バイオテクノロジー

NBRCニュース 第83号

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NBRCニュース 第83号
2023/10/2
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  1. 
  新たにご利用可能となった微生物株
微生物イメージ画像
◆NBRC株
   酵母53株、糸状菌3株、細菌49株、藻類2株が新たにご利用可能となりました。
   酵母では、甘味料として用いられるアラビトールを産生するZygosaccharomyces siamensis NBRC 116063を公開しました。また、細菌では中国の氷河から分離されたCryobacterium属の19新種(NBRC 113798~113799、NBRC 114032~114048)を公開しました。

【新たに提供を開始した微生物資源】
https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

  2.  
  DBRP掲載株のご紹介(6)
     
  (株)Seed BankのDBRP登録株のご紹介
     
  (株式会社Seed Bank 加山 基)
   最近、カーボンニュートラルやオイル生産、健康食品などの分野で微細藻類が注目されています。藻類は分類学的に多種多様で、緑藻、珪藻、シアノバクテリアなど様々な種類が存在します。本記事では、7月に生物資源データプラットフォーム(DBRP)に登録した株式会社Seed Bankで保有している藻類株2種について紹介します。登録した株は緑藻Haematococcus sp.(図1)とシアノバクテリアLeptolyngbya sp.(図2)です。
画像_Haematococcus
   緑藻は真核生物の大分類系統の1つであるアーケプラスチダに属する生物で、桜やホウレンソウなどの陸上植物やコケなどより原始的な単細胞の生物です。Haematococcus属は緑藻類オオヒゲマワリ目に属する、単細胞で少し遊泳する浮遊生物です。遊泳時のHaematococcusは緑色で2本の鞭毛を細胞の前端に持ち、活発に活動しています。しかし、栄養塩や温度、光などの変化によるストレスがかかると、鞭毛を無くして球形の細胞に変化します。
   この時、Haematococcusはアスタキサンチンと呼ばれる赤色のカロテノイドを生産するため、細胞の色が緑から赤色に変化します。このアスタキサンチンはβ‐カロテンやビタミンEより強い抗酸化作用を持つ物質として注目され、産業利用されています。DBRP登録株のHaematococcus sp.も同様に、細胞が赤色に変化しアスタキサンチンを蓄積します。また、本株の増殖速度は、藻類培養用のAF-6培地を1/2濃度に希釈した低栄養条件で、最大比増殖速度(μmax)が0.50/d(倍化時間:0.75/d)です。つまり、1日に1回以上分裂する能力を有しています。
   シアノバクテリアは光合成能を有するバクテリアです。シアノバクテリアは約27億年前に誕生しました。この生物の誕生によって、それまで酸素が無かった地球の大気は、徐々に酸素を約20%含む現在の組成に変化してきました。そして、長い年月の間に、細胞内にシアノバクテリアを共存させることで葉緑体を獲得した生物が出現しました。つまり、シアノバクテリアは陸上植物や微細藻類の葉緑体の素となった生物です。
画像_Leptolyngbya
   今回、登録したLeptolyngbya sp.は温泉から単離したシアノバクテリアです。このLeptolyngbya sp.の特徴はpHが4-12、温度が20-40 ℃という幅広い条件下で生息が可能なことです。例えば、弊社研究室では温度40℃かつpH 11の条件下でもLeptolyngbya sp.は死滅せず、順調に増殖しています。この様な条件で培養することには2つの利点があります。1つはLeptolyngbya sp.を捕食する生物や他生物の混入(コンタミネーション)が困難になる点です。2つ目はpHが11ないし12の高アルカリ条件下では二酸化炭素が高濃度に溶解することです。つまり、藻類培養における課題の1つであるコンタミネーションが起こりにくく、かつ、効率的に二酸化炭素の回収が可能になります。

   Seed Bankではあらゆる微細藻類や原生生物を単離することが可能です。ご興味のある方はぜひ弊社(https://microalgae-seedbank.com)までお問い合わせください。

   今回ご紹介した2株の基本的な情報はこちらのURLからご確認いただけます。
   【Haematococcus sp.】
   https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=STSB0000000000002
   【Leptolyngbya sp.】
   https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=STSB0000000000001
   お問い合わせ先はこちらからもご覧いただけます。

  3.  
  DBRP(生物資源データプラットフォーム)
     
  ~更新データのお知らせ~
■国内由来RD株の情報更新(8月23日)
   北海道利尻島で採取された植物、土壌などから分離し、リパーゼ活性を調査した低温性酵母等112株とこれらのリパーゼ活性情報をDBRPで公開しました。今回公開した株の中には4℃で活性を示す株が含まれます。
DBRPロゴ
   国内由来RD株は、新製品開発のためのスクリーニング材料としてご利用いただけるように、NBRC株より安価に提供しています。また、実際にRD株を活用した事例もNBRCニュースでご紹介しております(株式会社東洋発酵様和歌山県工業技術センター様)。RD株はリボソームRNA遺伝子塩基配列解析の結果から、分類学的に新規と推定される多数の微生物が含まれており、新しい機能を秘めているかもしれません。ぜひご活用ください。

【リパーゼ活性情報が付与された国内由来RD株ページ】
https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=ANAS0000000080001
【国内由来RD株コレクションページ】
https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=COLL0000000000002
【国内由来RD株】
https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/index.html
【新たに提供を開始したRD株】
https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/new_rd.html

■RD株リストの追加(8月23日)
   提供可能なRD株のリストをDBRPからご覧いただけるようになりました。国内由来株については、解析データから菌株の同定に用いた遺伝子塩基配列情報を取得することが可能になりました。また、相同性検索ページでは、これらの配列に対し相同性検索を行うことができます。ぜひ、ご活用ください。海外由来株については、モンゴル、ベトナムの2か国から分離した株を提供しております。

【国内由来株リスト】
https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=ANAS0000000700001
【海外由来株リスト】
https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/dataview?dataId=ANAS0000000700002

  4.  
  「DBRPコンシェルジュ」期間限定開設のご案内
   2019年6月より公開しています「DBRP(生物資源データプラットフォーム)」の利活用に関するお悩みの解消と、DBRPを最大限利活用いただきたいという思いから、このたび、お気軽にお問い合わせいただける窓口「DBRPコンシェルジュ」を期間限定(2024年3月まで)で開設しました。

   DBRPの使い方に関するちょっとしたお悩みからオンラインデモンストレーションのご依頼など、お気軽にご相談ください。
DBRPコンシェルジュバナー

  5.  
  日本薬局方に規定されているPseudomonas aeruginosa
     
  NBRC 13275の学名変更について
   日本薬局方において複数の試験法に規定されておりますNBRC 13275の学名を、Pseudomonas aeruginosaからPseudomonas paraeruginosaに変更したことをお知らせします。これは、Rudraら(1)の分類学的研究の報告に従った学名の変更になります。

   P. aeruginosaは系統的に複数のグループに分類されており、分類学的基準株であるDSM 50071T(= NBRC 12689T)を含むグループは「classical clade」、各種試験法などで広く用いられているNCTC 13628(= ATCC 9027 = NBRC 13275)を含むグループは「outlier clade」と呼ばれています。今回、Rudraら(1)はゲノム配列に基づく分類学的検証の結果及び表現性状の違いに基づき、outlier cladeを新種P. paraeruginosaとして独立させることを提唱し、NCTC 13628Tを分類学的基準株に指定しました。この報告を受け、NCTC 13628T(= ATCC 9027T)の同一由来株であるNBRC 13275Tの学名をP. paraeruginosaに変更いたしました。

   NBRCでは最新の報告に従って学名の更新を随時実施しております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

【文献】
(1) Rudra et al. (2022) Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 72:005542

  6.  
  NBRCが展示、発表等を行うイベントについて
   以下のイベントにて展示、発表等を行います。ぜひご参加ください。

BioJapan 2023
   日時:2023年10月11日(水)~13日(金)
   会場:パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)
   URL:https://jcd-expo.jp/ja/
   NITEの参加形態:ブース出展(D-110)
   ※ご入場には事前登録が必要です。

日本乳酸菌学会 2023年度秋期セミナー
   日時:2023年10月20日(金)10:20~18:30
   会場:オンライン(Zoom)
   URL:http://www.jslab.jp/conference/autumn/autumn-2023
   NITEの参加形態:講演

関西バイオものづくり異分野参入セミナー
   日時:2023年10月25日(水)13:30~17:00
   会場:地方独立行政法人京都市産業技術研究所 2Fホール(京都府京都市下京区中堂寺粟田町91)およびオンライン
   URL:https://www.kansai.meti.go.jp/2-4bio/biomonodukuri/biomonodukuri_ibunnya_seminar.html
   NITEの参加形態:共催・講演
   ※詳細は7.「関西バイオものづくり異分野参入セミナー」のご案内をご覧ください。

日本微生物生態学会 第36回浜松大会
   日時:2023年11月27日(月)~30日(木)
   会場:アクトシティ浜松(静岡県浜松市中区板屋町111-1)
   URL:https://2023.jsme-conference.net
   NITEの参加形態:ブース出展、ポスター発表

  7.  
  「関西バイオものづくり異分野参入セミナー」のご案内
   本セミナーは、バイオものづくりに関心のある企業の新規参入を促進し、バイオものづくりの「機運醸成」「裾野拡大」を図ることを目的として、近畿経済産業局、京都市、地方独立行政法人京都市産業技術研究所とNITEが連携して開催するものです。NITEバイオテクノロジーセンターの取り組みの紹介や NITE連携機関からのバイオものづくりに関連した具体事例の紹介、さらにDBRP(生物資源データプラットフォーム)を利用した微生物情報の入手についてのワークショップ※を実施します。

※ワークショップではPCを利用しますので、本セミナーに参加される方は準備をお願いします。なお、現地参加の方におかれては、会場よりインターネット回線を提供します。

   開催日時:2023年10月25日(水) 13:30-17:00
   開催形態:会場とオンラインによるハイブリッド開催
   共催:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)/近畿経済産業局/京都市
            /地方独立行政法人京都市産業技術研究所
   会場:地方独立行政法人京都市産業技術研究所2Fホール
            (京都府京都市下京区中堂寺粟田町91)
   募集定員:会場100名、オンライン300名
   参加費:無料(参加登録が必要です)
   受付期間:2023年10月20日(金)〆切り
   対象者:バイオものづくりに関心のある企業、大学・研究機関、支援機関、金融機関 等
   詳細:https://www.kansai.meti.go.jp/2-4bio/biomonodukuri/biomonodukuri_ibunnya_seminar.html
   参加登録:https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/kansai01/form324

  8.  
  2023年度NITE講座(バイオ基礎講座2023)のご案内
   NITEでは、毎年「NITE講座(無料セミナー)」を開催しています。

   NBRCが担当する本年度の「NITE講座」は「バイオ基礎講座2023」と題して2050年カーボンニュートラルの実現に向けて期待の高まる微生物の利活用に役立つ講義と実習を行います。NBRCが保有する微生物の多様性やそれら微生物等の入手方法、微生物の分離と長期保存に関する技術、微生物取扱いに関する法令、その他、微生物の分析技術を紹介する予定です。さらには微生物を用いた研究開発に必要な情報取得のためのデータベースの活用法と、NBRCが提供する生物資源データプラットフォーム(DBRP)の実習を予定しています。

   講座は、①微生物取扱いに関する知識編、②微生物データベースの利活用実技編、③微生物の長期保存や分析に関する技術編の三部構成となっております。昨年度よりバージョンアップした「バイオ基礎講座2023」に是非ご参加ください。

   講座名:バイオ基礎講座2023
               ~カーボンニュートラルの実現の鍵となる微生物!
                  まずは知っておきたい微生物利用の基礎知識~ 
   開催日時:2023年12月(日程調整中)13:00~(予定)
   開催形態:オンライン(Webexウェビナー)
   対象者:こんな方々にオススメです。
      ・企業/大学等において微生物やその情報・技術の利用に携わっている方
      ・これから微生物の利用を考えている方
      ・微生物研究開発事業のマネジメント、安全管理、法務知財に従事する方
   参加費:無料(受講登録が必要です)
   募集開始の時期が決まり次第、以下のWebサイトよりご案内します。
   https://www.nite.go.jp/nite/koho/event/kouza/2023fy.html
      ・第一部:微生物取扱いに関する知識編
      ・第二部:微生物情報データベースの利活用実技編
      ・第三部:微生物の保存・培養・分析に関する技術編

  9.  
  2023年度NITE講座(認定センター)のご案内
   NITEでは、毎年一般の方や事業者向けに「NITE講座(無料セミナー)」を開催しています。本年度のNITE講座初回は、認定センターが開催します。「認定」の基礎的な内容やISO/IEC17025に関する講義に加え、「認定」を含む適合性評価の概要やその社会実装の事例(海洋プラスチック)についての講義を行います。ぜひご参加ください。

   開催日時:2023年10月4日(水)13:15-15:30
   開催形態:オンライン(Webexウェビナー)
   受講料:無料(参加登録が必要です)
   対象者:企業の新入社員の方や新たに品質管理を担当される方、認定をはじめとした適合性評価制度について興味のある方
   URL:https://www.nite.go.jp/iajapan/information/iajapan-kouza_2023.html
 
   編集後記
   先日、小学生向けの微生物教室を開催しました。私は顕微鏡観察のサポートとして参加し、小学生のそばで観察を見守ったり手伝ったりしていました。絶対に自力で微生物を見つけるぞと意気込む子、観察しスケッチを丁寧に描き込む子、たくさん微生物について質問してくれる子・・・など、同じ真剣な気持ちでも姿勢は様々です。手伝い過ぎないように気をつけつつも、楽しむ子どもたちを見て私自身も楽しかったです。 (SS)
微生物情報の検索は「DBRP(生物資源データプラットフォーム)」
NBRC株の検索、ご依頼は「NBRCオンラインカタログ」
微生物に関するご相談は「微生物コンシェルジュ」
微生物の有害情報の検索は「M-RINDA」
・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
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・NBRCニュースは偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。次号(第84号)は2023年12月1日に配信予定です。

編集・発行
   独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)
   NBRCニュース編集局(nbrcnews【@】nite.go.jp)
   (メールを送信される際は@前後の【】を取ってご利用ください)

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TEL:0438-20-5763
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