに是非ご活用ください。

【URL】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/use/specialset2.html


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 6.年末年始のNBRC株・DNAリソース・NBRC微生物カクテルの発送休止について
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 NBRCでは年末年始は微生物株等の発送を休止いたします。
 なお、新型コロナウイルス対策のため引き続き出勤制限を実施しておりますので、通常
よりもお手続きに時間を要する可能性がございます。お急ぎの方は事前にご相談ください。
ご理解とご協力の程よろしくお願いいたします。

発送休止期間:2020年12月18日(金)~2021年1月6日(水)

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/information/holiday.html


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 編集後記
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 朝夕に冷え込むようになり、秋が深まってきました。秋は栗やキノコ等、秋の味覚が楽
しめ、冬に向かってさらに寒くなると今度は鍋が待ち遠しい季節です。今年は新型コロナ
ウイルスの影響で在宅ワークが増えて、それとともに体重も増えた方が多いと聞きます。
冬になるにしたがって、感染症だけでなく食べ物の誘惑にも要注意だなぁと思いながら仕
事をしています。(TH)

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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
 ・NBRCニュースは配信登録いただいたメールアドレスにお送りしております。
  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、下記のアドレスにご連絡
  ください。
 ・ご質問、転載のご要望など、NBRCニュースについてのお問い合わせは、下記のアド
  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容は予告なく変更することがございます。掲載内容を許可なく複製・転載さ
  れることを禁止します。
 ・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第67号は2021年2月1日に配
  信予定です。

  編集・発行
   独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)
   NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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