バイオテクノロジー

NBRCニュース 第56号

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                      NBRCニュース No. 56(2019.3.29)
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 NBRCニュース第56号をお届けします。今号は連載「細菌・アーキアの生育の仕方から選
ぶ保存方法」では放線菌を、「バイテク分析法」では、現在、NBRCで取り組んでいる微生
物カクテルの開発をご紹介します。「微生物のカクテルって何だろう?」と思われた方は、
是非記事をお読みください。今号も最後までお付き合いいただければ幸いです。

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.細菌・アーキアの生育の仕方から選ぶ保存方法(2) 
    グラム陽性・高GC細菌(Actinobacteria門)
 3.バイテク分析法(8)
    メタゲノム解析における計測レファレンスの必要性
 4.MALDI-TOF MS微生物迅速同定用ライブラリーの更新
    (乳酸菌およびPseudomonas属)
 5.微生物有害性情報の総合サイト「M-RINDA」公開のご案内
    (2019年3月26日公開)
 6.NBRCウェブページのURL変更のご連絡
 7.NBRC微生物実験講習会に関するアンケートのご協力のお願い
 8.GW期間中のNBRC微生物株・DNAリソースの発送休止について

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆ NBRC株、ゲノムDNA
 酵母 26株、糸状菌 14株、細菌 35株、微細藻類 1株、ファージ 3株、ゲノムDNA 2株が
新たにご利用可能となりました。
 酵母では、アトピー性皮膚炎患者から比較的高頻度で分離されるMalassezia sympodia-
lis NBRC 113671を公開しました。また、石油酵母やアルカン資化酵母などと呼称され、
油脂やリパーゼを産生するYarrowia lipolytica NBRC 113670、n-ヘキサデカン、アミン
類、ベンゼン類を分解するApiotrichum veenhuisii (異名:Trichosporon veenhuisii) 
NBRC 113756、カテコールやハイドロキノンなどのフェノール類やアルカンを分解する
Candida aquae-textoris NBRC 113758、さらにプロテアーゼを分泌するTortispora 
caseinolytica (異名:Candida caseinolytica) NBRC 113757を公開しました。また、単
胞子由来の耐熱性メタノール資化性酵母Ogataea thermomethanolica NBRC 113734と、こ
の株から得られた各種栄養要求性変異株NBRC 113735NBRC 113736NBRC 113737NBRC 
113738NBRC 113739NBRC 113740NBRC 113741NBRC 113742NBRC 113743NBRC 
113744及びNBRC 113745の11株を公開しました。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

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 2.細菌・アーキアの生育の仕方から選ぶ保存方法(2)
   グラム陽性・高GC細菌(Actinobacteria門)          (田村朋彦)
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 NBRCで保有する放線菌(グラム陽性細菌のうち、ゲノムDNAのGC含量(%)が高いグルー
プであるActinobacteria門のActinobacteria綱に含まれる菌群)の全ての菌種は、凍結保
存法による長期保存が可能です。そこで、今回は放線菌の凍結保存法における注意点など
についてご紹介します。「微生物の保存法(1)一般的な細菌の凍結保存法」と併せてお
読み下さい。今回は割愛しますが、真空乾燥保存法(L-乾燥保存法)も、ほとんどの放線
菌で適用可能です(参考:微生物の保存法(9)L-乾燥保存法-アンプルの作製)。
 なお、属種名から、その属種がどの目や科に属するかを調べる方法は、「細菌・アーキ
アの分類群から見た培養方法の選び方(0)~はじめに~」をご参照ください。

◆菌糸状に生長する放線菌
 菌糸状に生長する放線菌の多くは胞子を形成します。胞子は乾燥や温度変化などに強く、
栄養細胞よりも高い保存性を示します。このため、斜面培地上に生育させて胞子を形成し
た放線菌は、冷蔵庫内で半年から1年間は保存することが可能です。また、胞子形成菌種
であっても、菌株の状態や培養条件によって胞子形成が悪くなることもありますが、胞子
形成が見られなくても1~数ヶ月間は冷蔵保存が可能なものが多いです。
 凍結保存も同様に、胞子を作らせて保存します。胞子を大量に形成する菌株では、ルー
プなどで胞子を掻き取り、凍結用保護液に懸濁し、凍結用チューブに小分けに分注して保
存します。Streptomyces属の中には掻き取った胞子を凍結用保護液に移した際に胞子が浮
いてしまうことがあります。その場合は、しっかりと攪拌して均質に分散させる必要があ
ります。
 胞子の量が少ない場合や胞子形成をしない場合は、菌糸が寒天中に潜りこんだ基生菌糸
が多くなるため、容易に菌体を掻き取ることができません。そういった場合は、寒天ごと
コロニーを切り出して保存します。平板培地に培養し、滅菌したストローなどで寒天ごと
菌体を打ち抜き、滅菌した爪楊枝などでこの寒天ブロックを凍結用保護液が入ったチュー
ブに入れるように作業すると、多量の凍結標品を比較的簡単に作製できます。斜面培養物
から寒天ブロックを切り出す場合は、ストローや柔らかいループでは作業が難しいため、
太いニクロム線を使った固いループを使用します。プラスチック製のループでも固めの物
であれば作業できます。凍結標品を復元する際は、寒天ブロックをチューブから取り出し
て培地の上に置きます。カビの場合は菌糸の分断を防ぐため寒天ブロックを崩しませんが、
放線菌の場合は培地上に置いた寒天ブロックをループを使って崩してから培養します。
◆菌糸状にならない放線菌
 菌糸状にならない放線菌(一般に、菌糸状になる放線菌に対して「アクチノバクテリア」
と称することが多い)は、一般的な細菌と同様に菌体を凍結用保護液に分散させた懸濁液
を調製して保存します。凍結保存標品を作製する際は、フレッシュな菌体(菌種にもより
ますが2~5日間程度培養したもの)と十分な菌濃度(懸濁液が白濁するくらい)で懸濁液
を調製することが大切です。
 Corynebacterium属の仲間は菌体がミコール酸に覆われているため、掻き取った菌体を
凍結用保護液に移しても、菌体が浮いてしまうことがあります。粘性も高く塊となってい
ることが多いので、よく懸濁して保護液に浸かった菌体が少しでも多くなるように調製し
ます。
 Bifidobacterium属はClostridiales目と同じ方法で保存します(参考:細菌・アーキア
の生育の仕方から選ぶ保存方法(1) グラム陽性・低GC細菌(Firmicutes門))。

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 3.バイテク分析法(8)
   メタゲノム解析における計測レファレンスの必要性       (三浦隆匡)
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 自らの実験結果と論文などで報告された結果を比較するとき、それぞれの結果はしっか
りと検証された方法から導き出されているのか不安に思うことはありませんか?
 最新の研究により、腸内細菌や土壌細菌などの微生物集団(マイクロバイオーム)と宿
主や環境の間には深い関わりがあることが明らかになってきており、医療・製薬・食品な
どの分野においてマイクロバイオームを利用した新規製品開発への気運が高まっています。
近年では、新型シーケンサーを用いてサンプルからDNAを丸ごと抽出してそのまま全配列
をシーケンスするメタゲノム解析や、16S rRNA遺伝子をPCR増幅した後にシーケンスする
メタ16S解析が一般的に行われています。これらの解析は、サンプル採取にはじまり、保
存・輸送、DNA抽出、ライブラリー調製、シーケンス、データ解析まで多くの工程を必要
とします。各工程における方法は解析実施機関によって様々であり、試薬の違いや作業者
の手技の差などから生じる誤差が集積して解析結果に大きく影響を与えてしまうことが報
告されています1)2)。このため、異なる方法や解析により取得されたデータや結果の解釈
には偏りが生じている懸念があり、他者の結果と正確に比較できないばかりか、誤った結
論に至ってしまうおそれがあります。
 上記の解析工程のうち、DNA抽出方法の影響が最も大きいと言われており、欧米ではDNA
抽出方法の標準化が検討されています1)2)。また、データ解析のアルゴリズムの違いも結
果に影響を与えることが報告されています3)。そこで、NBRCでは、本課題を解決する手段
のひとつとして、方法検証に必要な計測用レファレンスとして使用できるNBRC微生物カク
テル(Mock Community)の開発を行っています。
 本カクテルはマイクロバイオームを模擬したサンプルで、それぞれの細胞数をフローサ
イトメーターで測定して一定数ずつ混合した菌体カクテルと、各株からあらかじめ抽出し
たゲノムDNAを混合したDNAカクテルの2種類があります。これらは、NBRCが保有するゲノム
解析株の中からグラム染色の違い(DNA抽出のしやすさ)、GC含量やゲノムサイズなどの
特徴から選抜した複数の株を使用しています。ロット毎の混合割合とロット内誤差の検証
にはデジタルPCRとメタ16S解析を用いており、誤差が少ないことを確認しています。さら
に、本カクテルの実用性や利便性について、外部機関との共同事業により検証したところ、
プロトコル検討(DNA 抽出方法、メタゲノム解析におけるPCRプライマーやライブラリー
試薬の選定等)から新規作業者のトレーニング等までレファレンスサンプルとして広く有
効であることが確認できました。

 品質を確保しつつ安価に安定して製造できるようになりましたので、現在、みなさまに
広くお使いいただくために環境整備を行っているところです。予定では、本年5月に2種類
のNBRC微生物カクテルの提供を開始する予定です。価格や入手方法につきましては、追っ
てNBRCのウェブページ等にてお知らせ致します。

1) Costea, PI. et al. (2017) Nature biotechnology. 35, 11, 1069.
2) Sinha, R. et al. (2017) Nature biotechnology. 35, 11, 1077.
3) Kopylova, E. et al. (2016) mSystems. 1, e00003-15.
図 NBRC微生物カクテルを使用したマイクロバイオーム解析工程
         図 NBRC微生物カクテルを使用したマイクロバイオーム解析工程

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 4.MALDI-TOF MS微生物迅速同定用ライブラリーの更新
   (乳酸菌およびPseudomonas属)
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 NBRCは迅速な微生物同定の技術的支援として、MALDI-TOF MS微生物同定用ライブラリー
を構築し公開しています。今回、乳酸菌およびPseudomonas属についてライブラリーデー
タを更新し、4月3日に公開する予定です。今回の更新では、最新の文献に基づく学名変更
やピークデータのマニュアルでの見直し等を行いました。是非、皆様の業務にご活用くだ
さい。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/maldi/maldi.html

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 5.微生物有害性情報の総合サイト「M-RINDA」公開のご案内
    (2019年3月26日公開)
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 微生物の安全かつ適切な利用を支援するため、NITEでは以下のデータベースを公開して
います。

・微生物有害情報リスト(微生物の危険度分類や法規制情報を一元化したリスト)
・MiFuP Safety(微生物のゲノム情報から有害性を推定する検索システム)

 このたび、これらのデータベースを統合した微生物有害性情報の総合サイト「微生物有
害性情報データベース(Microbial Risk Information Database: M-RINDA)」を新たに公
開いたしました。このM-RINDA/微生物有害情報リスト(Web版)では法令名や微生物名を
指定しての検索が可能になりました。M-RINDAは以下URLより無料でご利用いただけます。
微生物の有害性に関する情報収集にぜひご活用ください。
 なお、微生物有害情報リストおよびMiFuP Safetyはこれまでと同様にお使いいただけま
す(URLが変更になりましたので次の記事をご確認ください)。

【M-RINDAのURL】 https://www.nite.go.jp/nbrc/mrinda/

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 6.NBRCウェブページのURL変更のご連絡
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 NBRCのウェブページのURLを以下に変更しました。ご不便をおかけいたしますが、よろ
しくお願いします。

【NBRC Cultureカタログ検索】
 https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/NBRCDispSearchServlet?lang=jp
【ヒトcDNAクローン検索】 https://www.nite.go.jp/nbrc/hflcdna/
【微生物有害情報リスト】 https://www.nite.go.jp/nbrc/mrinda/list/
【微生物有害性遺伝子データベース(MiFuP Safety)】
 https://www.nite.go.jp/nbrc/mrinda/mifup_safety/
【微生物遺伝子機能検索データベース(MiFuP)】 https://www.nite.go.jp/nbrc/mifup/
【アジア・コンソーシアム(ACM)】 https://www.acm-mrc.asia/

 なお、DOGANおよびDoBISCUITはサービスを終了いたしました。

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 7.NBRC微生物実験講習会に関するアンケートのご協力のお願い
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 NBRCが実施している講習会のうち、微生物の基礎的な取扱いについての「NBRC微生物実
験講習会(https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/seminar.html)」の内容を、
皆様のご要望に応じて変えることを検討しています。ご多忙中恐れ入りますが、以下の
URLのアンケートから、率直なご意見をお聞かせください。
※アンケート所要時間は3分程度です。

【URL】 https://reg34.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=lena-lcpdmf-dc3c95b0eb34f431a
7b0a37ff82156ff
【アンケート実施期間】2019年6月30日まで

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 8.GW期間中のNBRC微生物株・DNAリソースの発送休止について
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 NBRCでは下記の期間中、NBRC微生物株・DNAリソースの発送を休止させていただきます。

 発送休止期間: 2019年4月26日(金) ~ 5月7日(火)

 発送予定:
  4月19日(金) ~ 4月23日(火)午前まで受付分 → 4月25日(木)発送
  4月23日(火)午後 ~ 4月26日(金)午前まで受付分 → 5月 8日(水)発送
  4月26日(金)午後 ~ 5月 8日(水)まで受付分 → 5月14日(火)以降、順次発送

 ※ご依頼が集中する場合や微生物標品の形態により、発送日が上記より遅れることがご
  ざいます。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/information/holiday_2018.html

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 編集後記
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 ふと、玩具の缶詰が恋しくなりました。ボール型チョコレート菓子を大人買いし、1日
1チョコを実践。1人では食べきれないと今更ながら気づき、職場の人にもおすそ分け。
ただし、金色か銀色の天使が出た場合は箱を強制的に回収するという条件で。なんとか銀
色の天使が5名揃い、いざ応募!数週間後に無事到着。黄金の鳥の形をした缶詰は、クチ
バシをなでると流暢におしゃべりするのでした。どうやらごくまれに禁断のメッセージを
しゃべるらしいのですが、未だに真相を知っている人間は私一人だけです。実は、海外か
ら応募しても送料無料で届くってご存知でしたか?(TA)

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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
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  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、下記のアドレスにご連絡
  ください。
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  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容は予告なく変更することがございます。掲載内容を許可なく複製・転載さ
  れることを禁止します。
 ・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第57号は2019年6月3日に配信
  予定です。

  編集・発行
    独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
    NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物資源利用促進課
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